体外受精

2023.04.07

胚移植パターンによる早期/後期発症妊娠高血圧腎症リスク(J Assist Reprod Genet. 2023)

はじめに

ホルモン調整周期凍結融解胚移植は排卵周期凍結融解胚移植と生殖医療成績が変わりませんが、通常の排卵と異なり黄体が存在しないことが問題で妊娠高血圧症候群リスクなどが増加するのでは?としています。黄体がない状況では、妊娠初期の母体心血管機能が変化することをConradらは報告していて、その二次的な結果が周産期合併症として現れてきていると考えられています。
妊娠高血圧症候群は早発型(低い心拍出量と高い血管抵抗)と後発型(高い心拍出量と低い血管抵抗)で特徴が違うとされていて、ホルモン調整周期はどちらのリスク因子になるかどうか調査した報告をご紹介いたします。

ポイント

ホルモン調整周期凍結融解胚移植妊娠では、新鮮胚移植妊娠や排卵周期凍結融解胚移植妊娠と比較し妊娠高血圧症候群リスク(特に後期発症妊娠高血圧症候群)が増加する可能性があります。

引用文献

Yue Niu, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Mar 31. doi: 10.1007/s10815-023-02785-0.

論文内容

2012年1月から2020年3月に体外受精初回周期で単胎児出産した女性24,129名を対象に早期/後期発症妊娠高血圧症候群リスクを調査したレトロスペクティブコホート研究です。排卵周期凍結融解胚移植妊娠、ホルモン調整周期凍結融解胚移植妊娠を新鮮胚移植妊娠と比較しました。

結果

多変量ロジスティック回帰の結果、ホルモン調整周期凍結融解胚移植妊娠群では新鮮胚移植妊娠群[2.2% vs. 0.9%、aOR:2.00、95% CI:1.45-2.76]および排卵周期凍結融解胚移植妊娠群[2.2% vs. 0.9%、aOR:2.17、95%CI:1.59-2.96]に対して妊娠高血圧症候群リスクが高くなりました。
分娩時週数を34週未満または34週以上で層別化すると、ホルモン調整周期凍結融解胚移植妊娠群では新鮮胚移植妊娠群[1.8% vs. 0.6%、aOR:2.56、95%CI:1.83-3.58]および排卵周期凍結融解胚移植妊娠群[1.8% vs.0.6%、aOR:2.63、95%CI:1.86-3.73]と比べて後期発症妊娠高血圧症候群リスクが高くなりました。早期発症妊娠高血圧症候群リスクは3群で差がありませんでした。

私見

排卵周期とホルモン調整周期の凍結融解胚移植予後(AJOG Glob Rep. 2022)」と同様の結論となっていますね。今回の報告は30歳前後と若年の結果ですが、妊娠高血圧腎症リスクが上昇しているのが衝撃的でした。当研究では、周期凍結融解胚移植はジドロゲステロンのみ、ホルモン補充周期凍結融解胚移植は腟プロゲステロンゲル+ジドロゲステロンでの黄体補充となっています。患者様の不妊病態にあわせて治療選択を行なっていく必要がありそうです。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 妊娠高血圧症候群

# 排卵周期下胚移植

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# 凍結融解胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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