プレコンセプションケア

2022.09.09

体外受精の成功を握るタンパク摂取法は?(Am J Clin Nutr. 2018)

はじめに 

体外受精成績と食事の関係は、わかっていないことが多くあります。 これまでの研究では、地中海式食事パターン、植物性たんぱく質、低血糖炭水化物、不飽和脂肪酸、葉酸と鉄分の摂取を推奨する食事パターンをより忠実に守ることが不妊症のリスクを低下させるとされてきました。タンパク質にだけフォーカスをあててみても、生殖医療において影響がありそうです。タンパク質は生物学的特徴、食品加工、調理方法の違いにより、栄養組成が大きく異なることがわかっています。男性では加工肉の摂取は精液の質の低下と関連し、魚類の摂取は精液の質の向上と関連しているとされています。女性では赤身肉や加工肉の摂取量が多いと成功率が低く、魚の摂取量が多いと成功率が高く、その他のたんぱく質が豊富な食品の摂取量は成功率に関係しない可能性が高いと考えられています。Environment and Reproductive Health(EARTH)研究に参加した女性を対象に、肉類およびその他のタンパク質の多い食品(卵、大豆由来製品、豆、ナッツ)の摂取量と不妊治療成績との関連性を評価した報告をご紹介いたします。 

ポイント 

タンパクを魚で摂取すると、体外受精治療の出生率は上昇します。 魚を食べましょう。 

引用文献 

Feiby L Nassan, et al. Am J Clin Nutr. 2018 Nov 1;108(5):1104-1112. doi: 10.1093/ajcn/nqy185. 

論文紹介 

Massachusetts General Hospital Fertility Center の前向きコホートに登録し、不妊治療のために女性 351 名(体外受精周期598周期)を対象としました。食物頻度質問票により摂取量を評価しました。一般化線形混合モデルを用いて、タンパク質が豊富な食品(肉、卵、豆、ナッツ、大豆)の摂取量と、体外受精周期ごとの出生率を検証しました。 結果: 魚・鶏肉・加工品・赤身肉を含む肉類の平均摂取量は1.2 servings/日であり、そのほとんどは鶏肉(35%)、魚(25%)、加工肉(22%)、赤身肉(17%)から摂取されていました。魚の摂取量は、出生率と正の相関がありました。魚の摂取量の四分位が増加する女性における出生の多変量調整確率は、それぞれ34.2%(95% CI:26.5%-42.9%)、38.4%(95% CI:30.3%-47.3%)、44.7%(95% CI:36.3%-53.4%)、および 47.7%(95% CI:38.3%-57.3%)でした(P=0.04)。魚摂取量を2 servings/週に増やすと出生率は、他の肉から置き換わった場合 OR 1.54(95%CI:1.14-2.07)、他のタンパク質の多い食品から置き換わった場合OR 1.50(95%CI:1.13、1.98)、加工肉から置き換わった場合OR 1.64(95%CI:1.14、2.35)と上昇することがわかりました。 

私見 

魚介類および長鎖ω-3脂肪酸(特にエイコサペンタエン酸)の摂取が生殖能力を改善する可能性を示唆しています。他の報告でも、魚の摂取が胚盤胞形成の増加と関連していることが示されています(Braga DP, et al. Reprod Biomed Online. 2015;31(1):30–8.)。しかし、魚油サプリメントの使用は出生と関係がなかったことから、複数のメカニズムが作用している可能性が考えられます。 妊娠中または妊娠の可能性のある女性に魚摂取を勧める場合の懸念材料は、水銀、有機塩素、ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニルなどの環境汚染物質を同時に摂取するリスクです。アメリカでは胎児がメチル水銀に暴露するのを制限する目的で、妊娠中または妊娠の可能性がある女性は魚介類を3 servings/週に制限することを推奨しています。 上記を踏まえて魚中心のタンパク摂取を心がけ過剰摂取を避けていただくというのが、現在のところのおすすめかなと考えています。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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