プレコンセプションケア

2022.06.14

妊娠前後のリスク因子は妊娠初期胎児発育に影響する?(Reprod Biomed Online. 2022.)

はじめに

自然妊娠を期待できる女性に対して、妊娠時のリスク因子が多いことが妊娠初期の胎児発育へ影響を与えるかどうか調査した報告をご紹介します。

ポイント

自然妊娠では妊娠に対する社会的、生活習慣的、医学的リスクが多ければ多いほど、胎児発育に影響を与えることがわかりました。 

引用文献

Sofie K M van Zundert, et al. Reprod Biomed Online. 2022. DOI: 10.1016/j.rbmo.2022.02.011 

論文内容

オランダで実施された縦断的前向き妊娠ベースを用いたコホート研究の二次解析結果です。今回の症例では、多胎妊娠、流産、死産、先天性障害、卵子提供後妊娠、分娩不明妊娠は除外されています。555名の妊娠(自然妊娠324名、体外受精妊娠231名)を対象としました。妊娠前後の社会的、生活習慣的、医学的リスクを自己記入式質問票にて収集しました。妊娠初期評価は3D超音波を用いて妊娠7週、9週、11週にCRL(頭殿長)と胚体積を測定しました。 
リスク因子は社会的領域(n=5)(女性年齢20歳未満もしくは40歳以上、非西洋的背景[日本人は高等教育を受けていると西洋的背景に含まれています]、独身、貧困地域[NSS < -1]、教育レベル[ISCED 0-2])、ライフスタイル(n=5)(喫煙、アルコール摂取、薬物使用、果物・野菜の摂取不足[<400g/日]、身体活動不足[<150分/週])、医療的領域(n=4)(慢性疾患、何らかの薬物使用、BMI 18.5未満もしくは30以上、精神障害)です。

結果

女性妊娠時の年齢の中央値は32.3歳(IQR 29.4-35.4)で、ほとんどの女性が西洋的背景を持ち(n=487 [87.7%])、パートナーがいて(n=546 [98.4%])、貧困でない地域に住み(n=448 [80.7%])、高い教育を受けていました(n=358 [64.5%])。合計78名(14.1%)の女性が喫煙し、179名(32.3%)がアルコールを摂取し、6名(1.1%)が薬物を使用していました。果物と野菜の摂取(n=381 [68.6%])と身体活動(n=431 [77.7%])は不足していました。調査対象者の半数以上が少なくとも1つの慢性疾患に罹患しており(n=339 [61.1%])、薬物を使用していました(n=342 [61.6%])。BMI中央値は24.3(IQR 21.9-28.1)で、11名(2.0%)の女性は低体重でしたが、96名(17.3%)が肥満でした。 
ほとんどの女性は2つ以上のリスク因子を持っていました(n=451 [81.3%])。 

2つ以上のリスク因子は、自然妊娠における胚の成長と負の相関がありました。 
自然妊娠の場合、2つのリスク因子を持つ女性は0-1つリスク因子を持つ女性と比較してCRL(頭殿長)と胚体積ともに小さくなっていました(√CRL: β = -0.29 mm, 95% CI -0.56 to -0.02; √3 EV: β = -0.14 cm3, 95% CI -0.27 to -0.01)。体外受精妊娠では、これらの差は認められませんでした。 

私見

今回の結論で興味深いのは、分娩に至った症例でも自然妊娠ではリスク因子が多いと胎児発育に影響を与えている点です。リスク因子を妊娠前から少しでも除外することがよいのかもしれません。また、体外受精妊娠では今回のリスク因子での影響は相関が見られませんでした。現在まで、体外受精妊娠のリスク上昇に目を向けられてきましたが、体外受精妊娠と自然妊娠の女性のリスク因子が異なることや、体外受精過程によって淘汰されるリスク因子がこの中にあり評価が困難なのかもしれません。 
明確に言えることは、妊娠を考えたら、妊娠に不利なことをできる範囲で減らしていくことが妊活の上で大事なのかもしれません。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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