体外受精

2023.05.24

PCOSは正常胚を戻しても妊娠率が低い(Reprod Biomed Online. 2023)

はじめに

PCOS女性は、着床から妊娠継続まで不思議と上手くいかないことを経験することがあります。胚の異数性には影響がないということが報告から積み重なっていますが、内膜側の異常なのでしょうか。正倍数性胚を移植した場合の生殖医療成績を過去の報告も交えてご紹介させていただきます。

ポイント

正倍数性胚移植した報告もふくめて、PCOS女性では着床から妊娠継続に負の影響を与える子宮内膜機能不全リスクを秘めている可能性があります。

引用文献

Xiaofei Ge, et al. Reprod Biomed Online. 2023. doi: 10.1016/j.rbmo.2023.04.014

論文内容

2016年10月から2021年12月に、正倍数性単一胚盤胞移植を行った1,498名の患者をPCOS群(n=277)と非PCOS群(n=1221)に分け、生殖医療成績で比較したレトロスペクティブコホート研究です。

結果

正倍数性単一胚盤胞移植(vs.非PCOS群)の妊娠反応陽性率(68.95% vs. 64.86%, P = 0.196)、臨床妊娠率(59.93% vs. 57.33%, P = 0.429) は差を認めませんでした。初期流産は、非PCOS群と比較してPCOS群で増加しました(18.67% vs. 12.00%, P = 0.023)。女性年齢とBMIを調整後もPCOSは初期流産率を増加させました。

結論

臨床妊娠率に有意差はありませんでしたが、PCOSの状態は、単一正倍数性胚凍結融解胚盤胞移植後の早期自然流産のリスクを高め、内分泌疾患の影響を受けた子宮内膜機能不全の忘れられない役割を示唆していました。具体的なメカニズムや効果的な介入戦略を検討するために、更なる研究が必要です。

私見

PCOS女性の内膜はプロゲステロン抵抗性があり、脱落膜化異常が起こりやすいと報告されています。そのほか、サイトカイン、MMP、子宮内膜胚受容能にも影響があるのではないかとされています。(Savaris et al.,2011、Piltonen et al.,2015、Palomba et al.,2022) そのほか、高アンドロゲン血症、高インスリン血症、インスリン抵抗性などの全身状態も流産の原因になっている可能性もあります。

その1. レトロスペクティブコホート
PCOS女性(n=74)では、コントロール女性(n=100)と比較して、PCOS女性の方が多く回収卵はとれましたが、生検した胚あたりの異数性率(FISH)には差がありませんでした。女性年齢(38歳以下、38歳以上)では妊娠率、継続妊娠率に差がありませんでしたが、PCOSのなかでも21個以上回収卵子がある女性ではコントロール群と比べて、臨床妊娠率(69.0% vs. 42.9%)および継続妊娠率(65.5% vs. 40.5%)が低下していました。 この論文では平均年齢36歳前後、BMIは触れられていません。

Andrea Weghofer, et al. Fertil Steril. 2007 Oct;88(4):900-5. doi: 10.1016/j.fertnstert.2006.12.018.

その2. マッチドペア研究(1:3)
女性年齢(30歳前後)、BMI(21前後)、胚質をマッチドペアさせたPCOS女性(n=67)と、コントロール女性(n=201)で臨床妊娠率、流産率、出生率を比較検討しました。PCOSは臨床妊娠率が低く、初期流産が高く、出生率が低いことがわかりました。

Lu Luo, et al. Reprod Biomed Online. 2017 Nov;35(5):576-582. doi: 10.1016/j.rbmo.2017.07.010.

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

# 着床前遺伝学的検査(PGT)

# 凍結融解胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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