治療予後・その他

2023.04.04

胚移植時の子宮内膜が薄いと周産期合併症が上昇(Hum Reprod. 2022 )

はじめに

子宮内膜厚菲薄化症例での分娩では、胎盤関連合併症が増加することが指摘されています。胎盤にどのような変化が現れるか調査した報告をご紹介いたします。

ポイント

体外受精の胚移植時に子宮内膜が薄い症例が妊娠に至った場合、胎盤関連合併症増加、出生体重低下、胎盤厚低下、2葉胎盤増加、母体灌流障害病変増加などの変化が見られることがわかりました。子宮内膜厚が薄い女性の胚移植を検討するときには周産期リスク説明が必要であることが考えられます。今回のカットオフ値9mmでは、癒着胎盤の発生率が高いことがわかりましたが、交絡因子で調整しても有意にはなりませんでした。

引用文献

Hadas Ganer Herman, et al. Hum Reprod. 2022 Jul 30;37(8):1739-1745. doi: 10.1093/humrep/deac148.

論文内容

子宮内膜厚が薄い女性の胚移植後の周産期転帰と胎盤組織所見を検討するため、2009年から2017年の体外受精後の1057件の単胎分娩を対象としたカナダのレトロスペクティブコホート研究です。
体外受精後に胚移植を行った患者のうち、子宮内膜が9mm未満の患者(子宮内膜菲薄化群292例:平均35.9±4.2歳)と9mm以上の患者(対照群765例:平均35.4±4.2歳)を比較しました。評価項目は、アムステルダム胎盤ワークショップグループコンセンサスに従って解剖学的所見、炎症性、血管不全、絨毛成熟病変を含む胎盤所見を分類しました。そのほか、産科および周産期の転帰も評価項目とし、Student-t検定またはMann-Whitney検定、カイ二乗検定またはFisherの正確検定を用いました。連続変数とカテゴリー変数を適宜比較し、交絡因子をコントロールするために多変量回帰分析および線形分析を行っています。

結果

子宮内膜菲薄化群は対照群と比べて、患者背景(年齢、BMI、経産回数、喫煙状況など)に大きな差がありませんでしたが、菲薄化群女性は卵巣予備能が低く、男性因子が少なく、新鮮胚移植率が低く、単一胚移植率・胚盤胞移植率が高くなっていました。交絡因子調整後、菲薄化群女性の出産症例では、胎盤関連合併症が高く(22.9% vs. 15.2%、p=0.003、aOR 1.65、95% CI 1.08~2.52)、出生体重が低く(3,243g vs. 3,310g、β-100.76 g、-184.4g~-17.0g)、胎盤厚が薄く(1.82cm vs. 1.99cm、β-0.14cm、-0.25cm~0.02cm)、2葉胎盤が多く(3.7% vs. 0.7%、p<0.001、aOR 3.05、1.00~9.32)、母体灌流障害病変が高くなりました(45.5% vs. 37.7%、p=0.02、sOR 1.44、1.03~2.03)。

私見

子宮内膜厚菲薄化症例での分娩では、カットオフ値は7.5-9mmと様々ですが胎盤関連合併症が増加するとされています。 

出生体重低下、SGAの増加 

新鮮胚移植
Moffat R, et al. Arch Gynecol Obstet 2017;296:115–122. 
Guo Z, et al. Fertil Steril 2020;113:745–752. 
Liu X, et al. Reprod Biomed Online 2021b;43:1087–1094 

凍結融解胚移植
Zhang J, et al. Hum Reprod 2019;34:1707–1715. 

妊娠高血圧症候群の増加 

Liu X, et al. Reprod Biol Endocrinol 2021a;19:55. 

前置胎盤、帝王切開の増加 

Jing S, et al. Arch Gynecol Obstet 2019;300:1227–1237. 

産科合併症全般の増加 

Oron G, et al. Reprod Biomed Online 2018;37:341–348. 

今回の研究のカットオフ値は9mmでした。上記以外に癒着胎盤の発生率が高いことがわかりましたが、交絡因子で調整しても有意にはなりませんでした。 

~関連コラムもご参照ください~ 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 子宮内膜厚、形態

# 胎盤異常

# 周産期合併症

# 凍結融解胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

PGT-A後の産科・新生児転帰:システマティックレビュー&メタアナリシス(Hum Reprod. 2026)

2026.05.18

帝王切開における術後ケアの最適化:ERAS Society 2025年版ガイドライン(Part 3)(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.04.20

帝王切開における術中ケアの最適化:ERAS Society 2025年版ガイドライン(Part 2)(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.04.17

帝王切開における術前・周産期ケアの最適化:ERAS Society 2025年版ガイドライン(Part 1)(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.04.15

体外受精児や人工授精児と自然妊娠兄弟の出生時特性の比較(Fertil Steril. 2026)

2026.04.01

治療予後・その他の人気記事

非前置胎盤性癒着胎盤のリスク因子(Reprod Med Biol. 2024)

35歳以上の高齢出産についての推奨事項(Am J Obstet Gynecol. 2022:その2)

帝王切開既往と出産回数が子宮破裂リスクに与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2023.07.31

ノンメディカルな卵子凍結動画(日本産科婦人科学会)

2022.10.29

社会的卵子凍結は女性年齢とともに出産率は低下する(論文紹介)

45歳以上女性の出産転帰(BMC Pregnancy Childbirth. 2025)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

2024.03.14

禁欲期間が長いと妊活にはよくないです

2024.03.14

2020.10.26

夫婦の体重(BMI)は妊娠しやすさ(不妊)に影響する?(Fertil Steril. 2020)

2020.10.26

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

非前置胎盤性癒着胎盤のリスク因子(Reprod Med Biol. 2024)

2024.07.29