体外受精

2022.04.25

採卵前後のホルモン動態(Hum Reprod. 2020)

はじめに

採卵後のホルモン動態は、新鮮胚移植を行うかどうかの判断の上で非常に重要となります。黄体補充はいつ行うか?内膜のずれはどうなのか?新鮮胚移植で妊娠した後の凍結融解胚移植周期の黄体補充はどうしたらよいのか?などです。 
全胚凍結を行った症例(つまり採卵での卵子の回収以外、採卵後のホルモン補充なし)での採卵前から採卵後のホルモン動態を示した報告をご紹介します。 

ポイント

プロゲステロン値は採卵1日後から上昇し採卵4日後にピークに達した後、5日目以降に減少します。胚盤胞が着床する前にプロゲステロンが低下するため、新鮮胚移植を行う上で4日目以降の黄体補充が推奨されます。 

引用文献

Lan N Vuong, et al. Hum Reprod. 2020. DOI: 10.1093/humrep/dez235 

論文内容

2016-2017年にベトナムで実施されました。FSHによる卵巣刺激中にGnRHアンタゴニストの併用投与を受けた正常な卵巣予備能を有する女性161名(採卵二ヶ月以内 AMH 1.25ng/mL以上またはAFC6以上)を対象とし、卵巣刺激はFSH 150-300単位で卵巣刺激を実施したGnRHアンタゴニストプロトコールでオビドレル250ug(rhCG)トリガーで採卵を行い、全胚凍結を行った症例の採卵前後のホルモン動態を調べた前向き研究です。ホルモン値は、誘発日、hCG前、hCG後12、24、36時間、採卵後1、2、3、4、5、6日の採血で測定されました。主要評価項目は、黄体期早期のプロゲステロン、LH、エストラジオールおよびhCGの血清濃度としました。

結果

プロゲステロン値は採卵1日後から上昇し始め、採卵4日後にピークに達し(114ng/mL)、採卵5日目以降に減少しました。プロゲステロン値のピークがあった割合は採卵+4日、採卵+5日、採卵+6日でそれぞれ38.8%、29.4%、13.8%でした。約2/3の患者は、採卵+4日から採卵+6日にかけてプロゲステロン値が低下しました。hCGトリガー前プロゲステロン値はhCG後24時間後プロゲステロン値と有意に相関し(r2 = 0.28; P < 0.001)、さらに採卵+4日プロゲステロン値と有意に相関しました(r2 = 0.32; P < 0.001)。LHはhCGトリガー12時間後にピークを迎え(4.4 IU/L)、24時間持続しましたが、生理的レベルと比較してほとんど上昇しませんでした。血清エストラジオールのピークはトリガー後24時間と採卵+4日の2回でした。hCGの最高値(130mIU/mL)は注入後24時間でした。11mm以上の発育卵胞数と血清プロゲステロン値との相関はhCGトリガー24時間後および36時間後、採卵+1日に認めました。 

今回の症例は、平均女性年齢31.8歳、BMI 20.5、AMH 4.55 ng/ml、AFC 15.1個、total FSH量2375単位、卵巣刺激期間8.7日、回収卵子数13.8個の場合のホルモン動態となっています。

私見

プロゲステロンのピーク濃度は採卵後4日後に起こり、6日目までに平均35%低下することがわかりました。このデータを振り返っても、胚盤胞が着床する前にプロゲステロンが低下するわけですから、新鮮胚移植を行う上で4日目以降の黄体補充が推奨されることがわかります。 
興味深い内容として、生理的に意味がないレベルではないにせよ、LHレベルはトリガー後12時間以内にピークに達したことです。これは何を意味するのでしょうか。偶然なのか、必然なのか。卵巣刺激は奥が深いですね。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# GnRHアンタゴニスト

# 黄体補充

# 卵巣刺激

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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