治療予後・その他

2022.04.20

体外受精妊娠における精神発達の評価(Reproductive Medicine and Biology. 2022)

はじめに

日本の環境省が実施するエコチル調査(全国規模の出生コホート研究であるJapan Environment and Children’s Study(JECS))の結果を用いて様々な体外受精関連の論文が報告されてきています。同データベースから体外受精で妊娠した女性は自然妊娠した女性よりも前置胎盤、癒着胎盤、妊娠高血圧症候群、輸血、集中治療室(ICU)入院、早産のリスクが高かったと報告しており、以前ご紹介いたしました。(体外受精が周産期予後に及ぼす影響について(BMC Pregnancy Childbirth. 2019)
今回は体外受精の精神発達を評価した報告をご紹介いたします。 

ポイント

体外受精で妊娠した子どもの精神発達遅滞は、主に親の年齢や多胎妊娠などの因子と関連しており、受精方法や凍結融解胚移植などの手技そのものは影響していませんでした。 

引用文献

Takao Miyake, et al. Reproductive Medicine and Biology. 2022. DOI:10.1002/rmb2.12457 

論文内容

77,928人の子ども(うち、IVF 4,071名、ICSI 1,542名)とその母親のデータを後方視的に分析しました。子どもの3歳時点での精神発達遅滞は、Ages and Stages Questionnaires, 3rd edition日本語版を用いて評価しました。 結果 粗モデルでは、1-4領域の精神発達遅滞のオッズ比は、体外受精、顕微授精、非ART(排卵誘発または子宮内人工授精)により妊娠した子どもの方が自然妊娠の子どもより高くなりましたが、親の背景因子と子どもの性別で調整した結果、精神発達遅滞リスクに差がありませんでした。体外受精で妊娠した単胎児女児では、自然妊娠女児と比較して、1つの領域で精神発達遅滞の高いオッズ比が観察されました。精神発達遅滞のほとんどの症例は、体外受精妊娠とは関係なく、多胎妊娠や親の年齢など不妊に関連する因子と関連している可能性があります。 

私見

体外受精妊娠後に出産に至った子どもにおいて、特定の領域で精神発達遅滞リスクが高まる結果となりましたが、両親の年齢と多胎が主要なリスク因子であることがわかりました。受精方法や凍結融解胚移植などの体外受精手技は、子どもの精神発達に影響を示さなかったことは何よりも患者様に治療を行う上での安心材料になりますね。

<関連コラム>

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 中長期予後

# 出生児予後

# 疫学研究・データベース

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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