体外受精

2026.10.14

DuoStimから学ぶExtended ovarian stimulationという概念(J Assist Reprod Genet. 2026)

はじめに

卵胞発育に関する”continuous/waves” theoryと、ガラス化保存による胚生存率向上により、ランダムスタート・黄体期刺激・二段階刺激(DuoStim)へと刺激法の多様化が起こりました。この総説は、連続刺激でみられる「FSH曝露の延長」が採卵数増加につながる可能性を論じ、「延長卵巣刺激」という新概念を提唱しています。

ポイント

連続するback-to-back卵巣刺激は後の刺激ほど採卵数を漸増させうるとし、著者らは「延長卵巣刺激」という新概念を提唱しています。

引用文献

La Marca A, et al. J Assist Reprod Genet. 2026. doi: 10.1007/s10815-026-03922-1.

論文内容

DuoStim(二段階卵巣刺激)の経験を根拠に「延長卵巣刺激」という概念を提示する総説)す。卵胞は1回の月経周期の中で複数回のウェーブ(同程度の径の卵胞が同期して育つ集団)を形成して育つ、という「ウェーブ理論」があります。多くの女性で1周期に卵胞期と黄体期の2つのウェーブが観察されます。これを利用し、Kuangらが黄体期刺激を初めて報告し、Ubaldiらがこれを発展させ、「卵胞期に通常刺激→採卵→続けて同じ月経周期の黄体期に2回目の刺激→採卵」を行うDuoStimプロトコルを確立しました。つまり1回目は通常の卵胞期スタート、2回目は黄体期スタートで、両者を同一周期内で連続して行うのがDuoStimです。妊孕性温存のように、新しい卵胞期を待たず速やかに採卵を重ねたい状況で特に有用とされています。
次に仮説です。FSHは卵胞のリクルートと発育の中心的因子ですが、その曝露を単純に延長すると卵胞径増大・早発黄体化・卵子の質低下のリスクを伴うため、延長投与の影響を直接検討するのは困難です。DuoStimでは連続刺激とGnRHアゴニストトリガー(一過性のFSH上昇を惹起)により、卵巣が約20~24日間FSHに曝露されるため、この延長曝露の効果を観察する手がかりになる、と著者は述べています。なお本論文は、最適な刺激間隔(休薬日数)については検討していません。

結果

DuoStimで2回のback-to-back周期の採卵数を報告した32論文を評価しています。32件中27件で、2回目刺激のCOCsまたは成熟卵が1回目を上回りました。
ここで重要なのは「1回目刺激でどのトリガー薬を使ったか」で2回目の増えやすさが異なる点です。1回目をGnRHアゴニストでトリガーした21件では、17件(8割超)で2回目の採卵数が増加し、その増加幅も総採卵数で+12%~+385%、MIIで+18%~+363%と大きいものでした。一方、1回目をhCGでトリガーした6件では、増加を示したのは4件にとどまり、増加幅もCOCs +2%~+40%、MII +40%と小さめでした。著者は、1回目のトリガー薬が2回目の卵巣反応に影響し、GnRHアゴニストの方が2回目の採卵数が増えやすいと指摘しています。
対象の多くは低反応例で、MIIを報告した23件のうち9件(39%)が、2回目で平均1個以上のMII増加を示しました。多くの研究で増加は統計学的に有意でした。なお採卵数の絶対値自体は低いことが多い点も、著者は明記しています。

私見

この論文で言いたいことは、「同一周期2回採卵(DuoStim)」が「別周期で2回(連続アンタゴニスト周期)」より優れる、と主張することではない点に注意が必要です。実際、両者を直接比較した唯一のRCTであるMassin N, et al.(BISTIM試験)Hum Reprod. 2023では、低反応例で累積採卵数に差は示されませんでした。
本論文の主張は、「連続(back-to-back)刺激すると後の刺激ほど採卵数が増える」という観察事実から、その背景にあるFSH曝露延長という機序を提唱し、「延長卵巣刺激」という概念に一般化することにあります。DuoStimはその概念を観察できる”窓”として用いられています。
採卵数増加の機序仮説は以下となります。

  1. 卵胞期刺激中の高E2・Pによる胞状卵胞の同期化(Cimadomo D, et al. Hum Reprod. 2018)
  2. 血管新生因子増加による顆粒膜細胞のFSH感受性亢進
  3. GnRHアゴニストのflare-up効果による無排卵ウェーブ卵胞のAMH発現低下とリクルート改善
  4. 小卵胞の胞状リクルート段階への進行促進(いわゆるゴナドトロピン非依存期にも小卵胞に機能的ゴナドトロピン受容体が発現しFSH/LHが作用する)

また、ここでいうGnRHアゴニストは点鼻の超短時間作用ではなく、注射薬剤であることが誤解しないようにしないといけません。
当院でも妊孕性温存治療を行う際にDuoStimを行うことがありますので参考にしたいと思っています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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