体外受精

2021.05.06

クロミッド®内服により移植成績は低下する?

はじめに

私たちの成績では、採卵直後の周期での排卵周期下凍結融解胚移植の成績は低くなっています。さまざまな切り口の考え方があり、それぞれのクリニックが患者様に沿った凍結融解胚移植を選択していきます。クロミッド®内服後に凍結融解胚移植を実施する際、クロミッド®が子宮内膜胚受容能に影響を与えて移植成績が下がるという報告と下がらないという報告が共にありますのでご紹介いたします。

ポイント

クロミッド®単独での新鮮胚移植では成績が低下しますが、外因性ゴナドトロピン併用の有無や凍結融解胚移植までの期間により移植成績が異なる可能性が示唆されています。各クリニックが自施設の成績を踏まえた方針決定が重要です。

引用文献

Nakagawa K, et al. Reprod Med Biol. 2014. DOI: 10.1007/s12522-014-0195-z.
K Kato, et al. Hum Reprod Open. 2018. DOI: 10.1093/hropen/hoy006

論文内容

クロミッドが子宮内膜胚受容能に影響を与えて移植成績が下がるという論文

Nakagawa K, et al. Reprod Med Biol. 2014. DOI: 10.1007/s12522-014-0195-z.
2008年3月から2010年3月までに、クロミッド+rFSH療法で体外受精を実施し、子宮内膜が薄いために新鮮胚移植を実施できなかった女性378名(平均年齢35.2歳)を対象としました。体外受精周期で最後のクロミッド内服から胚移植の日までの期間に応じて妊娠率を評価しています。刺激法はクロミッド+rFSH療法で、排卵誘発にはuHCG 10,000単位もしくはGnRH点鼻を使用しています。移植周期はホルモン調整周期で実施しており、新鮮胚移植を中止する基準は移植日内膜を8mmとしています。

結果
最後のクロミッド内服から凍結融解胚移植の日までの期間が91日以上のグループの妊娠率は、90日以下のグループの妊娠率よりも有意に高くなりました(p <0.05)。この報告ではホルモン調整周期で準備した子宮内膜厚はクロミッド内服後の期間によって差はありませんでした。

クロミッドが子宮内膜胚受容能に影響を与えて移植成績が下がらないという論文

K Kato, et al. Hum Reprod Open. 2018. DOI: 10.1093/hropen/hoy006
2010年1月から2014年12月までに、157件の自然周期体外受精に単一胚盤胞移植を実施し、1,496件のクロミッド単独体外受精に単一胚盤胞移植(n=24)または単一胚盤胞凍結融解胚移植(n=1,472)を実施しました。単一胚盤胞凍結融解胚移植周期は、クロミッド投与の最終日から単一胚盤胞凍結融解胚移植の日までの期間によって2つのグループに分類(A:≦60日、B:≧61日)し、これらのグループで妊娠成績を比較しました。卵巣刺激はクロミッド単独刺激で、ブセレリン点鼻にて排卵誘発を行っています。凍結融解胚移植は自己の排卵周期で行っています。

結果
クロミッド-新鮮単一胚盤胞移植群(29.2%、7/24)の出生率は、自然採卵群(56.1%、88/157)(P=0.01)および単一胚盤胞凍結融解胚移植-A群(50.0%、572/1,143)(P=0.04)に比べて有意に低い結果となりましたが、単一胚盤胞凍結融解胚移植-B群(47.4%、156/329)とは差がつきませんでした。多変量ロジスティック回帰分析では、出生率は自然採卵群と単一胚盤胞凍結融解胚移植群は同程度でしたが、新鮮単一胚盤胞移植群では有意に低くなりました(調整オッズ比:0.324、95%CI:0.119-0.800、P=0.01)。

考察

2つ目の論文には1つ目の論文もDiscussionに引用されています。クロミッド単独の影響として内服後の成績が落ちるというよりは、外因性ゴナドトロピン(HMG、rFSH、hCG)などを併用しているため、複合的な要因に影響するのではないかとしています。
両方の論文をあわせてみると以下のようになります。

  • クロミッド単独で新鮮胚移植をすると成績が落ちる
  • クロミッド単独内服後の採卵後に凍結融解胚移植をすると成績は落ちない
  • クロミッド+外因性ゴナドトロピン併用では少しの間凍結融解胚移植をすると成績は落ちる

クリニックによって同じ薬を使っていても、少しずつの判断の違いで臨床結果に影響を及ぼすことがあります。私個人の考えとしては、こういう過去の報告を踏まえてクリニック独自の成績と照らし合わせて方針を決めていくことが大事だと考えています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# クロミフェン、AIなど

# 子宮内膜厚、形態

# 凍結融解胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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