不育症

2023.09.11

先天性凝固素因異常がある反復流産患者にヘパリン治療は無効(Lancet. 2023)

はじめに

抗凝固療法は、凝固素因がある反復流産患者に使用されることが多いですが、先天性凝固素因患者への低分子ヘパリンの有用性はエビデンスに乏しく、質の高い研究が望まれていました。8年以上の年月をかけて行われたランダム化比較試験をご紹介いたします。 

ポイント 

低分子ヘパリン治療は、先天性凝固素因異常がある反復流産患者の出生率を高めることがありませんでした。反復流産患者に先天性凝固素因異常があったからといって低分子ヘパリン治療を行うことを推奨しないと示されました。

引用文献

Siobhan Quenby, et al. Lancet. 2023 Jul 1;402(10395):54-61. doi: 10.1016/S0140-6736(23)00693-1. 

論文内容

方法

ALIFE2試験は、英国(26施設)、オランダ(10施設)、米国(2施設)、ベルギー(1施設)、スロベニア(1施設)で実施された非盲検ランダム化比較試験です。18~42歳で、2回以上の流産既往があり、先天性凝固素因が確認された女性で挙児希望、妊娠初期(妊娠7週以下)を対象としました。尿中妊娠反応が陽性となった時点で、低用量低分子ヘパリンを使用する群と使用しない群に無作為に割り付けられました(1:1)。低用量低分子ヘパリンは妊娠7週以前から開始し、妊娠終了まで継続しました。主要評価項目は出生率としました。安全性評価項目は出血エピソード、血小板減少、皮膚反応などとしました。 

結果

2012年8月1日から2021年1月30日に、10,625名の女性が適格性を評価され、428名が登録され、326名が妊娠し、無作為に割り付けられました(164名:が低用量低分子ヘパリン群、162名が標準治療群)。低用量低分子ヘパリン群では162名中116名(72%)、標準治療群では158名中112名(71%)が出生に至りました(aOR 1.08、95%CI 0.65~1.78; 絶対リスク差0.7%、95%CI -9.2%~10.6%)。低用量低分子ヘパリン群164名中39名(24%)、標準治療群162名中37名(23%)が有害事象を報告しました。 

私見

先天性凝固素因検査は、第V因子ライデン変異、プロトロンビン遺伝子変異(G20210A)、アンチトロンビン欠損症、プロテインC欠損症、プロテインS欠損症としました。アンチトロンビン欠乏症、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症は、妊娠中または産後6週間以外の時期に2回の検査を行い診断しています。 

出生率は先行しているALIFE試験やコホート試験と同様であることから、比較的臨床に即した信頼性の高い報告であることが示唆されます。 

Kaandorp SP, et al. N Engl J Med. 2010; 362: 1586-1596 
Kolte AM, et al. Hum Reprod. 2021; 36: 1065-1073 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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