プレコンセプションケア

2026.09.30

オメガ3脂肪酸サプリメントと妊活における妊娠しやすさ(Hum Reprod. 2022)

はじめに

オメガ3脂肪酸は食事から摂取する必要のある多価不飽和脂肪酸であり、ステロイドホルモンの前駆体であるコレステロールの供給源で、動物実験では卵胞発育・排卵・卵管運動・着床などに関与する可能性が示されています。自然妊娠における食事性摂取の研究は結果が一致せず、サプリメント摂取と妊孕能を検討した研究はこれまでありませんでした。今回、不妊歴のない女性を対象にオメガ3サプリメント摂取と妊娠確率の関連を検討した報告をご紹介いたします。

ポイント

オメガ3脂肪酸サプリメントの摂取は、自然妊娠を試みる女性の一周期あたりの妊娠確率を高める可能性があり、安価で実行可能な修正可能因子となりうるようです。

引用文献

J. Stanhiser, et al. Hum Reprod. 2022 May;37(5):1037-1046. doi: 10.1093/humrep/deac027.

論文内容

自己申告によるオメガ3脂肪酸サプリメントの使用が、ある月経周期における自然妊娠の確率(fecundability)と関連するかを検討することを目的としています。2008年から2015年12月に実施された前向きの妊娠までの時間(time-to-pregnancy)コホート研究であるTime to Conceive(TTC)の二次データ解析です。妊娠を試み始めて3か月未満で不妊歴のない30〜44歳の女性を対象とし、標準化された妊娠検査で追跡しました。女性は毎日、月経周期の出来事とサプリメント・薬剤の摂取をCerner Multum Drug Databaseで記録し、オメガ3を含む製剤を同定しました。曝露は摂取量ではなく、各周期において日記記録日のうちオメガ3を摂取した日数の割合として算出し、AICに基づき20%以上を「オメガ3使用周期」と定義しています。したがって、銘柄・含有量・1日あたりの摂取量は把握されておらず、用量反応関係は評価できません。離散時間Cox比例ハザードモデルで妊娠確率比(fecundability ratio:FR)を算出し、最終的に900人(2510周期)が解析されました。

結果

1,036人4,758周期のうち、日記記録のない周期や除外基準該当を除いた900人2,510周期が解析対象となりました。88%の周期で20日以上の日次記録があり、1周期あたり平均27日記録されていました。平均年齢は33.8±3.1歳、平均BMIは24.7±5.4で、多くが白人・既婚・規則的月経で、約半数に妊娠歴がありました。
曝露の中身として、オメガ3使用周期の82.7%では、その周期の50%以上の日数でオメガ3が摂取されており、使用者では「半数以上の日に摂取」する周期が8割を超えていました。摂取頻度は初回周期12%・最終周期11%(P=0.5689)と安定し、使用者113人中111人(98.23%)が妊婦用ビタミン剤またはマルチビタミンを併用していました。
妊娠率は、オメガ3摂取者で96/113人(84.96%)、非摂取者で409/787人(51.97%)と有意差を認めました(P<0.001)。一周期あたりの妊娠確率は、未調整でFR 2.20(95%CI 1.68, 2.88)、年齢・肥満・人種・ビタミンD調整後にFR 2.04(95%CI 1.53, 2.71)、さらに妊娠歴を加えてFR 2.12(95%CI 1.59, 2.82)でした。一方、妊婦用ビタミン剤・マルチビタミン使用を加えるとFRは約30%低下し、年齢・肥満・人種・ビタミンD・両ビタミン調整後にFR 1.45(95%CI 1.07, 1.93)、妊娠歴を加えてFR 1.51(95%CI 1.12, 2.04)となりました。
妊婦用ビタミン剤またはマルチビタミン使用者に限定した感度分析(N=486)では、未調整FR 1.34(95%CI 0.97, 1.85)、年齢・肥満・人種・ビタミンD調整後FR 1.30(95%CI 0.93, 1.81)、妊娠歴を加えてFR 1.32(95%CI 0.94, 1.84)と、有意差を認めませんでした。交差分類解析では、オメガ3もビタミン剤も非摂取の群と比較して、ビタミン剤のみ摂取群でFR 3.67(95%CI 2.92, 4.62)、オメガ3とビタミン剤を併用した群でFR 4.35(95%CI 3.18, 5.94)でした。
副次的解析として、血清濃度との相関ではALAは相関を認めず(r=−0.094, P=0.186)、EPA(r=0.280, P=0.001)・DHA(r=0.2401, P=0.007)は弱い相関にとどまり、それぞれ分散の7.85%・5.76%しか説明しませんでした。平均血清濃度はALAで有意差なし(0.035 vs 0.049, P=0.121)、EPA(0.00744 vs 0.00439, P=0.0001)・DHA(0.032 vs 0.023, P=0.008)は摂取者で有意に高値でした。

私見

報告者らは血清濃度では関連を認めない一方でサプリメント摂取では妊娠確率上昇を認めた点について、血清が単一時点の測定であること、EPA・DHAの吸収が脂肪を含む食事との同時摂取に依存すること、長期摂取の指標としては脂肪組織分布の方が安定していることなどを理由として挙げています。また妊婦用ビタミン剤・マルチビタミン摂取者に限定した感度分析ではFRが1.3に低下しており、併用ビタミンによる交絡や残存交絡の可能性も論じられています。プレコンセプションケアの観点からは、過度な期待は禁物ですが、安全性と簡便さを踏まえれば、生活習慣改善の選択肢の一つとして提示しても良いのかなと思っています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# サプリメント

# 生活習慣

# プレコンセプション

# 疫学研究・データベース

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

妊娠中の油の選び方と産後メンタルヘルス(Nutrients. 2023)

2026.10.06

オメガ3脂肪酸(サプリメント・食事)と女性の妊娠・受精率(Heliyon. 2024)

2026.10.02

千葉県「早期不妊検査費助成事業」が2026年10月1日から始まりました―夫婦ふたりで不妊検査を受けると、1組につき上限3万円まで助成―

2026.10.01

プレコンセプションケアの人気記事

千葉県「早期不妊検査費助成事業」が2026年10月1日から始まりました―夫婦ふたりで不妊検査を受けると、1組につき上限3万円まで助成―

2026.10.01

オメガ3脂肪酸(サプリメント・食事)と女性の妊娠・受精率(Heliyon. 2024)

2026.10.02

オメガ3脂肪酸サプリメントと妊活における妊娠しやすさ(Hum Reprod. 2022)

2026.09.30

妊娠中の油の選び方と産後メンタルヘルス(Nutrients. 2023)

2026.10.06

大豆摂取と腹腔鏡で確認された子宮内膜症リスクとの関連(Fertil Steril. 2025)

2025.12.24

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2024年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2026.09.10

千葉県「早期不妊検査費助成事業」が2026年10月1日から始まりました―夫婦ふたりで不妊検査を受けると、1組につき上限3万円まで助成―

2026.10.01

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

卵子の大きさ

2025.03.08