体外受精

2023.11.28

卵巣予備能低下症例にはPPOS法か低刺激法か(Front Endocrinol (Lausanne). 2023)

はじめに

卵巣予備能低下女性は早発LHサージが起こる可能性が高いと考えられています。PPOS法は、早発LHサージを予防する上で優れており、低刺激法と比較して生殖医療の結果が改善する可能性があります。卵巣予備能低下症例に対するPPOS法と低刺激法の生殖医療結果を比較検討したメタアナリシスをご紹介いたします。 

ポイント

卵巣予備能低下症例ではPPOS法が低刺激法に比べて、臨床妊娠率、有効胚率、累積妊娠率が増加し、周期キャンセル率・早発LHサージ率の低下につながりました。 

引用文献

Guangyao Lin, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2023 Aug 21:14:1232935. doi: 10.3389/fendo.2023.1232935. 

論文内容

2023年5月24日までに9つのデータベースを検索し、卵巣予備能低下症例におけるPPOS法と低刺激法を比較した関連研究を調査しました。メタアナリシス結果を示すためにフォレストプロットを用い、出版バイアス推定にはBegg検定とEgger検定を適用しました。 

結果

合計14研究、4,182名がメタアナリシス対象となりました。臨床妊娠率(OR: 1.39, 95%CI: 1.01–1.91, p = 0.05)、有効胚率(OR: 1.50, 95%CI: 1.20–1.88, p = 0.0004)、累積妊娠率(OR: 1.73, 95%CI: 1.14–2.60, p = 0.009)、刺激期間・ゴナドトロピン使用量(MD: 1.56, 95%CI: 0.47–2.66, p = 0.005; SMD: 1.51, 95%CI: 0.90–2.12, p < 0.00001)、周期キャンセル率(OR: 0.78, 95%CI: 0.64–0.95, p = 0.02)、トリガー当日LH値(SMD: -0.81, 95%CI: -1.10 – -0.53, p < 0.00001)、早発LHサージ率(OR: 0.10, 95%CI: 0.07–0.15, p < 0.00001)がいずれも改善しました。出版バイアスの証拠は明らかにされませんでした。 
DORの判定基準は、AFC < 5〜7、FSH ≥ 10 IU/L、AMH < 1.1 ng/mLとされています。 

私見

このメタアナリシスの欠点は、レトロスペクティブスタディ24研究の比較である点、中国の地方雑誌での報告やPubMedに掲載されていない報告も含まれている点です。ただし、卵巣予備能低下症例でPPOS法と低刺激法の優劣を比較した研究はほとんどなく、意義深い報告だと考えられます。 

また、PPOS法15症例とGnRHアンタゴニスト法15症例を比較した研究では、卵胞液中の顆粒膜細胞におけるmiR-4261のダウンレギュレーションとmiR-6869-5pのアップレギュレーションがPPOS法症例で認められました。これらの遺伝子は細胞増殖とアポトーシスに関与し、関連するシグナル伝達経路はHippo経路とWnt経路でした(Jiao Yu, et al. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2022 Sep; 276:228–235.)。刺激によって卵子の質に変化が生じる可能性は十分に考えられると思います。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# PP(PPOS)

# 低刺激排卵誘発法

# 卵巣予備能、AMH

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

採卵周期のゴナドトロピン種類とFET累積出生率(J Assist Reprod Genet. 2026)

2026.08.28

体重・BMI・体脂肪率はfollitropin alfa固定投与時の血清FSH動態・採卵成績との関連(日本受精着床学会雑誌 2025)

2026.08.27

ART周期におけるフォリトロピンデルタ・アルファ・hMGの有効性比較(Reprod Med Biol. 2026)

2026.08.24

高齢不妊女性のIVFにおけるGnRHアンタゴニスト法とPPOS法の比較(Front Endocrinol. 2026)

2026.08.04

PPOS vs. GnRHアンタゴニスト法 臨床アウトカムと単一細胞解析からの検証(Reprod Biomed Online. 2025)

2026.08.03

体外受精の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

2026.01.23

SEET法は凍結融解胚移植の成績を悪化させる可能性あり?(Sci Rep. 2025)

2026.03.30

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

2022.06.24

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

ART不成功におけるタクロリムス治療(J Reprod Immunol. 2026)

2026.02.27

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

腟潤滑ゼリーは妊娠率に影響する?

2022.01.24

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

2026.01.23

妊娠できるカップルはほぼ6ヶ月以内に妊娠する。(論文紹介)

2021.11.11