
はじめに
PGT-Aによる栄養外胚葉(TE)生検が胎盤発達に影響を及ぼし、妊娠高血圧症候群(HDP)、胎盤異常、早産、子癇前症、胎児発育不全などのリスクを高める可能性が理論的に懸念されてきました。これまでのメタアナリシスはPGT-M、PGT-SR、PGT-Aを混在させ、生検段階や凍結方法、新鮮胚移植と凍結融解胚移植の混在など多くの交絡を含んでいました。今回、TE生検・ガラス化凍結に限定し、PGT-A症例のみを対象としたシステマティックレビューおよびメタアナリシスをご紹介いたします。
ポイント
TE生検・ガラス化凍結を伴うPGT-A後の単胎妊娠では、PGT-Aを行わないIVF/ICSIと比較して産科・新生児合併症リスクの増加は認められませんでした。
引用文献
Hyttel CB, et al. Hum Reprod. 2026. doi: 10.1093/humrep/deag049.
論文内容
TE生検および全胚凍結を伴うPGT-A後の妊娠が、PGT-Aを行わないIVF/ICSI後の妊娠と比較して産科および新生児の有害アウトカムリスクを増加させるかを検証することを目的としたシステマティックレビューおよびメタアナリシスです。
PubMed、Embase、Cochrane Libraryで2024年11月15日に系統的検索を実施し、2025年6月11日に更新しました。組入基準は、(i) IVF/ICSIをPGT-Aの有無で比較するRCTまたはコホート研究、(ii) 胚盤胞期までの培養、(iii) TE生検、(iv) ガラス化凍結としました。除外基準は、(i) 症例集積・症例報告、(ii) 極体・分割期生検、(iii) 緩慢凍結法、(iv) 提供卵子使用、(v) 自然妊娠群との比較としました。主要アウトカムはHDP、早産、胎盤異常、低出生体重、超低出生体重、SGAとし、3研究以上で報告されたアウトカムについてメタアナリシスを行い、データが揃う場合はFETのみのサブグループ解析を実施しました。質評価にはコホート研究にNewcastle-OttawaスケールおよびRCTにRoB2、エビデンスの確実性評価にはGRADEを用いました。
結果
2,260件のレコードをスクリーニングし、12研究(56,113例の出生)が組入れられ、PGT-A群17,254例、非PGT-A群38,859例が解析対象となりました。組入研究のうち11件はコホート研究、1件はRCTでした。
主解析において、HDPはOR 1.13(95%CI 0.80-1.58)、早産はOR 1.00(95%CI 0.85-1.17)、胎盤異常はOR 1.02(95%CI 0.57-1.83)で、いずれも両群間に有意差は認められませんでした。
新生児アウトカムについても、低出生体重はOR 0.95(95%CI 0.77-1.17)、超低出生体重はOR 0.62(95%CI 0.33-1.15)、SGAはOR 0.93(95%CI 0.61-1.42)で、有意差はみられませんでした。FETのみに限定したサブグループ解析においても、HDP(OR 1.13, 95%CI 0.80-1.58)、早産(OR 1.20, 95%CI 0.91-1.59)、胎盤異常(OR 1.02, 95%CI 0.57-1.83)、低出生体重(OR 1.18, 95%CI 0.78-1.77)、超低出生体重(OR 0.68, 95%CI 0.44-1.05)、SGA(OR 0.93, 95%CI 0.61-1.42)のいずれにおいても有意差は認められませんでした。GDMおよびLGAは症例数が限られたためメタアナリシスを実施できませんでしたが、組入れ研究のいずれにおいても両群間に有意差は報告されていません。GRADEによるエビデンスの確実性は、HDP・胎盤異常・VLBW・SGAで「非常に低い」、GDMで「低い」、早産と低出生体重で「中程度」と評価されました。
私見
PGT後の周産期予後に関する先行メタアナリシスはHDPリスク増加を報告した論文(Hou W, et al. Fertil Steril. 2021、Zheng W, et al. Hum Reprod Update. 2021)、有害事象増加なしと報告した論文(Mao D, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024、Luo R, et al. BJOG. 2026)に分かれていました。
今回は不妊治療患者のPGT-A、胚盤胞移植に限定した報告となっています。
現時点ではPGT-Aの産科・新生児安全性については患者に対して概ね安心できる情報を提供できると考えられます。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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