一般不妊

2025.09.23

子宮筋腫関連不妊症:機序と管理(Fertil Steril. 2024)

はじめに

子宮筋腫の不妊症への影響は部位や大きさにより意見が分かれます。すべての筋腫を同じに取り扱うのではなく、FIGO分類システムを中心に考慮すべきです。こちらに関してまとめた総説をご紹介いたします。

ポイント

筋腫関連不妊症の管理には主に外科的介入が含まれ、筋腫のタイプ、サイズ、位置に応じて個別化されたアプローチが必要です。

引用文献

Jacques Donnez, et al.Fertil Steril. 2024 Jul;122(1):31-39.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.02.049.

論文内容

子宮筋腫と不妊症の関連、妊孕性を障害する疑わしい機序、筋腫関連不妊症の管理についての総説です。批判的に分析することを目的としています。 

2021年Somiglianaらのメタアナリシス・システマティックレビューでは、子宮筋腫の自然妊孕性への影響は不明確で十分に調査されておらず、不妊症と筋腫を有する女性を適切にカウンセリングするためには、よく設計された研究が緊急に必要であると結論付けています。 

粘膜下筋腫(FIGO分類0、1、2型)は確実に妊孕性に有害であることが、2つの堅実なメタアナリシスによって示されています。妊娠率、継続妊娠率、生児出生率は子宮筋腫を有する女性では筋腫のない女性と比較して有意に低くなっています。筋層内筋腫(タイプ3、4、5、6、2-5)の不妊症への影響については依然として議論がわかれるところです。 

子宮筋腫が妊孕性を障害する機序は、1. 子宮腔の歪み、2. 子宮内膜および筋層の血流障害 (筋腫による血流分布の変化が子宮内膜の血流を減少)、3. 子宮収縮性の増加、4. 分子レベルでの変化 着床に重要なサイトカイン(LIF、IL-10/11)や細胞接着分子(E-カドヘリン)の発現が低下、5. 子宮内膜受容性の障害 筋腫から分泌されるTGF-β3がHOXA-10遺伝子発現を抑制し、子宮内膜受容性を全体的に低下、6. 筋腫被膜の影響 筋腫周囲の偽被膜の肥厚により神経内分泌繊維が増加し、子宮収縮性に影響、と考えられています。 

治療アルゴリズムは以下の戦略を提唱しています。

  • タイプ0、1、2(<3cm): 子宮鏡的筋腫摘出術 
  • タイプ2(≥3cm): GnRHアンタゴニスト3ヶ月前処置後の子宮鏡的筋腫摘出術 
  • タイプ3-4-5(>3cm): 複数の筋層内筋腫±子宮腺筋症の場合
  1. 患者年齢とAMH値: 卵巣予備能評価により治療緊急性を判断し 
    状況により生殖補助医療での卵子・受精胚獲得を優先 
  2. GnRHアンタゴニスト治療反応: 3ヶ月間の医学的治療後の筋腫縮小効果を評価 
  3. 治療反応による分岐:
    • 良好反応: 自然妊娠トライまたは即座の胚移植を検討 
    • 中等度反応(筋腫>3-4cm残存): 即座の胚移植を検討 
    • 不良反応: 外科的治療(筋腫摘出術)

従来の「手術ファースト」から「医学的治療ファースト」へのパラダイムシフトを提案していることです。GnRHアンタゴニストによる「筋腫縮小」と「移動効果」(筋腫を子宮腔から遠ざける効果)により、手術を回避できる可能性を示唆しています。 

現在の管理戦略には主に外科的介入が含まれ、子宮鏡下筋腫摘出術、開腹術、腹腔鏡下手術、および子宮動脈塞栓術や放射線学的または超音波ガイド下での集束超音波などの非外科的アプローチが含まれます。

私見

GnRHアンタゴニストの使用により筋腫サイズを縮小させ、子宮腔から遠ざける「移動効果」という概念は面白いですね。FIGO分類に基づく個別化されたアプローチの重要性が強調されており、タイプ3筋腫で2cm以上、タイプ4または5筋腫で3cm以上という具体的な治療介入基準が提示されているのは臨床的に有用です。しかし、著者らも認めているように、高品質なランダム化比較試験の不足が最大の問題であり、エビデンスに基づく治療指針の確立には更なる研究が必要です。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 子宮鏡

# 子宮筋腫、子宮腺筋症

# 腹腔鏡

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

PCOS/内膜症/併存疾患に関連するタグ

あわせて読みたい記事

子宮内膜症性囊胞の大きさは卵巣予備能に影響する?(Hum Reprod Open. 2026)

2026.09.18

非妊婦外陰腟カンジダ症に対するプロバイオティクスの治療効果(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.08.29

PCOSと高血圧・脂質異常症リスク:スウェーデン全国レジストリ研究(Hum Reprod. 2026)

2026.08.11

多毛症の原因疾患と男性ホルモン動態の特徴(J Clin Med. 2025)

2026.07.01

一般不妊の人気記事

妊娠できるカップルはほぼ6ヶ月以内に妊娠する。(論文紹介)

2021.11.11

腟潤滑ゼリーは妊娠率に影響する?

2022.01.24

着床する時期のタイミングは妊娠率に影響するの?(Fertil Steril. 2014)

2020.08.05

妊娠していない女性でもhCGは陽性になることがあるの?

2021.02.22

AMHが低いと早く閉経するの?

2021.01.07

2025.09.03

レトロゾール周期人工授精における排卵誘発時至適卵胞サイズ(Fertil Steril. 2025)

2025.09.03

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2024年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2026.09.10

千葉県「早期不妊検査費助成事業」が2026年10月1日から始まりました―夫婦ふたりで不妊検査を受けると、1組につき上限3万円まで助成―

2026.10.01

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

卵子の大きさ

2025.03.08