体外受精

2023.04.20

卵巣予備能低下群におけるショート法/アンタゴニスト法の治療予後(レトロスペクティブ2023)

はじめに

卵巣予備能低下群の調節卵巣刺激はショート法がよい、というのが一般的に言われてきました。ただし、あくまでロング法と比べてというところがあり、アンタゴニスト法とどちらが優れているかは論文によって結果が異なっています。理由として、各研究の症例数が少ないこと、卵巣予備能低下の定義が異なることなどが一貫した結果とならない理由とされています。今回はアメリカのデータベースを用いて、体外受精初回周期、2回目周期にショート法とアンタゴニスト法どちらが向いているか調査した報告をご紹介します。

ポイント

体外受精初回周期、2回目周期に卵巣刺激に対して反応不良の女性は、ショート法とアンタゴニスト法では同様の結果を得られました。

引用文献

Fernanda Murillo, et al. Fertil Steril. 2023 Apr 10;S0015-0282(23)00292-3. doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.04.007.

論文内容

卵巣刺激低反応の患者では、ショート法とアンタゴニスト法どちらが向いているか、2014年~2019年のアメリカの体外受精データベースSART CORSを用いて回収卵子数、2PN数、胚盤胞数、累積出生率、周期中止率を比較検討したレトロスペクティブ研究です。

結果

傾向スコアマッチングの結果、AMH<0.5ng/mL(38歳 BMI 26.56 AMH 0.29)で、最初の体外受精周期で反応不良が予測された患者は、ショート法(累積出生率13.6%、95% CI [12.4%, 14.8%])とアンタゴニスト法(累積出生率14.2%、95% CI [13.6%, 14.8%])に差がありませんでした。初回採卵周期で回収卵子数が4個未満である患者に対して2回目の採卵を評価しました。アンタゴニスト法→アンタゴニスト法群(N=2,354)(平均累積出生率改善率13.9%、95%CI [12.1%, 15.6%])とアンタゴニスト法→ショート法群(N=952)(平均累積出生率改善率14.4%、95%CI [10.9%, 18.3%])は改善率に差を認めませんでした。ショート法→アンタゴニスト法群(N=445)(平均累積出生率改善度10.4%、95%CI [6.6%, 14.5%])とショート法→ショート法群(N=409)(平均累積出生率改善度9.0%、95%CI [5.1%, 13.4%])でも差を認めませんでした。

私見

卵巣刺激はクリニックにより優先的に行う方法が異なります。当院ではショート法よりアンタゴニスト法を優先順位高く選択する場合が多いです。
過去にも同様の切り口の治療効果を卵巣刺激で改善できないかという報告をとりあげてきています。ご参考になさってください。

卵巣刺激を変えると胚質は変わる?(Fertil Steril. 2021)

卵巣予備能低下患者への卵巣刺激増量は効果があるの?(OPTIMIST study: Part I)( Hum Reprod. 2017)

卵巣予備能が低い女性には卵巣刺激のFSH量は増量すべき?(Hum Reprod. 2022)

卵巣刺激反応不良の患者さまに対してクロミッド®を付加したHMGアンタゴニスト法を実施すると臨床結果が改善しますか。(不変派)( Hum Reprod. 2020)

卵巣刺激反応不良の患者さまに対してクロミッド®を付加したHMGアンタゴニスト法を実施すると臨床結果が改善しますか(肯定派)( Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2020) 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 総説、RCT、メタアナリシス

# ロング法、ショート法

# 体重、BMI

# 卵巣予備能、AMH

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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