体外受精

2022.03.07

胚盤胞の形態・動態予測モデル(KIDScore™)の妊娠予測は有用?(論文紹介)

はじめに

KIDScore™ Day 5 model, version 3 は、胚移植後の胎児心拍予測のための一般的な形態・動態予測モデル(Vitrolife, Sweden)で、様々なクリニックでの大規模臨床データに基づいて開発されたものです。単一胚盤胞凍結融解胚移植周期の母体年齢層におけるKIDScore™ Day 5 modelの妊娠・出産予測能力を解析することを目的としています。 

ポイント

KIDScore™は高齢女性で妊娠・出産予測能力が高く、43歳以上のAUCは0.768と他年齢層より有意に高い結果となりました。胚盤胞形成時期など動態パラメーターが卵子の質を反映するため、高齢女性での予測精度が向上すると考えられます。 

引用文献

Keiichi Kato, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2021. DOI: 10.1186/s12958-021-00767-4 

論文内容

2018年9月から2020年4月までに2486の初回単一胚盤胞凍結融解胚移植周期をレトロスペクティブに分析しました。胎児心拍陽性と出生率は、母体年齢基準(35歳未満、35~37歳、38~40歳、41~42歳、43歳以上)で層別化しました。各年齢群で予測モデル性能をAUCにて算出しました。 

結果

すべての年齢群において、胎児心拍陽性率はKIDScoreの低下とともに低下しました(P < 0.05)。逆に、母体年齢が上がるにつれてAUCは増加しました。35歳未満のAUC(0.589)は41-42歳(0.673)および43歳以上(0.737)のAUCよりそれぞれ有意に低くなりました(P<0.05)。すべての年齢層で、出生率はKIDScoreの低下とともに低下しました(P < 0.05)。逆に、AUCは母体年齢が高くなるにつれて増加しました。43歳以上のAUC(0.768)は他の年齢層のAUCより有意に高くなりました(P < 0.05; 35歳未満=0.596、35~37歳=0.640、38~40歳=0.646、41~42歳=0.679)。 

35歳未満35–37歳38–40歳41–42歳43歳以上全体
tPNf (時間) 22.8 ± 0.17 22.8 ± 0.16 22.7 ± 0.12 22.7 ± 0.13 22.5 ± 0.12 22.7 ± 0.06 
t2 (時間) 25.4 ± 0.18 25.4 ± 0.16 25.2 ± 0.13 25.2 ± 0.13 25.1 ± 0.12 25.2 ± 0.06 
t3 (時間) 35.4 ± 0.24 35.7 ± 0.22 35.4 ± 0.18 35.6 ± 0.19 35.4 ± 0.16 35.5 ± 0.09 
t4 (時間) 37.0 ± 0.27 37.2 ± 0.23 37.0 ± 0.19 36.9 ± 0.21 37.0 ± 0.18 37.0 ± 0.09 
t5 (時間) 48.2 ± 0.42 48.3 ± 0.36 48.3 ± 0.29 48.3 ± 0.32 48.4 ± 0.27 48.3 ± 0.14 
tB  (時間) 104.7 ± 0.61 105.6 ± 0.52 106.2 ± 0.42 106.9 ± 0.47 108.9 ± 0.40 106.8 ± 0.21 
凍結時期 
Day 5(%) 76.7 73.3 71.8 70 60.1 69 
Day 6(%) 22.6 25.2 27.1 28.4 37.8 29.5 
Day 7(%) 0.7 1.5 1.1 1.6 2.1 1.5 
ICM グレード 
A(%) 58.9 53.3 53.5 50.6 40.3 49.8 
B(%) 24.3 25.4 25.9 28.6 26.7 26.4 
C(%) 16.8 21.2 20.6 20.8 33.3 23.8 
TE グレード 
A(%) 55.8 46.2 44.2 39.2 28.3 40.5 
B(%) 20.9 24.2 26.3 25.7 22.7 24.2 
C(%) 23.3 29.6 29.5 35.1 49 35.3 
KIDScore 
平均 6.68 ± 2.33  6.35 ± 2.47 6.23 ± 2.40 6.02 ± 2.39 5.28 ± 2.33 6.0 ± 2.4 
最大 9.8 9.8 9.8 9.8 9.8 9.8 
75% 8.6 8.6 8.4 8.1 7.3 8.2 
中央 7.4 6.9 6.7 6.4 5.1 6.3 
25% 2.9 2.6 2.6 2.6 2.4 3.7 
最低 1.7 1.4 1.4 1.5 1.3 1.3 

私見

KIDScoreは高齢女性のほうが明らかに妊娠・出産予測に顕著ですね。確かに不妊原因が卵子の質が主なわけですから、そこから出てくるパラメーター結果に強く依存するのは当然といえば当然ですね。タイムラプス培養では胚の分割速度やパターンを正確に評価することができます。前核の消失時期(tPNf)、2細胞分割時期(t2)、4細胞分割時期(t4)、胚盤胞形成時期(tB)などが妊娠指標となることが報告されていますし、ヒト胚分割パターンの特徴であるdirect cleavage (Rubio I, et al. Fertil Steril. 2012)、reverse cleavage (Desai N, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2014)、割球movement( Ezoe K, et al. Reprod BioMed Online. 2019. Ohata K, et al. Reprod Biol Endocrinol. 2019)、胚盤胞崩壊(Marcos J, et al. Hum Reprod. 2015. Bodri D, et al. Fertil Steril. 2016) なども最近では注目されています。 

t8以前の分割時間は女性年齢が妊娠率に影響するかどうかは結論がでていません。tBは妊娠に関係あるだろうなと私も思っていますが、施設間によりどこをtB時間ととるかは異なっている印象です。これによりKIDScoreは若干変動しますので、他院のデータをみるときには、少し注意が必要そうですね。この論文ではtB 106時間前後、Sandrine Chamayou(J Assist Reprod Genet. 2013)らの論文では、妊娠した胚では104.5(94.6-117.8)時間、Ashleigh Storr(J Assist Reprod Genet. 2015 )のtop quality胚のカットオフは<107.69時間(89.53–127.51)、topもしくはgood quality胚のカットオフは<115.40時間(89.53–134.95)としています。 

<関連コラム> 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 出生児予後

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# 受精卵の評価

# タイムラプス

# 胚盤胞

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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