体外受精

2022.04.16

レコベル®皮下注ペンの国内でのOHSSリスク評価(Reprod Biomed Online. 2021)

はじめに

世界初のヒト由来細胞株を元に作成した新規リコンビナントFSH製剤レコベル®皮下注ペン(フォリトロピンデルタ)が国内でも販売され始めています。同薬剤を日本人女性に対してAMHと体重に基づき個別化固定用量で行った卵巣刺激のOHSS発症リスクを、フォリスチム®注(フォリトロピンベータ)と比較試験を行った結果をご紹介いたします。

ポイント

個別化フォリトロピンデルタ用量での卵巣刺激は、従来法と比較して回収卵子数は非劣性を保ちつつ、OHSS発症率を約50%低下させることが国内多施設共同試験で示されました。

引用文献

Osamu Ishihara, et al. Reprod Biomed Online. 2021. DOI: 10.1016/j.rbmo.2021.01.023

論文内容

国内17施設で実施された無作為化対照、評価者盲検、多施設共同、非劣性試験は、347名の日本人女性を対象に実施されました。個別化フォリトロピンデルタ用量(AMH 15 pmol/l以上は12μg/日、AMH 15 pmol/l未満は0.10-0.19 μg/kg/日、最小6μg/日、最大12μg/日)をフォリトロピンベータ用量(最初の5日間は150 IU/日、その後75単位ずつ最大375IU/日まで調整可能)とランダムに割付け、回収卵子数、OHSS発症頻度を比較しました。
卵巣刺激はrFSHアンタゴニスト法です。卵巣刺激6日目からfixedでガニレストを投与しています。17mm以上の卵胞が3個以下、35個以上の場合は採卵を中止とし、25-35個の場合はGnRHアゴニスト点鼻、それ以外はuHCG 5000IUでトリガーしています。OHSSはGolanの分類システム(Golanら、1989)に従って分類しました。早期OHSSは最終卵胞成熟のトリガー後9日以内の発症、後期OHSSは最終卵胞成熟のトリガー後9日以降の発症と定義しました。

結果

フォリトロピンベータ群と比較して、フォリトロピンデルタ群の採卵数は非劣性が認められました(9.3個 vs. 10.5個、95%CIの下限値-2.3)。OHSS頻度は減少し、OHSSの発生率は11.2% vs. 19.8%(P = 0.021)、中度/重度OHSS率は7.1% vs. 14.1%(P = 0.027)となりました。

私見

この論文はレコベル®皮下注ペンを用いた個別化卵巣刺激では発育卵胞数が減り、回収卵子数が低下したのでOHSSリスクが減ったという報告です。Normal-high responderの日本人女性では、個別化投与アプローチでは平均10.8個の回収卵子数となり、従来の投与アプローチよりも約2個少ない回収卵子数となり、結果として中度/重度OHSS率が約50%低くなることがわかりました。レコベル®皮下注ペンがフォリスチム®注に比べて弱い、OHSS発症リスクが低いというわけではなく、今回のレコベル®皮下注ペンを用いた個別化卵巣刺激の用量設定がOHSS発症リスクを下げ、新鮮胚移植に適した適切目標採卵数(8-14個)をめざせるアルゴリズムであることを示しています。

 レコベル®皮下注ペン群 フォリスチム®注群 
平均女性年齢 34.2 ± 3.5 歳 34.0 ± 3.4歳 
周期数 170名 177名 
BMI 21.4 ± 2.7  21.6 ± 2.8  
AMH 18.2 (11.0–28.2) pmol/l 16.7 (11.3–27.4) pmol/l 
AFC 11.5 ± 6.9  11.4 ± 6.9  
投与期間 8.9 ± 1.9日 8.8 ± 1.7日 
Total量 83.5 ± 28.9μg 1499 ± 514 IU 
一日換算量 9.4 ± 2.5μg 167 ± 25 IU 
回収卵子数 9.3 ± 5.4個 10.5 ± 6.1個 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# GnRHアンタゴニスト

# OHSS

# 卵巣刺激

# 総説、RCT、メタアナリシス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

1回の採卵から2人の出生:one-and-doneアプローチ(Fertil Steril. 2026)

2026.03.16

プロバイオティクス・微量栄養素サプリメントと採卵成績の関連(J Assist Reprod Genet. 2025)

2026.03.10

PCOS女性におけるIVF前経腟的卵巣穿刺術の有用性(J Assist Reprod Genet. 2026)

2026.03.04

hCGトリガー日LH値とIVF周期における累積出生率(J Assist Reprod Genet. 2025)

2026.03.03

EFS予防におけるGnRHaトリガー後ホルモン測定の有用性(J Assist Reprod Genet. 2025)

2026.03.02

体外受精の人気記事

SEET法は凍結融解胚移植の成績を悪化させる可能性あり?(Sci Rep. 2025)

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

自然周期採卵における採卵時適正卵胞サイズ(Frontiers in Endocrinology. 2022)

高齢女性における二個胚移植の臨床結果(当院関連報告)

ART不成功におけるタクロリムス治療(J Reprod Immunol. 2026)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

SEET法は凍結融解胚移植の成績を悪化させる可能性あり?(Sci Rep. 2025)

2026.03.30

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

体外受精児や人工授精児と自然妊娠兄弟の出生時特性の比較(Fertil Steril. 2026)

2026.04.01

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03