体外受精

2025.06.04

排卵周期凍結融解胚移植のトリガー有無による生児出生率比較(Fertil Steril. 2024)

はじめに

排卵周期凍結融解胚移植はホルモン補充周期と違い排卵日を同定しないといけません。排卵周期では、hCGトリガーを使用するか、LHサージが自然と出るのを待つかの議論が以前よりされています。今回、自然LHサージを用いた排卵周期と、hCGトリガーを用いた修正排卵周期における凍結胚盤胞移植後の妊娠率を比較したランダム化比較試験をご紹介いたします。

ポイント

排卵周期凍結融解胚移植において、LHサージと hCGトリガーによる生殖医療結果に差は認めませんでした。

引用文献

Ranisavljevic N, et al. Fertil Steril. 2024 Apr;123(4):718-720. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.10.021.

論文内容

2018年3月から2021年6月にかけて実施された2施設共同二群非盲検ランダム化比較試験です。18~39歳で規則的な月経周期(25~35日)を有し、凍結5日目胚盤胞移植を予定している患者を対象としました。参加者は1:1の比率で自然LHサージ待機群(自然NC群)またはhCG皮下注射による排卵誘発群(修正NC群)にランダムに割り付けられました。

ブロックランダム化は医療センター別に層別化され、ウェブサービスを通じて実施しました。ランダム化は最初の超音波実施日(周期8または9日目)に行われました。胚移植を行うには子宮内膜厚7mm以上とし、自然LHサージは、血清LH値が基礎LH血清値の少なくとも3倍に増加し、17mm以上の大きな卵巣卵胞が認められることと定義し、LHサージ3日後に血清プロゲステロン値が3ng/mL以上であることを排卵としました。修正NC群では、主席卵胞が17mm以上に達した時点で午後11時にリコンビナントhCGを実施しました。


詳細な管理法は以下のとおりです。

自然NC群の管理: 周期1-4日目に基礎LH値を測定し、周期8-9日目から超音波検査と血清ホルモン分析(LH、エストラジオール、プロゲステロン)を開始。その後、結果に応じて頻度を変えながら検査を繰り返し、自然LHサージ(基礎LH値の3倍以上の上昇+17mm以上の卵胞)を待ちます。LHサージ確認後、3日後(LH+3日目)にプロゲステロン値が3ng/mL以上であることを確認して排卵を確認し、LHサージから6-7日後に胚移植を実施します。
修正NC群の管理: 同様に周期1-4日目に基礎LH値を測定し、周期8-9日目から検査を開始しますが、主席卵胞が17mm以上に達した時点で午後11時にhCGを投与して排卵を誘発します。hCG投与から7日後に胚移植を実施します。

結果

計108名の患者(各群54名)が登録され、このうち7名(6.5%)(自然NC群4名、修正NC群3名)が研究を完了しませんでした。修正NC群の16名(29.6%)でhCGトリガー前に自然LHサージがおこり、自然NC周期として管理されましたが、intention-to-treat解析で分析されました。患者特性は両ランダム化群で同等でした。妊娠率はintention-to-treat解析(35.2% vs. 31.5%; P=.68; RR[95%CI], 0.89 [0.52–1.53])およびper protocol解析(36.4% vs. 34.3%; P=.84; RR[95%CI], 0.94 [0.54–1.65])の両方で両群間に差はありませんでした。胚移植前の受診回数の平均は、自然NC群で両解析において有意に多く(ITT, P<.0001、per protocol, P=.0064)、これを除いて副次評価項目に両群間の差はありませんでした。

私見

この研究の大事なポイントは黄体補充を行なっていないところです。
受診回数をhCGトリガーにより減らし生殖医療成績を低下しないことは、患者の負担や医療経済性の観点から修正NC周期のメリットとなります。
過去の同様にポイントに着目した論文は以下となります。

  1. Fatemi HM, et al Fertil Steril. 2010;94(6):2054-8.:Day 3胚を用いた124名のRCTで、自然LHサージ群で継続妊娠率が有意に高くなりました。
  2. Weissman A, et al. Reprod Biomed Online. 2011;23(4):484-9.:Day 3胚を用いた60名を対象としたRCTで、hCGトリガー群と自然LHサージ群で妊娠率および生児獲得率に差はありませんでした。
  3. Montagut M, et al. Hum Reprod. 2016;31(12):2803-10.:胚時期は混じっています。後ろ向き研究で、自然LHサージ群とhCGトリガー群を比較し、妊娠率および生児獲得率に差がありませんでした。
  4. Montagut M, et al. Hum Reprod. 2016;31(12):2803-10.:胚時期は混じっています。後ろ向き研究で、自然LHサージ群とhCGトリガー群を比較し、妊娠率および生児獲得率に差がありませんでした。
  5. Mackens S, et al. Hum Reprod. 2020;35(5):1073-81.:Day 3胚を用いた260名を対象としたRCTで、自然LHサージ群とhCGトリガー群の臨床妊娠率に差はありませんでした。
  6. Gao DD, et al. Front Med (Lausanne). 2021;8:691428.:Day 5胚盤胞を用いた後ろ向き研究で、hCGトリガー群は自然周期と比較して生児獲得率が低下する可能性があることが示されました。
  7. Huberlant S, et al. Gynecol Obstet Fertil Senol. 2018;46(5):466-73.:Day 5胚盤胞を用いた後ろ向き研究(81名)で、hCGトリガー群で良好な傾向を示しましたが、統計学的有意差はありませんでした。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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