はじめに
国内では全胚凍結を中心としたPPOS(progestin-primed ovarian stimulation)が増えてきています。4,000人以上の出生児を対象とした検証でも、PPOSは新生児の有害な転帰や先天奇形の増加とは関連していないことが報告されています(MPAによるPPOS(プロゲスチンプロトコール)が普及したきっかけ)HMGアンタゴニストと比較検証した前向き研究がご紹介させていただきます。
ポイント
卵子提供ドナー318名を対象とした無作為化比較試験で、MPA併用のPPOSはGnRHアンタゴニスト法と比べ、回収卵子数・MII数・内分泌プロファイル・移植可能胚数に差はなく、レシピエントの着床率、臨床妊娠率、継続妊娠率、出生率、累積出生率にも有意差を認めませんでした。早発排卵は両群とも生じていません。
引用文献
Giles J, Alama P, Gamiz P, Vidal C, Badia P, Pellicer A, Bosch E. Medroxyprogesterone acetate is a useful alternative to a gonadotropin-releasing hormone antagonist in oocyte donation: a randomized, controlled trial. Fertil Steril. 2021;116(2):404–412. doi:10.1016/j.fertnstert.2021.02.036
論文内容
酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)によるPPOSを受けた卵子提供ドナーと、GnRHアンタゴニストによる従来の卵巣刺激を受けた卵子提供ドナーの卵巣反応および生殖成績を比較した、非劣性の前向き無作為化比較試験です。2017年10月から2019年6月まで実施されました。ドナー318名を1:1の割合で無作為に2群へ割り付け、得られた卵子を364名のレシピエントに割り当てています。ドナー161名には卵巣刺激開始時からMPA 10mgを1日1回経口投与し、156名にはGnRHアンタゴニスト(ガニレリクス0.25mg/日)を投与しました(主席卵胞径が13mmに達した時点で開始)。経腟超音波検査を実施し、モニタリング中に血清エストラジオール、LH(早発サージ発生率を含む)、プロゲステロン濃度を記録し、さらに卵胞液中の内分泌プロファイル、回収卵子数、MII数、妊娠成績なども解析しています。
結果
回収卵子数はMPA群21.4±11.7個、アンタゴニスト群21.2±9.2個でした(平均差0.14;95%CI −2.233〜2.517)。rFSHの総投与量、卵巣刺激期間、血清および卵胞液の内分泌プロファイルは2群で同等でした。両群とも早発排卵は認められませんでした。レシピエントの成績も、着床率(MPA群68.1%、アンタゴニスト群62.0%)、臨床妊娠率(64.5%対57.8%)、継続妊娠率(55.4%対48.5%)、出生率(55.1%対48.5%)、累積出生率(73.8%対70.7%)のいずれにおいても統計学的有意差は認められませんでした。数値上はMPA群がやや良好でしたが、有意差はありません。
結論
MPAによるPPOSにより、GnRHアンタゴニスト法と同様の回収卵子数、内分泌プロファイル、移植可能胚数、および妊娠転帰が得られました。
試験プロトコル
月経周期2〜3日目、またはピル最終内服から5日間のウォッシュアウト後に刺激開始(ピル前投与例:MPA群50.4%(112/161)、アンタゴニスト群49.5%(110/157))。rFSH初期投与量は150〜225単位。MPA群は開始当日からトリガー当日まで1日1回内服、アンタゴニスト群は卵胞径13mmになってから投与(flexible pattern)。トリガーはGnRHアゴニスト(トリプトレリン)の皮下注射で実施し、36時間後に採卵しました。
| MPA法 | アンタゴニスト法 | |
| Donor 女性年齢(歳) | 24.2±4.3 | 24.1±4.5 |
| Donor BMI (kg/m2) | 22.1±2.5 | 22.7±2.7 |
| Donor AFC(個) | 26.9±8.1 | 26.3±8.4 |
| Donor AMH (pmol/L) | 32.6±16.1 | 29.5±14.7 |
| 卵巣刺激日数(日) | 10.0±1.5 | 10.1±1.3 |
| Total FSH量(単位) | 1,964±431 | 1,973±392 |
| 13mm以上卵胞数(個) | 17.1±6.1 | 16.3±6.1 |
| 回収卵子数(個) | 21.4±11.7 | 21.2±9.2 |
| MII数(個) | 16.7±9 | 16.9±7.7 |
| 成熟率(%) | 79 | 81.2 |
私見
PPOSの胚質はアンタゴニスト法と変わらない(Hum Reprod. 2020)
は自己卵子を用いた検討で平均年齢も37歳前後でしたが、今回は24歳前後の卵子提供ドナーにおける有用性を示した論文です。トリガー日のLHはむしろMPA群で有意に高値(1.8±2.0対0.9±1.1 IU/L)でしたが、両群とも早発排卵はなくGnRHアゴニストトリガーでの成熟率にも差はありませんでした。一方、採卵後の血清E2・P4はMPA群で低く、下垂体抑制がより遷延することが本題以外にも記載されています。今後はOHSSとの関連の論文も数多く出てきそうですね。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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