体外受精

2025.01.09

PGT-M+PGT-A併用時とPGT-A単独時の染色体異常率と使用可能胚獲得率の比較:後方視的コホート研究(Fertil Steril 2024)

はじめに

単一遺伝子疾患の診断(PGT-M)と染色体異常の検査(PGT-A)の併用したときに染色体異常率と使用可能胚獲得率がどのように変化するか報告がありませんでした。

ポイント

PGT-MとPGT-Aの併用は、40歳以下の患者では単独PGT-Aと比較して使用可能胚の獲得率が低下するものの、年齢別の染色体異常率は同等でした。

引用文献

Martel RA, et al. Fertil Steril 2024. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.07.030

論文内容

PGT-M+PGT-A併用時とPGT-A単独時の染色体異常率と使用可能胚獲得率の比較をするために実施されたレトロスペクティブコホート研究です。2019年11月から2023年3月までの期間に、単一の遺伝子検査機関でPGT-Aを実施した72,522周期の体外受精症例(18-45歳)を分析しました。そのうち4255周期(5.9%)がPGT-M+PGT-A併用例、68267周期(94.1%)がPGT-A単独例でした。

結果

PGT-M+PGT-A群は若年層が多く(35歳未満:56.1% vs. 30.5%)、遺伝子異常の内訳は常染色体顕性(42.4%)、常染色体潜性(36.5%)、X連鎖顕性(13.3%)、X連鎖潜性(7.5%)でした。生検胚数の中央値は、35歳未満の患者ではPGT-M+PGT-A周期と比較してPGT-A単独周期で高い結果になりましたが、その他の年齢層では同等でした。

年齢層別の染色体異常率は両群間で有意差を認めませんでした。
PGT-A単独群とPGT-M+PGT-A群の年齢層別・遺伝形式別の使用可能胚獲得率を最後にまとめますが、特徴的な点として、①すべての年齢層でPGT-A単独群の方が高い使用可能胚獲得率、②40歳以下では、常染色体顕性が最も低い獲得率となる傾向でした。

私見

本研究は7万例以上の大規模な解析により、PGT-M+PGT-A併用時の結果を検討した重要な報告です。常染色体顕性の使用可能胚獲得率が最も低い理由は、理論的に50%の胚が疾患を有することになり、常染色体潜性(25%)やX連鎖疾患と比較して高くなるためです。当然といえば当然ですよね。

【PGT-A単独群】
35歳未満:91.9%
35-37歳:87.0%
38-40歳:76.4%
41-42歳:57.1%
42歳超:36.3%

【PGT-M+PGT-A群】
<35歳:
– 常染色体潜性:86.9%
– 常染色体顕性:78.2%
– X連鎖顕性:81.5%
– X連鎖潜性:85.2%
35-37歳:
– 常染色体潜性:79.5%
– 常染色体顕性:69.3%
– X連鎖顕性:71.4%
– X連鎖潜性:77.3%
38-40歳:
– 常染色体潜性:71.7%
– 常染色体顕性:59.7%
– X連鎖顕性:65.8%
– X連鎖潜性:60.8%
41-42歳:
– 常染色体潜性:53.7%
– 常染色体顕性:43.8%
– X連鎖顕性:62.5%
– X連鎖潜性:50.0%
>42歳:
– 常染色体潜性:21.4%
– 常染色体顕性:27.3%
– X連鎖顕性:40.0%
– X連鎖潜性:0%

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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