体外受精

2025.08.20

修正排卵周期凍結融解胚移植におけるトリガー時卵胞径と生殖医療成績(Hum Reprod Open. 2025)

はじめに

修正排卵周期凍結融解胚移植では、排卵時期をコントロールするためにhCGトリガーが使用されることがありますが、トリガー時の最適な卵胞径については明確な基準がありませんでした。一般的には成熟卵子を得るために18mm以上の卵胞径でトリガーされますが、凍結融解胚移植では成熟卵子が必須ではないため、より小さい卵胞径でのトリガーにより成績がどうかを検討した報告をご紹介いたします。

ポイント

修正排卵周期凍結融解胚移植では、月経10日目卵胞径10mm超から18mm以上の幅広い範囲でhCGトリガーを行っても、生児出生率や周産期転帰に悪影響を与えないことが示されました。

引用文献

Zhang J, et al. Hum Reprod Open. 2025. doi: 10.1093/hropen/hoaf047

論文内容

修正排卵周期凍結融解胚移植において、hCGトリガー日の主席卵胞径と生殖医療成績との関連を調査することを目的とした後向きコホート研究です。2013年から2023年に実施された14,431周期を対象とし、hCG投与時の主席卵胞径に基づいて8群(12mm未満、12-12.9mm、13-13.9mm、14-14.9mm、15-15.9mm、16-16.9mm、17-17.9mm、18mm以上)に分類しました。

トリガーと胚移植プロトコル:月経周期10日目から経腟超音波検査とホルモン測定を開始し、LH値とプロゲステロン値に基づいてトリガー時期を決定しました。LH<20IU/L、プロゲステロン<1.0ng/mlの場合、21時に尿由来hCG 5,000単位を投与し、Day3胚は5日後、胚盤胞は7日後に移植しました。LH≥20IU/L又はプロゲステロン≥1.0ng/mlの場合は即座にhCGを投与し、Day3胚は4日後、胚盤胞は6日後に移植しました。

黄体補充療法:hCG投与3日後(前者の場合)又は2日後(後者の場合)から、膣用プロゲステロン400mg/日(ウトロゲスタン)と経口ジドロゲステロン40mg/日(デュファストン)の併用による集中的黄体補充療法を開始し、妊娠確認後は妊娠8週まで継続しました。

結果

8群(12mm未満、12-12.9mm、13-13.9mm、14-14.9mm、15-15.9mm、16-16.9mm、17-17.9mm、18mm以上)間で生児出生率に有意差は認められませんでした(37.3%、36.4%、36.0%、35.7%、37.2%、37.6%、37.2%、39.0%、P=0.405)。妊娠陽性率は49.0%、48.9%、47.5%、48.1%、48.9%、48.8%、48.9%、50.7%(P=0.541)、着床率は33.3%、28.4%、30.1%、30.1%、31.9%、31.4%、31.0%、32.3%(P=0.230)、臨床妊娠率は45.1%、43.3%、43.0%、43.6%、44.0%、44.0%、43.7%、45.6%(P=0.631)でした。Pregnancy loss率(生化学的流産+臨床的流産)は24.0%、25.5%、24.2%、25.9%、23.9%、23.0%、24.0%、23.0%(P=0.924)と群間で有意差はありませんでした。交絡因子調整後も同様の結果でした。 

移植ステージ別割合はDay3胚移植が84.8-90.2%、胚盤胞移植が9.8-15.2%を占めていました。また、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群、異常胎盤などの産科合併症や、早産、低出生体重児、巨大児などの周産期転帰についても群間で有意差は認められませんでした。単胎児4,204例の解析では、平均在胎週数38.57±1.48週、平均出生体重3,357.77±474.71gで、早産率5.3%、低出生体重児率3.4%、巨大児率8.1%でした。

私見

この研究は、卵胞サイズ小さくてもLH 20IU/L超になる症例が2割程度はいることがわかりました。ある一定の内膜厚になり、エストラジオールが出ている状態なら分泌期初期から黄体補充を追加してあげれば成績上問題ないことがわかりました。これにより患者のモニタリングが簡素化され、胚移植日の柔軟なスケジューリングが可能になるかなと思います。 

卵胞サイズ別の内膜厚とホルモン値は以下の通りです。 

hCGトリガー日の内膜厚は卵胞サイズとともに有意に増加しました(P<0.001)。各群の内膜厚(mm)は、<12mm群:9.91±2.46、12-12.9mm群:10.28±2.07、13-13.9mm群:10.37±2.15、14-14.9mm群:10.15±2.09、15-15.9mm群:10.14±1.96、16-16.9mm群:10.21±1.97、17-17.9mm群:10.36±2.06、≥18mm群:10.57±2.14。 

同様にhCGトリガー日のエストラジオール値(pg/ml)も卵胞サイズとともに段階的に上昇しました(P<0.001):<12mm群:117.56±57.82、12-12.9mm群:154.48±68.01、13-13.9mm群:180.34±70.55、14-14.9mm群:204.64±82.16、15-15.9mm群:223.29±82.04、16-16.9mm群:231.27±86.00、17-17.9mm群:243.99±89.37、≥18mm群:271.64±105.25でした。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 凍結受精卵

# 排卵周期下胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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