体外受精

2022.11.07

受精胚の形態で生まれてくる胎児の大きさが変わる?(Fertil Steril. 2022)

はじめに

患者様からの質問で、「胚質が悪いと生まれてくる胎児が赤ちゃんの大きさなどに影響がでますか?」と聞かれることがあります。「胚の形態評価は一パラメーターですので、着床・流産率に差がつく可能性がありますが、過去の報告から分割期胚・胚盤胞期胚共に胎児体重などに影響を与える可能性は少ないと思います。」とお伝えしています。今回、アメリカのSARTデータベースを用いたデータで同様の結果が報告されましたのでご紹介いたします。 

ポイント

新鮮胚移植で単胎出産となる場合、出生体重の減少やSGA児(週数と比べて小さい児)、LGA児(週数と比べて大きい児)のリスクの増加と関連しません。受精胚の形態評価は胎児の出生体重に大きな影響を与えないと考えられます。 

引用文献

Mengmeng Li, et al. Fertil Steril. 2022 Oct;118(4):715-723. doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.06.017.

論文内容

2008年から2013年のアメリカのSART CORSデータベースを用いたレトロスペクティブコホート研究です。自己卵子を用いた新鮮胚移植で生まれた単胎児を対象としています。評価項目は出生時体重、出生時体重のz-スコア、低出生体重児、SGA児、LGA児としました。

結果

5,869周期のうち、71.1%が形態的に良好な胚を移植し、27.0%と1.9%がそれぞれ普通および不良の胚を移植していました。良好胚から出産した単胎児と比較して、不良胚から出生した単胎児は出生時体重が重くなっていました(3,415.8g ± 562.0g vs 3,202.7g ± 639.9g)。低出生体重児、SGA児、LGA児の割合は、胚の品質グループ間で同じでした。多変量回帰により、良好胚と普通胚の周産期成績を比較したところ、出生時体重、出生時体重zスコア、低出生体重児、SGA児、LGA児にも関連がありませんでした。分割期胚移植と胚盤胞期胚移植を別々に検討しても同様の結果でした。 

私見

過去も同様に移植胚の質により出生体重が変わらないとされています。 
G. Oron, W.Y. , et al. Hum Reprod, 29 (2014), pp. 1444-1451  
Y. Sun, et al. Taiwan J Obstet Gynecol, 59 (2020), pp. 872-876  
K.L. Hu, et al. Hum Reprod Open, 2021 (2021), Article hoab036  
C. Bouillon, et al. Reprod Biomed Online, 35 (2017), pp. 197-207  
J. Zhu, Y., et al. J Assist Reprod Genet, 31 (2014), pp. 1635-1641  
J.B. Bakkensen, et al. J Assist Reprod Genet, 36 (2019), pp. 2315-2324  
M. Li, et al. Arch Gynecol Obstet, 302 (2020), pp. 1511-1521 

ただし、下記のような報告もありますので、胚をより良い環境で取り扱い、少しでもグレードが良い胚を準備することが必要なのかもしれません。 

培養液の違いにより出生体重が異なるという研究: 
J.C. Dumoulin, et al. Hum Reprod, 25 (2010), pp. 605-612  
C.G. Vergouw, et al. Hum Reprod, 27 (2012), pp. 2619-2626 

周産期合併症(上:妊娠糖尿病、下:妊娠高血圧腎症)が胚質により異なるという研究: 
T. Gasim. Oman Med J, 27 (2012), pp. 140-144  
A.K. Berhe, et al. BMC Pregnancy Childbirth, 20 (2019), p. 7 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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