体外受精

2025.07.16

排卵周期凍結融解胚移植妊娠における黄体補充の是非(Fertil Steril. 2025)

はじめに

排卵周期での凍結融解胚移植(NC-FET)は、HRT周期と比較して妊娠高血圧症候群などの有害な周産期合併症のリスクが低いことが知られています。しかし、NC-FETにおけるプロゲスチンによる黄体補充に関する周産期予後への影響については、これまで十分な検討が行われていませんでした。こちらを調査した報告をご紹介いたします。

ポイント

排卵周期凍結融解胚移植において黄体補充は周産期に有害な影響を与えず、むしろ正常体重範囲での出生割合の増加が認められました。

引用文献

Elenis E, et al. Fertil Steril. 2025;124(1):104-112. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.12.022

論文内容

排卵周期凍結融解胚移植(NC-FET)後の黄体期および妊娠初期におけるプロゲスチン補充が周産期予後に影響するかを検討することを目的とした研究です。2008年-2011年および2013年-2018年にスウェーデンの2つの大学病院で実施された2つの無作為化対照試験の二次データ解析研究として行われました。NC-FETサイクルを受けた923名の女性のうち、治療後に妊娠し単胎の生児を出産した227名を対象としました。

研究参加者は妊娠8週まで黄体期に腟プロゲスチン補充を受ける群(136名)または標準治療としてプロゲスチン補充を行わない群(91名)に無作為に割り付けられました。産科および新生児の転帰の発生率を評価し、妊娠高血圧症候群の発症尤度を表すオッズ比を95%信頼区間とともに算出しました。オッズ比は参加者の人口統計学的因子(モデル1)または人口統計学的因子と体外受精治療変数の両方(モデル2)で調整されました。

結果

黄体補充群でわずかに母体年齢が高いことを除けば、両群の被験者は不妊診断、受精方法、胚ステージ、移植胚数に関して同等でした。黄体補充群では非補充群と比較してLGA(large for gestational age)の発生率が低い傾向を示し(2.9% vs 8.8%、P=0.070)、SGA(small for gestational age)も少なく(0.7% vs 3.3%)、その結果として正常体重範囲での出生割合が有意に増加しました(82.4% vs 70.3%、P=0.033)。NC-FETサイクルで黄体補充後の妊娠では妊娠高血圧症候群の発生率が数値的に低い傾向を示しましたが、統計学的有意差には達しませんでした(4.4% vs 11.1%)。実施された多変量ロジスティック回帰解析でも同様のパターンが認められました。その他の主要な有害周産期転帰や新生児転帰に関して差は認められませんでした。

私見

移植方法は次のとおりです。自宅で朝の尿を用いてLHサージ検査(ClearplanまたはClearblue)を実施し、陽性を確認した日をLH0日とします。胚の発育段階に応じて、2-3日目の初期胚の場合はLH+2~3日目に、5-6日目の胚盤胞の場合はLH+5~6日目に胚移植を実施します。胚移植は午後1:00~4:00の決まった時間帯に行われ、移植当日からプロゲスチン腟剤による黄体補充を開始し、妊娠判定まで18日間継続、妊娠が成立した場合は妊娠8週まで投与を継続します。 NC-FETサイクルの黄体期および妊娠初期における腟プロゲスチン補充を行っても周産期合併症がないことを示した重要な報告です。つまり、HRT周期で懸念される妊娠高血圧症候群リスクをプロゲステロン値に関係するものではない可能性が高いのではと思っています。今回の結果は、プロゲスチンの免疫調節効果や脱落膜化促進作用、血管リモデリングへの関与などの生理学的機序により説明される可能性があります。特に正常体重範囲での出生割合の増加は、適切な胎盤機能と胎児発育への好影響を示唆していると思います。Limitationでも記載されていましたが、有病率が低い疾患をoutcomeにしていますので質が高い研究の二次解析とはいえど症例数が少ないのが少し残念なところです。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 黄体補充

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# 凍結融解胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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