
はじめに
hCGトリガー日の血清LH値(hLH)とIVF-ETの妊娠予後との関連については議論が分かれています。今回、多施設ランダム化比較試験(RCT)のデータを用いた二次解析により、hLH値が卵巣反応、胚質、および累積妊娠予後に与える影響を包括的に評価した研究をご紹介します。
ポイント
血清hLH値は累積出生率と非線形の逆U字型関連を示し、最適閾値は約1.95 IU/Lです。hLH値の個別化調整は、特にGnRHアンタゴニスト法において妊娠予後を改善する可能性があります。
引用文献
Ling Guo, et al. J Assist Reprod Genet. 2025. doi: 10.1007/s10815-025-03773-2.
論文内容
ARTサイクルを受ける女性におけるhCGトリガー日の血清LH値が累積出生に与える影響を調査することを目的とした、多施設ランダム化比較試験(NCT03118141)の二次解析です。出生予後が良好と予測される初回IVFサイクルを受ける不妊女性1,212名を対象としました。
卵巣刺激プロトコールはGnRHアゴニスト法(ロング法またはショート法)またはGnRHアンタゴニスト法を使用し、外因性LH補充は日常的には行われませんでした。最終卵胞成熟はhCG単独またはGnRHアゴニストとの併用でトリガーしました。すべての採卵卵子はICSIで受精させ、胚盤胞まで培養後、全胚凍結を行いました。参加者は1:1の割合でPGT-A群と通常IVF群にランダム化され、その後単一凍結融解胚移植(FET)を実施しました。
参加者はhCGトリガー日の血清LH値の三分位に基づいて3群に層別化されました:低hLH群(<1.28 IU/L、n=298)、中等度hLH群(1.28-3.26 IU/L、n=615)、高hLH群(>3.26 IU/L、n=299)。ロジスティック回帰および制限3次スプラインモデルを用いて関連を評価し、母体年齢、BMI、基礎ホルモン値で調整しました。
結果
累積妊娠予後において、中等度hLH群と比較して、低hLH群は累積臨床妊娠率(83.56% vs 90.24%、P=0.033)および累積出生率(74.83% vs 83.25%、P=0.003)が有意に低く、生化学的妊娠流産率が高い結果でした(10.45% vs 4.95%、P=0.004)。高hLH群は累積出生率が低下しましたが(76.59% vs 83.25%、P=0.016)、その他の妊娠予後は中等度hLH群と同等でした。多変量解析でも、低hLH群は生化学的妊娠喪失が有意に高く(調整OR、2.339;95%CI、1.140-4.799;P=0.021)、高hLH群は累積出生率が有意に低い(調整OR、1.537;95%CI、1.061-2.226;P=0.023)結果が持続しました。
卵巣反応について、低hLH群は中等度hLH群と比較して、トリガー日のエストラジオール値が有意に低く(4792.53 vs 5762.50 pg/ml、P<0.001)、採卵数(20.00 vs 18.00個、P<0.001)、MII卵子数(18.00 vs 17.00個、P<0.001)、2PN卵子数(14.00 vs 13.00個、P<0.001)、高品質胚数が有意に多い結果でした。低hLH群ではゴナドトロピン開始量・総投与量が多く、刺激期間が長い傾向にありました。高hLH群では、トリガー日のプロゲステロン値が有意に高く(0.97 vs 0.77 ng/ml、P<0.001)、≥18mmの卵胞数が少なく(6.00 vs 7.00個、P<0.001)、子宮内膜厚が薄い結果でした(10.32 vs 10.74 mm、P=0.007)。また、高hLH群ではGnRHアンタゴニスト法の割合が高い傾向にありました。
PGT-A群においては、正倍数性、モノソミー、トリソミー、サブセグメント異数性、モザイク性の率に3群間で有意差は認められませんでした。
制限3次スプライン解析により、血清hLH値と累積出生率との間に有意な非線形の逆U字型関連が明らかになり(P<0.0001)、最適閾値は約1.95 IU/Lでした。GnRHアンタゴニスト法の層別解析では、低hLH群で生化学的妊娠流産率の上昇(12.26% vs 4.17%、P=0.016)と累積出生率の低下(71.90% vs 82.46%、P=0.027)が有意でしたが、GnRHアゴニスト法では差が認められませんでした。
私見
なかなか解釈が難しい結果ですが、LHが低すぎず、高すぎずが良いという結果になっています。
低LH状態について、卵子の細胞質成熟や顆粒膜細胞機能に悪影響を及ぼす可能性が示唆されます。高LH状態については、卵巣刺激中のステロイド生成異常や早期黄体化が胚の質に影響を与えた可能性が考えられます。
GnRHアンタゴニスト法における影響がより顕著であったことから、今後、ホルモン値を意識した薬剤選択が重要になってくるのかもしれません。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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