体外受精

2023.08.30

新鮮胚移植(初期胚 vs. 胚盤胞)の周産期転機:英国(Fertil Steril. 2023)

はじめに

新鮮胚移植を行う場合、単胎妊娠・出産の周産期転機(早産や出生体重)に対して、初期胚と胚盤胞で差があるかどうか調査した報告をご紹介いたします。

ポイント

新鮮胚移植では、初期胚と胚盤胞のどちらを移植しても、出生体重や早産リスクなどの周産期転機に有意な差は認められないことが大規模なレトロスペクティブ研究で示されました。

引用文献

Nicola Marconi, et al. Fertil Steril. 2023 Aug;120(2):312-320. doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.04.018.

論文内容

イギリスの全不妊治療施設のデータベース(2012年-2018年: 60,926例)を用いて、初期胚と胚盤胞期胚の単胎妊娠・出産の周産期転帰を比較することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。主要評価項目は出生時週数と出生時体重としました。

結果

胚盤胞群は42,677例、初期胚群は18,249例でした。新鮮胚盤胞移植と新鮮初期胚移植後の単胎妊娠・出産における早産(aRR、1.07;95%CI、1.00-1.15)および超早産(aRR、1.05;95%CI、0.91-1.21)リスクにはほとんど差がないと考えられました。低出生体重児(aRR、1.02;95%CI、0.95-1.09)、超低出生体重児(aRR、0.96;95%CI、0.83-1.11)、高出生体重児(aRR、0.97;95%CI、0.90-1.04)、超高出生体重児(aRR、0.91;95%CI、0.77-1.08)リスクも同様に差がありませんでした。

私見

Nicola Marconiは他にも新鮮胚移植の周産期転機に関しての報告を出しています。こうみると、高出生体重児は長期培養より凍結がリスク因子なのでしょうか。

Nicola Marconi, et al. Hum Reprod. 2019 Sep 29;34(9):1716-1725.
今回同様の1999年から2011年の英国における周産期データベースでは、新鮮胚盤胞移植と初期胚移植にて早産、低出生体重児/高出生体重児、先天異常リスク増加は認めていません。

Marconi N, et al. Hum Reprod Update. 2021; 28: 1-27
35件報告(520769単胎妊娠)新鮮胚盤胞移植では、新鮮初期胚移植と比較して、高出生体重児(RR 1.14;95%CI 1.05-1.24)および超早産(RR 1.17;95%CI1.08-1.26)リスク増加を認めました。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 周産期合併症

# 新鮮胚移植

# 初期胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

初回体外受精前の子宮鏡検査は出生率を改善する?inSIGHT試験(Lancet. 2016)

2026.07.13

既往帝王切開が体外受精治療成績に与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.07.03

精子DNA断片化はPGT-Aの結果に影響するのか?―胚染色体の正倍数性と男性因子の新たな視点 (Eur J Med Res、2025)

2026.05.02

新鮮胚胚盤胞移植後の周産期・小児期予後(Hum Reprod. 2025)

2026.02.10

絨毛性疾患既往歴が生殖補助医療に及ぼす影響(J Assist Reprod Genet. 2025)

2025.12.02

体外受精の人気記事

自然周期での小卵胞採卵は生殖医療成績を改善する(Fertil Steril. 2016) 

2023.10.16

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

2022.06.24

40歳以上のART累積出生率(Sci Rep. 2024)

2024.11.07

卵巣刺激に用いるHMG製剤とは

2021.02.24

今月の人気記事

自然周期での小卵胞採卵は生殖医療成績を改善する(Fertil Steril. 2016) 

2023.10.16

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

2021.09.11

日本の妊娠可能男性の精液基準値は?(BMJ Open. 2013)

2021.09.11

睡眠と精液検査② (論文紹介)

2022.08.13

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03