体外受精

2022.03.22

卵巣を片方とると体外受精での妊娠率がさがる(Hum Reprod. 2018)

はじめに

「卵巣が片方ないと成績が落ちますか?」という質問をよく受けます。
卵巣が片方なくても毎周期、排卵して月経がくるわけで、もう片方の卵巣が代償してくれているので自然妊娠の割合は変わらないのかもしれません。閉経が1年ばかり短くなるのではという報告もあります。では、体外受精の成績はどうでしょうか。片側卵巣切除既往のある女性の出生率を評価した最近の大規模コホート研究をご紹介します。

ポイント

片側卵巣切除既往のある女性では、体外受精での採卵あたりの出生率、移植あたりの出生率ともに約30%低下します。これは主に回収卵子数の減少によるもので、卵子数を補正すると成績差は消失します。凍結融解胚移植のみでは成績に差がみられません。

引用文献

Tekla Lind, et al. Hum Reprod. 2018. DOI: 10.1093/humrep/dex358

論文内容

スウェーデンの生殖医療センター5施設を含む多施設共同コホート研究です。1999年1月から2015年11月の間に体外受精を受けた女性を対象としました。
卵巣刺激はロング法もしくはアンタゴニスト法で行い、胚移植は、大半の症例(94%)が初期胚移植を行っていました。単一胚移植は全治療の約70%で行われ、片側卵巣切除女性vs対照女性(68% vs 71%)でそれぞれ有意差はなく(P = 0.32)、残りの症例では最大2個の胚が移植されました。
301の体外受精周期を受けた片側卵巣切除の女性154名が含まれ、曝露されていない対照コホートは、41,545の体外受精周期を受けた女性22,693名で構成されています。主要評価項目は出生率で、開始周期あたり、採卵周期あたり、胚移植あたりで分析されました。副次評価項目は、回収卵子数、有効胚数、Ovarian Sensitivity Index(OSI)、胚グレード、累積妊娠率としました。統計解析にはGEEモデルを使用しました。

結果

片側卵巣切除女性群と対照女性群は、患者背景は同じでした。出生率には、片側卵巣切除群と対照群との間で、粗調整および年齢調整のいずれにおいても有意差が認められました。開始周期あたりの出生率(18.6% vs. 25.4%)、採卵周期あたりの出生率(20.3% vs 27.1%)、移植周期あたりの出生率(23.0% vs 29.7%)でした。出生率の差は新鮮移植と凍結融解移植の両方を含めても採卵周期あたりの出生率(26.1% vs 34.4%)と移植周期あたりの出生率(28.3% vs 37.1%)と差がありました。女性年齢、BMI、クリニック別、年代、移植胚数で調整すると、採卵あたりの出生率(新鮮および凍結融解胚移植)(OR 0.70, 95% CI 0.52-0.94, P = 0.016)および移植あたりの出生率(新鮮および凍結融解胚移植)(OR 0.68, 95% CI 0.51-0.92, P = 0.012)は片側卵巣切除女性群の累積オッズ比率は約30%低くなっていました。OSIは、片側卵巣切除の既往のある女性では対照群より有意に低く(3.6 vs 6.0)、回収卵子数も低くなりました(7.2 vs 9.9)。

私見

この大規模な多施設共同研究では、女性年齢、BMI、不妊治療施設、年代を調整した後でも、新鮮胚移植あたりの出生率、採卵周期あたりの累積出生率ともに片側卵巣切除既往女性では30%低くなることがわかりました。
成績は採卵あたりの回収卵子数に影響を受けており、卵子数を補正すると成績差がなくなります。実際、凍結融解胚移植のみの成績には差が出ていません。またOSIが片側卵巣切除既往女性で低下しているのは片側卵巣切除後の患者様に無意識にゴナドトロピン投与量を増やしてしまっているせいではないでしょうか。
片方の卵巣をとった理由によるかもしれません。
内膜症は妊娠率を低下させることは周知の事実ですし、片方の卵巣をとったときの残した卵巣にも手術時の介入があるかどうかなど交絡因子は様々です。現段階では、片側卵巣切除の女性への説明は、回収卵が落ちるため一回の体外受精成績が落ちる可能性があります程度に留めるのがよいかもしれません。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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