体外受精

2025.02.03

体外受精における胚培養戦略:Day3胚移植 vs 全胚盤胞培養(J Assist Reprod Genet. 2024)

はじめに

体外受精-胚移植において、胚盤胞移植は臨床妊娠率と出生率を向上させることが確認されています。良好な卵巣予備能を持つ患者では、胚盤胞培養により発生能力の高い胚を選択することができます。しかし、胚盤胞に到達せず移植キャンセルリスクがあります。この報告を採卵あたりの累積出生率を上げるならば?初期胚移植を検討すべきかどうか?という報告です。諸々思うとところがあり、取り上げることにしました。

ポイント

胚移植回数に制限がないのであれば、Day3で良好胚が0-2個の場合は、全胚盤胞培養よりもDay3胚移植を選択することで、累積出生率が向上する可能性があります。

引用文献

Wei H, et al. J Assist Reprod Genet. 2024. https://doi.org/10.1007/s10815-024-03365-6

論文内容

GnRHアンタゴニスト法を用いたART患者における最適な培養・胚移植戦略の選択について検討することを目的としました。2018年1月から2022年6月に4,131名の初回採卵周期データを用いた後方視的研究で、Day3での新鮮胚を考慮する部分的胚盤胞培養(PBC)戦略と全胚盤胞培養して新鮮胚移植を検討する(WEC)戦略の2群に分類し、さらにDay3良好胚数により3サブグループ(0-2個、3-7個、8個以上)に分けて検討しました。主要評価項目は採卵あたりの累積出生率としました。

結果

傾向スコアマッチング後、サブグループ1(0-2個)ではPBC戦略がWEC戦略と比較して高い累積出生率を示しました(33.0% vs 25.7%、P=0.018)。サブグループ2および3では、2つの胚管理戦略間で累積出生率に差は認められませんでした。

私見

こちらは移植回数の制限がある国内ではなかなか当てはまらない治療選択だと思います。サブグループ1がなぜ高い累積出生率を示したかは、胚盤胞に到達せず移植できない周期があったからです。胚移植成績が変わらないのに、移植できない周期が入ってくる分だけ成績が下がった状況です。また胚移植個数も初期胚1.8個、胚盤胞1.5個なので、なかなか胚移植回数を一回犠牲にして、多胎リスクを背負ってまで胚移植にこだわらなくても、胚盤胞にならなければ仕切り直しでもいいのかなとも感じてしまいます。なお、サブグループ1は女性年齢34歳、回収卵子数7個弱に場合の結果となっています。間違った解釈が普及しないよう、あとあと流し読みをして誤解しないようにしておかないといけない報告だと思っています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 胚移植(ET)

# 胚盤胞

# 初期胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

移植前情報(体外受精)に関連するタグ

# 手術

# 生活習慣

# 胚盤胞

# 周産期合併症

# インスリン抵抗性、HOMA

# 精子DNA損傷検査

# 培養液

# 出生児予後

# 異所性妊娠

# タイムラプス

# 媒精(IVF)

# 基礎研究

# 黄体補充

# 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

# ビタミン

# 新鮮胚移植

# がんと生殖医療

# 胎盤異常

# 不育症(RPL)

# ドナー・サロゲート

# クロミフェン、AIなど

# 着床前遺伝学的検査(PGT)

# ホルモン調整周期下胚移植

# 初期胚移植

# 顕微授精(ICSI)

# 低刺激排卵誘発法

# 慢性子宮内膜炎

# ハイリスク妊娠

# サプリメント

# 帝王切開

# メトホルミン

# 凍結融解胚移植

# 細菌性膣症

# 帝王切開瘢痕症候群

# ラクトバチルス

# 年齢素因

# 多胎

# 子宮内細菌叢検査

# 凍結受精卵

# 卵子の評価

# 精液所見

# 胚移植(ET)

# 子宮内膜ポリープ

# 透明帯孵化補助(AHA)

# 卵巣刺激

# マーカー・遺伝子

# hCG

# 子宮内膜厚、形態

# 妊娠糖尿病

# 良性腫瘍

# 卵巣予備能、AMH

# LUF

# 子宮内膜症

# 妊娠高血圧症候群

# ロング法、ショート法

# 総説、RCT、メタアナリシス

# プロゲステロン/プロゲスチン

# 子宮形態異常

# 反復着床不全(RIF)

# 体重、BMI

# 費用対効果

# 子宮鏡

# 受精卵の評価

# 排卵周期下胚移植

# 胚質評価

# AI・統計的手法

# 流産、死産

# 染色体

# 排卵誘発、トリガー

# 予防介入

# 疫学研究・データベース

あわせて読みたい記事

PGT-Aは誰に実施されている?米国リアルワールドデータ(Hum Reprod Open. 2026)

2026.09.21

Nugent scoreは子宮内膜の細菌叢を反映する?(当院関連論文:Front Endocrinol. 2026)

2026.09.17

初回体外受精前の子宮鏡検査は出生率を改善する?inSIGHT試験(Lancet. 2016)

2026.07.13

既往帝王切開が体外受精治療成績に与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.07.03

精子DNA断片化はPGT-Aの結果に影響するのか?―胚染色体の正倍数性と男性因子の新たな視点 (Eur J Med Res、2025)

2026.05.02

体外受精の人気記事

2024年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2026.09.10

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

SEET法は凍結融解胚移植の成績を悪化させる可能性あり?(Sci Rep. 2025)

2026.03.30

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

2026.01.23

ART不成功におけるタクロリムス治療(J Reprod Immunol. 2026)

2026.02.27

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

2022.06.24

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2024年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2026.09.10

千葉県「早期不妊検査費助成事業」が2026年10月1日から始まりました―夫婦ふたりで不妊検査を受けると、1組につき上限3万円まで助成―

2026.10.01

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

卵子の大きさ

2025.03.08