治療予後・その他

2024.07.31

筋腫核出後に癒着胎盤リスクが上昇(Am J Obstet Gynecol. 2024)1272

はじめに 

子宮筋腫核出術後の癒着胎盤スペクトラム(PAS)リスクを議論した報告は複数ありますが、意見が分かれています。理由として、発生頻度が低い疾患のため差を評価するための症例数が数多く必要なこと、過去の報告自体、評価項目が他にあり副次的な評価項目で見られているものが多いこと、癒着胎盤スペクトラム(PAS)をどこまで診断するか主観性が強く左右すること、が考えられます。
台湾から国民保険レジストリを用いたビッグデータで、筋腫核出後に癒着胎盤リスクを評価した報告がありましたので、ご紹介いたします。 

リスクなし派
C. Gyamfi-Bannerman, et al. Obstet Gynecol. 2012
A. Mohr-Sasson, et al. J Matern Fetal Neonatal Med. 2022 

リスク上昇と関連派
K.E. Fitzpatrick, et al. PLoS One. 2012
H.J. Baldwin, et al. Obstet Gynecol. 2018 

ポイント

子宮筋腫核出術、特に子宮鏡下子宮筋腫核出術は、次回妊娠における胎盤癒着リスク上昇と関連します。 

引用文献

Ming-Wei Lin, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024 Aug;231(2):255.e1-255.e10. doi: 10.1016/j.ajog.2023.11.1251. 

論文内容

子宮筋腫核出術が次回妊娠における癒着胎盤リスクを増加させるか調査したレトロスペクティブコホート研究です。2008年1月から2017年12月までに出産した台湾の全妊娠患者を含む台湾国民健康保険研究データベースのデータを用いて、全国規模のコホート研究を実施しました。1:1の傾向スコア推定マッチングを行い、子宮筋腫核出術が癒着胎盤スペクトラム(PAS)のリスクに及ぼす影響を解析しました。子宮筋腫核出術を受けた妊娠患者のうち、子宮筋腫核出術の異なる方法(開腹・腹腔鏡・子宮鏡)がPASリスクに及ぼす影響を対照群と比較しました。 

結果 

1,371,458妊娠患者のうち、11,255名に子宮筋腫核出術の既往がありました。子宮筋腫核出術既往のある妊娠患者では、子宮筋腫核出術既往のない妊娠患者よりもPASリスクが高くなりました(0.96% vs. 0.20%;aOR、2.28;95%CI、1.85-2.81;P<.01)。子宮筋腫核出術既往がある妊娠患者のうち、5,045名(46.87%)が開腹子宮筋腫核出術を、3,973名(36.93%)が腹腔鏡下子宮筋腫核出術を、1,742名(16.20%)が子宮鏡下子宮筋腫核出術を受けていました。PAS発生率は、子宮鏡群において開腹群または腹腔鏡群よりも高くなりました(1.89%[子宮鏡群] vs 0.71%[開腹群]および0.81%[腹腔鏡群];P<.05)。子宮筋腫核出術既往のない妊婦と比較して、子宮鏡群においてPASの調整オッズ比は3.88(95%CI、2.68-5.63;P<.05)でした。 

私見

絨毛浸潤の初期段階で分娩第3期に関連する異常・胎盤異常が発生するのは間違いなさそうです。生殖医療施設から周産期施設へ、リスク抽出した情報提供をできるような体制構築が今後必要になってくるのではないかと思っています。 

関連するコラムもご参照ください 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 手術

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# 良性腫瘍

# 周産期合併症

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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