治療予後・その他

2022.10.14

PCOS女性は周産期リスクが上昇する(Hum Reprod. 2022)

はじめに

PCOSは生殖年齢女性の約6〜15%が診断を受ける、比較的多い内分泌疾患です。 メタアナリシスやシステマティックレビューでは、PCOS女性は周産期合併症のリスクが高まることが報告されています。しかし、交絡因子が調整されていなかったり、症例数が少なかったりすることでエビデンスの質が高いわけではありません。今回マサチューセッツ州のデータベースを用いて、周産期合併症がPCOS診断の有無でリスク変化するかどうかを検討した報告をご紹介いたします。

ポイント

PCOS女性は、妊娠糖尿病・妊娠高血圧症候群・帝王切開のリスクが高くなりました。PCOS女性から出産された新生児は、低出生体重児・SGA児・早産・新生児入院期間の延長・生後1年以内の感染症および呼吸器疾患のリスクが高くなりました。

引用文献

Leslie V Farland, et al. Hum Reprod. 2022 Sep 23;deac210. doi: 10.1093/humrep/deac210.

論文内容

2013〜2017年のマサチューセッツ州における18歳以上の女性の分娩を、病院退院・観察入院・救急部受診にリンクしたレコード、生殖医療記録(SART CORS)、請求データベース(APCD)にリンクさせました。 母親年齢、BMI、人種/民族、教育、出生年、高血圧、糖尿病について事前調整をおこないました。妊娠前BMI(25もしくは30カットオフ)、および不妊治療の有無をカテゴリー化しリスクを検討しました。

結果

91,825分娩のうち、3.9%がPCOSと診断されていました。PCOS女性は非PCOS女性と比較して、妊娠糖尿病のリスクが51%高く(CI:1.38-1.65)、妊娠高血圧症候群のリスクが25%高い(CI:1.15-1.35)ことがわかりました。PCOS女性からの出生児は、非PCOS女性からの出生児と比較して、早産になりやすく(RR: 1.17, CI: 1.06-1.29)、入院が長引く傾向がありました(RR:1.23, CI: 1.09-1.40)。妊娠前BMIが30未満の女性でPCOS女性は非PCOS女性より発症リスクが上昇しました。

私見

過去にもアメリカのデータベースでPCOS女性の周産期予後を報告した内容をご紹介させいただきました。(PCOS患者の周産期予後(アメリカ910万妊婦のビックデータ解析)(Hum Reprod. 2020)

様々な報告がありますので、今後も注視していきたいと思います。

Kjerulff LE, et al. Am J Obstet Gynecol 2011;204:558.e1–6.
Qin JZ, et al. Reprod Biol Endocrinol 2013;11:56.
Palomba S, et al. Hum Reprod Update 2015;21:575–592.
Yu H-F, et al. Medicine (Baltimore) 2016;95:e4863.
Gilbert EW, et al. Clin Endocrinol (Oxf) 2018;89:683–699.
Bahri Khomami M, et al. Obes Rev 2019;20:659–674.
Sha T, et al. Reprod Biomed Online 2019;39:281–293.

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

# 妊娠糖尿病

# 妊娠高血圧症候群

# 周産期合併症

# 疫学研究・データベース

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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