体外受精

2024.04.26

ジクロフェナクによる排卵遅延(Reprod Biomed Online 2012)

はじめに

NSAIDsを排卵抑制目的に採卵時に使用することは一般的になってきています。排卵抑制に国内でジクロフェナクを用いられるようになったきっかけの報告をご紹介いたします。

ポイント

自然周期採卵でLHサージが出ている症例でもジクロフェナク坐剤を用いると排卵後率を減らせそうです。

引用文献

Satoshi Kawachiya, et al. Reprod Biomed Online. 2012 Mar;24(3):308-13. doi: 10.1016/j.rbmo.2011.12.002.

論文内容

自然周期採卵における非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の排卵抑制効果を評価するために行われたレトロスペクティブコホート研究です。2009年から2010年に実施された1865周期の採卵を対象としました。トリガー日にLHサージが検出された排卵リスクの高い周期において、低用量NSAIDs(採卵の8時間前、14時間前にジクロフェナク坐剤)を非ランダムに投与しました。評価項目は、排卵後率、予定周期あたりの胚移植実施率、胚移植あたりの臨床妊娠率および出生率としました。

結果

NSAIDs使用により、排卵後リスクの有意な低下(3.6% vs. 6.8%、aOR 0.24、95%CI 0.15-0.39、P < 0.0001)と、予定周期あたりの胚移植実施率の上昇(46.8%対39.5%、aOR 1.38、95%CI 1.06-1.61、P = 0.012)が認められました。胚移植あたりの臨床妊娠率(39.1% vs. 35.9%)および出生率(31.3% vs. 31.4%)は同等でした。

私見

この報告は自然周期採卵の採卵アルゴリズムを合わせてNSAIDsの排卵抑制効果をみている、非常に臨床現場に活用できる内容となっています。 

トリガー時のLH・P4値 トリガー時間 NSAIDS 採卵日 
LH <10 IU/ml
P4 <1.0 ng/ml 
夜 なし トリガー2日後(34時間) 
LH 10–30 IU/ml
P4 <1.0 ng/ml 
すぐ  6 時間毎 トリガー翌日午後か2日後 
LH 30–110 IU/ml
P4 <1.0 ng/ml 
すぐ 適宜 トリガー翌日午前 
LH 110–10 IU/ml,
P4 >1.0 ng/ml 
なし なし 検査実施日 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 影響する薬剤など

# 採卵

# 排卵誘発、トリガー

# 卵巣刺激

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

採卵周期のゴナドトロピン種類とFET累積出生率(J Assist Reprod Genet. 2026)

2026.08.28

体重・BMI・体脂肪率はfollitropin alfa固定投与時の血清FSH動態・採卵成績との関連(日本受精着床学会雑誌 2025)

2026.08.27

ART周期におけるフォリトロピンデルタ・アルファ・hMGの有効性比較(Reprod Med Biol. 2026)

2026.08.24

高齢不妊女性のIVFにおけるGnRHアンタゴニスト法とPPOS法の比較(Front Endocrinol. 2026)

2026.08.04

PPOS vs. GnRHアンタゴニスト法 臨床アウトカムと単一細胞解析からの検証(Reprod Biomed Online. 2025)

2026.08.03

体外受精の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

2026.01.23

SEET法は凍結融解胚移植の成績を悪化させる可能性あり?(Sci Rep. 2025)

2026.03.30

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

2022.06.24

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

ART不成功におけるタクロリムス治療(J Reprod Immunol. 2026)

2026.02.27

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

腟潤滑ゼリーは妊娠率に影響する?

2022.01.24

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

2026.01.23

妊娠できるカップルはほぼ6ヶ月以内に妊娠する。(論文紹介)

2021.11.11