体外受精

2022.06.16

トリガー時のE2/P4比は胚質に影響を与えるの(J Assist Reprod Genet. 2022)

はじめに

排卵誘発(トリガー)日のプロゲステロンレベルの上昇とともに胚質が低くなったという報告(HuangB, et al. PLoS ONE. 2016、Vanni VS, et al. PLoS ONE. 2017、Racca A, et al. Hum Reprod. 2018)がありますが、全胚凍結して良好胚になってしまえば成績が変わらないという報告もでてきています。胚質は、基本的には形態評価による主観的な判断になりますが、より客観的な指標である着床前診断の正倍数性率でトリガー時のプロゲステロン値が上昇した胚がどうか調査した報告では1.5ng/mLカットオフ、2.0ng/mLカットオフともに異数性率に差がないことが報告されています(Kofinas JD, et al. J Assist Reprod Genet. 2016、Hernandez-Nieto, et al. Hum Reprod. 2020)。 
排卵誘発時のエストラジオール/プロゲステロン(E2/P4)比が全胚凍結を実施する際、生殖医療成績に影響を与えているかどうかを評価した報告をご紹介いたします。

ポイント

トリガー時のE2/P4比は、卵子回収率、成熟率、胚盤胞の正倍数性率に影響を与えません。 

引用文献

Marisa Berger, et al. J Assist Reprod Genet. 2022. DOI: 10.1007/s10815-022-02491-3 

論文内容

2018年1月から12月までのアメリカの生殖医療施設において初回体外受精周期を対象とした後方視的コホート研究です。排卵誘発日に血清エストラジオール(E2)およびプロゲステロン(P4)濃度を測定し、E2/P4比を算出しました。受精胚は胚盤胞期培養し着床前検査をNGSで実施しました。回収卵子率(回収卵子数/≧13 mm卵胞数)、成熟率(MII卵数/回収卵子数)、正倍数性率(正倍数性胚盤胞数/生検胚数)を算出しました。臨床妊娠、継続妊娠(妊娠10週以上)、凍結融解胚移植後の出生をE2/P4との関連で検討しました。 

結果

211名の女性が卵巣刺激(ロング法、ショート法、アンタゴニスト法)を実施しました。トリガー時の平均E2濃度は3,449±2,040 pg/mL、平均P4濃度は1.13±0.58 ng/mLで、平均E2/P4比は3.36±2.04でした。E2/P4比の四分位値間に採卵率、成熟率、正倍数性率に関する差はありませんでした。138個の凍結融解胚移植が実施されましたが、臨床妊娠率、継続妊娠率、出生率にE2/P4比の四分位値間の差はありませんでした。 

私見

当研究では女性平均年齢35歳前後、HMG量が3,300単位前後(卵巣刺激が9日前後)で13mm以上の発育卵胞を15個以上育てるような卵巣刺激です。この強度の刺激ではプロゲステロン値が上がってくることは、たまにありますが気にすることはなさそうですね。FSH/HMG製剤の違いなどでエストラジオール値が異なるという報告は多々ありますので、あくまで各施設の成績や使っている薬剤を目安に標準的治療の中にも経験則が残っていくことが大事だと考えています。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# プロゲステロン/プロゲスチン

# 着床前遺伝学的検査(PGT)

# 排卵誘発、トリガー

# 胚質評価

# 凍結融解胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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