体外受精

2024.08.23

水溶性プロゲステロン皮下注射の凍結融解胚移植成績(F S Rep. 2022)

はじめに

水溶性プロゲステロン皮下注射黄体補充における体外受精臨床成績については新鮮胚移植が主流です。凍結融解胚移植での使用成績をご紹介いたします。

ポイント

水溶性プロゲステロン皮下注射50mg/dayであれば、油性プロゲステロン筋肉注射50mg/dayと凍結融解胚移植成績は同等です。

引用文献

Fazilet K Boynukalin, et al. F S Rep. 2022 Nov 11;4(2):165-172. doi: 10.1016/j.xfre.2022.11.002.

論文内容

ホルモン補充周期における凍結融解胚移植において、水溶性プロゲステロン皮下注射製剤と油性プロゲステロン筋肉注射の妊娠継続率を比較する前向き非ランダム化コホート研究です。
ホルモン補充周期における凍結融解胚移植224名をリクルートし、133名には水溶性プロゲステロン皮下注射、91名には油性プロゲステロン筋肉注射を投与しました。プロゲステロン製剤の選択は、患者の希望と通院のしやすさを考慮して決定しました。35歳以下の女性が対象としました。

結果

患者背景は、両群間で同等でした。臨床的妊娠率(86/133[64.7%] vs. 57/91[62.6%])、流産率(21/86 [24.4%] vs. 10/ 57 [17.5%])、および妊娠継続率(65/133 [48.9%] vs. 47/91 [51.6%])は、水溶性プロゲステロン皮下注射群と油性プロゲステロン筋肉注射群で同等の成績でした。二項ロジスティック回帰分析により、胚盤胞形態が妊娠継続率と有意な関連を認め(質の悪さ:aOR、0.11; 95%CI、0.029-0.427)、黄体ホルモン投与経路(皮下投与 vs. 筋肉内投与)は予後因子としては有意なものではありませんでした(sOR、0.694; 95%CI、0.354–1.358)。

私見

この研究では水溶性プロゲステロン皮下注射50mg/dayを採用しています。
P+0 16時に初回投与、その後 8時、20時の一日2回投与とし、P+5 15-18時に胚移植としています。新鮮胚移植の過去の研究に使用されている25mg/dayと異なり、50mg/dayを採用しているのは血中P濃度が25mg/dayだと足りないと判断しているからのようです。
今回の研究では、移植日の血清P濃度は水溶性プロゲステロン皮下注射群19.92 (15.19-27.23)ng/mL、油性プロゲステロン筋肉注射群21 (16.5-27.23)ng/mLとなっています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# プロゲステロン/プロゲスチン

# ホルモン調整周期下胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

HRT-FETにおける腟用プロゲステロン製剤の用量と血中プロゲステロン値の影響(Reprod Med Biol. 2026)

2026.06.26

融解後延長培養が凍結融解胚盤胞移植の妊娠成績予測に有用か(J Assist Reprod Genet. 2018)

2026.06.23

凍結融解胚移植における融解後培養時間と出生率(Reprod Med Biol. 2022)

2026.06.22

凍結融解単一胚盤胞移植における融解後培養時間と臨床予後(Clin Exp Reprod Med. 2020)

2026.06.19

ガラス化融解後に再膨張しない胚盤胞の臨床成績(Sci Rep. 2025)

2026.06.17

体外受精の人気記事

自然周期での小卵胞採卵は生殖医療成績を改善する(Fertil Steril. 2016) 

2023.10.16

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

2022.06.24

40歳以上のART累積出生率(Sci Rep. 2024)

2024.11.07

卵巣刺激に用いるHMG製剤とは

2021.02.24

今月の人気記事

自然周期での小卵胞採卵は生殖医療成績を改善する(Fertil Steril. 2016) 

2023.10.16

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

2021.09.11

日本の妊娠可能男性の精液基準値は?(BMJ Open. 2013)

2021.09.11

睡眠と精液検査② (論文紹介)

2022.08.13

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03