体外受精

2024.04.05

北欧中心でのフォリトロピンデルタの個別化卵巣刺激RCT(Fertil Steril. 2017)

はじめに

フォリトロピンデルタの個別化卵巣刺激RCTは北欧→日本→アジアという順番で投稿されました。最初に発表された北欧でのRCTをご紹介いたします。 

ポイント

フォリトロピンデルタによる個別アルゴリズムによる卵巣刺激は北欧諸国における新鮮胚移植の妊娠率・出生率を維持し、OHSSリスクを低減させることがわかりました。

引用文献

Anders Nyboe Andersen, et al.  Fertil Steril. 2017 Feb;107(2):387-396.e4.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2016.10.033.

論文内容

北欧中心に行われた個別フォリトロピンデルタ卵巣刺激とフォリトロピンアルファ卵巣刺激を1,329名の初回体外受精女性(18~40歳)で比較検討した無作為化、多施設、評価者盲検、非劣性試験(ESTHER-1)です。 
個別フォリトロピンデルタ卵巣刺激は、AMH 15pmol/l未満は12μg/日、15pmol/l以上は個別アルゴリズム(0.19~0.10μg/kg;最小~最大6~12μg)で、フォリトロピンアルファは、最初の5日間は150IU/日(11μg)とし、その後は個々の反応に応じて投与量を調節可能とするGnRHアンタゴニスト法にて行いました。卵胞発育不良の場合(直径17mm以上の卵胞が刺激20日目までに3個以上到達しないと責任医師が判断した場合)は周期中止としました。 
主要評価項目は妊娠継続率としました(非劣性マージン8.0%)。 

結果

妊娠継続率(30.7% vs. 31.6%;差0.9%[95%信頼区間(CI)5.9%~4.1%])、着床継続率(35.2% vs. 35.8%;0.6%[95%CI 6.1%~4.8%])、および生児出生率(29.8% vs. 30.7%;0.9%[95%CI 5.8%~4.0%])は、個別化フォリトロピンデルタ群とフォリトロピンアルファ群で差がありませんでした。 
個別化フォリトロピンデルタ群では、総ゴナドトロピン量は少なく(90.0±25.3 ug vs. 103.7±33.6ug)、8-14個の回収卵子数を確保できた患者割合が多く(43.3% vs. 38.4%)、反応不良割合(AMH15pmol/L未満の患者における回収卵子数<4個)が少なく(11.8% vs. 17.9%)、過剰反応(AMH 15pmol/L以上女性の回収卵子数>15個または>20個)が少なく(それぞれ 27.9% vs. 35.1% 、 10.1% vs. 15.6%)、OHSS予防介入は少なくなりました(2.3% vs. 4.5%)。 
回収卵子数(10.0±5.6個 vs. 10.4±6.5個)、胚盤胞数(3.3±2.8個 vs. 3.5±3.2個)は同程度でした。 

私見

フォリオトロピンデルタは卵巣予備能がやや低めの患者に国内投与量 12ug/dayのmax doseで使う群が良い結果に至っている印象を受けます。 

メーカーの患者向けパンフレット 
レコベル®皮下注ペンを使用される方へ – Find FERRING

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 卵巣刺激

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

PP法とGnRHアンタゴニスト法比較:システマティックレビューとメタアナリシス(J Assist Reprod Genet. 2025)

2025.09.19

DYD-PPOS vs. MPA-PPOS vs. GnRHアンタゴニスト(J Assist Reprod Genet. 2025) 

2025.07.08

卵巣反応性不良患者における自然周期と調節卵巣刺激の累積生児獲得率(J Assist Reprod Genet. 2025)

2025.07.03

フォリトロピンデルタを用いたPPOS法 vs. アンタゴニスト法(Cureus 2025)

2025.06.05

Normal responderにおけるトリガー法の比較(Fertil Steril. 2025)

2025.05.14

体外受精の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

PGT-Aによる体外受精での出産までの期間への影響(Fertil Steril. 2025)

レスベラトロールにおける生殖機能への影響

day5-8に生検された胚盤胞のeuploidy率と生殖成績:多施設共同研究(J Assist Reprod Genet. 2025)

単一胚盤胞移植後の品胎妊娠―発生頻度と発生機序について(J Assist Reprod Genet. 2025)

反復ガラス化凍結と反復TE生検が胚盤胞移植成績に与える影響(J Assist Reprod Genet. 2025)

今月の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

2025.09.02

挙児希望男性の初回精液検査・精子DNA断片化率・精液酸化還元電位の異常頻度(日本受精着床学会雑誌. 2024)

2025.09.02

2025.09.03

レトロゾール周期人工授精における排卵誘発時至適卵胞サイズ(Fertil Steril. 2025)

2025.09.03

男性不妊と女性不妊におけるART妊娠の周産期予後の違い(Fertil Steril. 2025)

2025.09.08

PGT-Aによる体外受精での出産までの期間への影響(Fertil Steril. 2025)

2025.09.09

レスベラトロールにおける生殖機能への影響

2024.10.15