体外受精

2026.08.05

抗菌薬治療によるCE治癒は次回FET転帰の改善と関連(BMC Pregnancy Childbirth. 2026)

はじめに

慢性子宮内膜炎(CE)の一部は抗菌薬治療によりCEの組織学的治癒は得られるとされる一方、その後の妊娠成績への影響については一致した見解が得られていません。さらに、これまでの研究の多くは反復着床不全(RIF)やRPL患者を対象としており、初回着床不全女性におけるエビデンスは限定的です。今回、初回着床不全女性を対象に、抗菌薬治療後のCE治癒の有無と凍結融解胚移植成績との関連を検討した中国からの大規模レトロスペクティブコホート研究をご紹介いたします。

ポイント

初回着床不全女性において、抗菌薬治療後にCEが治癒した群(CCE)はCPRおよびLBRが有意に高く、持続性CE(PCE)群では成績が低下しました。

引用文献

Wei L, et al. BMC Pregnancy Childbirth. 2026. doi: 10.1186/s12884-026-09233-8.

論文内容

IVF/ICSI後に初回着床不全を経験した女性において、抗菌薬治療後のCEの治癒の有無とその後のFETサイクルにおける妊娠成績との関連を評価することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。2019年5月から2023年12月までに中国生殖医療を行う施設でIVF/ICSI治療後の初回着床不全を経験した6,371人の女性を初期対象とし、厳格な除外基準(女性年齢>40歳、移植胚質、子宮内膜厚<8mmまたは>14mm、子宮鏡後6か月以内のFET未施行、子宮内癒着・粘膜下筋腫・子宮奇形・子宮腔内腫瘤、卵管留水症、染色体異常、早発卵巣不全、免疫疾患、子宮内膜症・子宮腺筋症など)を適用し、最終的に2,555 FET周期が解析対象となりました。子宮鏡は月経周期9-11日目に実施し、CEの確定診断はCD138免疫組織化学染色によりHPFあたり≥5個のCD138陽性形質細胞の存在と定義しました。CE診断例にはドキシサイクリン100 mg 1日2回+メトロニダゾール200 mg 1日2回を14日間経口投与し、次のFETサイクル前に再生検によりCD138で組織学的再評価を行い、治癒(CCE群)と持続(PCE群)を判定しました。主要評価項目はFETサイクルあたりのCPRおよびLBR、副次評価項目は早期流産率(EMR)としました。

結果

初回着床不全女性における子宮鏡所見の検討では、子宮内異常の有病率は40.1%(1,725/4,307)であり、子宮内膜ポリープおよび子宮内膜増殖症が19.9%(858/4,307)と最多でした。CEは15.3%(659/4,307)、子宮内癒着10.9%、中隔子宮1.8%、単角子宮1.6%、弓状子宮0.07%、粘膜下筋腫0.5%、子宮腔内異物0.7%でした。15.7%(675/4,307)の患者が2つ以上の異常を併存していました。最終解析対象2,555例のうち383例(15.0%)がCEと診断され、2,172例はCE陰性(NCE群)でした。
CE 383例全例に経口抗菌薬を投与し、1コース後の再評価で309例(80.7%)が治癒(CCE群)、74例(19.3%)が持続(PCE群)と判定されました。3群間で女性年齢(31.5 ± 3.8 vs. 30.6 ± 4.1 vs. 32.1 ± 3.8歳;P=0.035)、不妊期間(3.3 [1.5, 4.0] vs. 2.7 [2.0, 4.1] vs. 5.2 [3.0, 6.1]年;P=0.039)、不妊原因(P=0.001)に有意差が認められましたが、BMI、不妊種別、媒精方法、basal FSH、AMH、AFC、内膜調整プロトコル、移植日のEMT、移植胚数、移植胚タイプには有意差はありませんでした。
LBRはCCE群52.8%、NCE群45.2%、PCE群27.0%と3群間で有意差を認めました(P<0.001)。Post hoc解析ではPCE群はNCE群およびCCE群と比較して有意に低く、CCE群はNCE群より有意に高く、多変量調整後もこの関連は維持されました(CCE vs. NCE:adjusted OR 1.55 [1.06, 2.12]、P=0.013)。
CPRも同様にCCE群68.3% vs. NCE群59.7% vs. PCE群36.5%と3群間で有意差を認め(P<0.001)、調整後もCCE vs. NCEで adjusted OR 1.58 [1.43, 2.36](P=0.004)、CCE vs. PCEで adjusted OR 1.91 [1.47, 2.47](P<0.001)、PCE vs. NCEで adjusted OR 0.64 [0.42, 0.89](P<0.001)でした。
早期流産率は3群間で有意差は認められませんでしたが(9.0% vs. 13.5% vs. 18.5%、P=0.113)、PCE群で上昇傾向が認められました。

私見

初回着床不全という比較的早期の介入対象集団に焦点を当てている点が特徴的です。これまでのCE治療に関する主要な報告(Vitagliano A, et al. Fertil Steril, 2018; Cicinelli E, et al. Hum Reprod, 2015; Xiong Y, et al. Fertil Steril, 2021)はRIFまたはRPL集団を対象としており、初回着床不全における前向きエビデンスは極めて限定的でした。
PCE群がNCE・CCE群より有意に低成績であった点は、Xiong Y, et al. Fertil Steril, 2021、Cicinelli E, et al. Fertil Steril, 2021と整合的です。PCEは持続的炎症状態の残存を意味するため、Th1/Th2バランス異常やaberrant cytokine expressionを介して着床能を低下させる機序が示唆されます(Li Y, et al. Fertil Steril, 2020)。
臨床的に最も重要な示唆は、「CE治療後の組織学的治癒確認(re-biopsy)の臨床的価値」を示唆する点です。これまで治癒確認を行わずに胚移植を進めるか、治癒確認後に移植するかを直接比較した前向き研究は存在しません。
亀田IVFクリニック幕張においても、保険適用の範疇を考えるとre-biopsyを行うことはありません。今後、治癒判定についてどのような位置付けでおこなうか重要な臨床的問いとして残されており、今後の前向き研究が望まれます。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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