プレコンセプションケア

2023.04.26

葉酸と神経管閉鎖障害( Congenit Anom (Kyoto))

はじめに

日本の環境省が実施するエコチル調査(全国規模の出生コホート研究であるJapan Environment and Children’s Study(JECS))による葉酸と神経管閉鎖障害の関係をご紹介します。

ポイント

エコチル調査に登録した92,269名のうち、74名が神経管閉鎖障害(NTDs)を認めました。葉酸サプリメント妊娠前摂取がエコチル調査では神経管閉鎖障害と関連を認めませんでした。差が生まれなかったのは発症率が低い疾患のため、統計的手法として症例数の不足などが考えられます。引き続き、妊娠前の葉酸サプリメントの摂取は推奨されます。

引用文献

  • Hidekazu Nishigori, et al. Congenit Anom (Kyoto). 2019 Jul;59(4):110-117. doi: 10.1111/cga.12293.
  • Comment Yuto Maeda, et al.Congenit Anom (Kyoto). 2020 May;60(3):100. doi: 10.1111/cga.12369.

論文内容

エコチル調査(全国規模の出生コホート研究であるJapan Environment and Children’s Study(JECS))を用いて、妊娠前の母親の葉酸補給とNTDs児との関係を評価しました。単胎妊娠92,269名のうち、74名にNTDs(二分脊椎32名、無脳症24名、脳瘤19名)認めました。7,634人(8.27%)が妊娠前の葉酸サプリメントを利用し、そのうち621人(0.67%)が480μg/日以上の食事性葉酸も摂取していました。多変量ロジスティック回帰分析により、妊娠前の葉酸サプリメント摂取とNTDs児発症との関連は認められませんでした(OR 0.622、95%CI:0.226-1.713)。妊娠前の葉酸サプリメント摂取と480μg/日以上の食事性葉酸摂取を組み合わせた参加者は、NTDs児発症は認めませんでした。

コメント

以前のメタアナリシスでは、葉酸サプリメントはプラセボ群と比較して、毎日の葉酸補給でNTD児発生率が69%減少することが実証されています。今回の研究でも、妊娠前に葉酸サプリメントを摂取の有無でのNTDs児リスクは、出生1万人あたりそれぞれ5.24および8.27で、世界で報告されている過去のデータとほぼ同等でしたが統計的な問題で差がないとされています。こちらは、統計的な検出力の問題で症例数が77万件あって有意差がつく事例なので、今回の検討では妊娠前のプレコンセプションユースに意味がないという解釈にならないよう慎重に解釈されるべきと考えられます。 

  全体 92,269名 割合 
葉酸サプリメント プレコンセプション摂取 7,634名 8.27% 
妊娠後摂取 28,565名 30.96% 
摂取なし 56,070名 60.77% 
葉酸食事摂取 中央値 (四分位) 247.0(178.0-339.0) 
x<240ug 43,510 47.16% 
240ug<x<480ug 40,616 44.02% 
480ug<x<1000ug 7,064 7.66% 
1000ug<x 526 0.57% 
Table.1より改変(不妊治療患者は6.6%) 

私見

葉酸のサプリメントでの摂取は、どのような食事をとっていても1-3ヶ月前から服用するのがベターだと思います。ただし、国内のデータを見ていくと、偶発的な葉酸摂取前の妊娠だからといって過度なNTD発生率の不安感に襲われる必要はないのかな?と感じています。葉酸をとっていなければ、着床がわかったらすぐに摂取していただくことをお勧めいたします。

エコチル調査結果は下記コラムでも取り上げていますので参考になさってください。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 総説、RCT、メタアナリシス

# サプリメント

# 葉酸

# 予防介入

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

妊娠中の両親の喫煙曝露と子どもの将来の不妊症リスク(Hum Reprod. 2026)

2026.04.07

米国における不妊症治療へのアクセスと出生率の実態(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.03.24

妊娠中のベンゾジアゼピン使用と妊娠転帰リスク(JAMA Intern Med. 2025)

2026.01.30

プレコンセプションケアの人気記事

妊娠中のベンゾジアゼピン使用と妊娠転帰リスク(JAMA Intern Med. 2025)

2026.01.30

2026.09.08

肥満・不妊女性への生活習慣介入の効果(J Clin Endocrinol Metab. 2026)

2026.09.08

精液所見に最適な運動量は? (Fertil Steril., 2025)

2025.12.06

お酒をやめても精子への影響は1ヶ月以上続く?

2024.02.24

大豆摂取と腹腔鏡で確認された子宮内膜症リスクとの関連(Fertil Steril. 2025)

2025.12.24

PCOS女性の妊娠前・初期メトホルミンが妊娠転帰に与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2025.12.22

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

2024年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2026.09.10

卵子の大きさ

2025.03.08

妊娠できるカップルはほぼ6ヶ月以内に妊娠する。(論文紹介)

2021.11.11