体外受精

2024.02.16

排卵周期のLHサージとプロゲステロンは同期する?(Reprod Biol Endocrinol. 2023)

はじめに

排卵周期凍結融解胚盤胞移植は排卵をしてから5日目に行うことが一般的です。では排卵をどのような基準として0日としたらいいのでしょうか。基本はプロゲステロン値が一般指標だと考えられています。その二次的なサポートモニターとして尿中LH、血清LH、エストラジオール値、超音波モニタリングがあるというイメージです。
排卵周期凍結融解胚移植を行う際の卵胞発育超音波モニタリングと連続ホルモン採血の結果から、LH上昇とプロゲステロン上昇のズレが一定かどうか調査した報告をご紹介いたします。 

ポイント

LH上昇だけではプロゲステロン上昇の詳細な時期がわからなさそうです。ただし、着床の窓は一定期間あるため、これらの違いが生殖医療成績に影響を与えているかどうかは不明です。 

引用文献

Carol Coughlan, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2023 May 18;21(1):47. doi: 10.1186/s12958-023-01096-4. 

論文内容

自然周期で凍結胚移植のために超音波検査と内分泌モニタリングを受けた女性102名を含む後ろ向きコホート研究です。血清プロゲステロン値が1ng/mlを超えたと定義された排卵日まで、血清LH、エストラジオール、プロゲステロン(P4)値を連続3日間測定しました。 

結果

  • プロゲステロン上昇2日前にLH上昇した症例21名(20.6%) 
  • プロゲステロン上昇1日前にLH上昇した症例71名(69.6%) 
  • プロゲステロン上昇当日にLH上昇した症例10名(9.8%) 

P4上昇2日前にLH上昇した女性は、P4上昇同日LH上昇した女性に比べて、BMIが高く、血清AMH値が低い結果でした。 

症例基準

  • 2017年1月1日から2021年8月31日
  • 年齢18歳~43歳
  • 月経周期26日~34日 整
  • BMI 18~35 

自然周期のモニタリング

  • Dominant follicle 14mm以上が確認された時点から、血清LH、FSH、エストラジオールおよびプロゲステロン値の連続測定を開始
  • LHサージは、直近値より180%上昇し、上昇を続けた時点を開始と定義
  • プロゲステロン濃度1.0ng/ml以上を排卵(P+0)
  • 血液検体はすべて午前9時から12時に採取

私見

彼らのグループは卵巣刺激に関しても採血時間、注射を打つ時間などを統一している施設ですので、血清ホルモン評価の信頼性は高いです。
あとは何がLHサージの決め手かですね。考察にも記載されていますが、ベースラインLH値から1.8倍から6倍までの様々な値が使用されていますし、LHサージの絶対値も10-20mIU/mlまでさまざまです。この論文をみれば過去のリファレンスはしっかりチェックすることが可能です。
2023年にLancetに排卵周期凍結融解胚移植の在宅モニターの可能性(Lancet. 2023)
が報告されていますが、やはり、詳細に客観指標で治療方針を詰めていく場合には血清プロゲステロン値がLH値より有効だと判断しています。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# プロゲステロン/プロゲスチン

# 排卵周期下胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

採卵時と凍結融解胚移植時の季節による生殖予後(Hum Reprod. 2023)

2026.02.09

凍結融解胚移植における季節的変動の影響(Sci Rep. 2019)

2026.01.26

凍結胚盤胞のワンステップ急速融解法の生殖医療成績(Fertil Steril. 2025)

2026.01.21

内因性LH上昇後hCG投与は凍結融解正倍数性胚盤胞移植の妊娠率を低下させる(J Assist Reprod Genet. 2018)

2026.01.20

修正自然周期凍結融解胚移植の出生率への影響(Fertil Steril. 2025)

2026.01.19

体外受精の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

自然周期採卵における採卵時適正卵胞サイズ(Frontiers in Endocrinology. 2022)

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

高齢女性における二個胚移植の臨床結果(当院関連報告)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

PCOS女性の妊娠前・初期メトホルミンが妊娠転帰に与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2025.12.22