治療予後・その他

2024.12.25

母体年齢と非染色体性先天異常の関係:メタアナリシス(Am J Obstet Gynecol 2024)

はじめに

WHO(世界保健機関)のデータによると、新生児の約6%が先天性異常を持って生まれています。非染色体先天異常(NCAs:nonchromosomal congenital anomalies)の病因は完全には解明されていません。非染色体先天異常発症における母親年齢との関連は知られていますが、文献には一貫性がありません。 

母体年齢と非染色体性先天異常の関連についてのシステマティックレビュー・メタアナリシスをご紹介いたします。 

ポイント

若年(20歳未満)および高齢(35歳以上)の妊娠では、非染色体性先天異常のリスクが有意に上昇することが明らかになりました。 

引用論文

Pethő B, et al. Am J Obstet Gynecol 2024. doi: 10.1016/j.ajog.2024.05.010 

論文内容

母体年齢が非染色体性先天異常(NCAs)に与える影響を評価し、スクリーニングプロトコルを改善するために実施されたシステマティックレビューとメタアナリシスです。PRISMA 2020ガイドラインに従い、MEDLINE、Cochrane Library、Embaseの3つのデータベースを用いて2021年10月19日までに公表された研究を検索しました。 

母体年齢がNCAsの発生率に与える影響を評価した人口ベースの研究を対象とし、年齢範囲、国、合併症の有無による制限は設けませんでした。研究間の異質性を考慮し、効果量のプールにはランダム効果モデルを用いました。 

結果

15,547件の研究から72件が選択しました。 

35歳以上の妊娠では非染色体性先天異常のリスクが31%上昇(RR: 1.31, CI: 1.07-1.61)、40歳以上では44%上昇(RR: 1.44, CI: 1.25-1.66)しました。染色体異常依存を除外した場合でも40歳以上では25%のリスク上昇(RR: 1.25, CI: 1.08-1.46)が見られました。具体的な異常については、口唇口蓋裂:40歳以上でリスク57%上昇(RR: 1.57, CI: 1.11-2.20)、循環器系異常:40歳以上でリスク94%上昇(RR: 1.94, CI: 1.28-2.93)、腹壁破裂(ガストロシーシス):20歳未満で約3倍のリスク上昇(RR: 3.08, CI: 2.74-3.47)となりました。 

私見

高齢妊娠におけるNCAsリスク上昇要因は、体外受精実施割合の増加、慢性疾患併存率の増加、環境有害因子への長期暴露が考えられていて、若年妊娠におけるNCAsリスク上昇要因は、不適切なプレコンセプション時期、社会経済的不利、栄養不足が考えられています。つまり、一部は予防できうる可能性を秘めています。プレコンセプションを整えることは今後の社会的課題だと考えています。 

文責:川井清考(WFC group CEO) 

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。 

# 受精

# 染色体

# 出生児予後

# 年齢素因

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

母乳を通じたSSRI曝露と小児の認知機能(JAMA Network Open. 2025)

2026.01.07

帝王切開既往と出産回数が子宮破裂リスクに与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2026.01.06

妊娠期ビタミンD補充による子どもの骨密度長期改善効果:MAVIDOS研究の追跡調査(Am J Clin Nutr. 2024)

2026.01.05

妊娠中ビタミンD補充が新生児骨健康に及ぼす影響:MAVIDOS研究(Lancet Diabetes Endocrinol. 2016)

2025.12.29

卵管妊娠(薬物治療 vs 外科的治療)の妊娠予後(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2025.12.23

治療予後・その他の人気記事

2025.12.31

2025年を振り返って:妊活コラム創設初年

がん患者の妊孕性保存 ASCOガイドラインアップデート2025(J Clin Oncol. 2025)

自然妊娠と体外受精妊娠、どっちが流産多いの?

2022.03.01

子宮動脈塞栓術(UAE)後の妊娠は危険?(Am J Obstet Gynecol. 2021)

妊娠前メトホルミンによる重症妊娠悪阻リスクの低下(Am J Obstet Gynecol. 2025)

帝王切開既往と出産回数が子宮破裂リスクに与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

腟潤滑ゼリーは妊娠率に影響する?

2022.01.24

2025.12.31

2025年を振り返って:妊活コラム創設初年

2025.12.31