体外受精

2022.07.06

黄体化未破裂卵胞(LUF)になると排卵周期凍結融解胚移植の成績は落ちる?( Front Endocrinol (Lausanne). 2021.)

はじめに

1975年に黄体化未破裂卵胞(LUF)が初めて報告されて以来、そのメカニズムや影響について詳細はわかっていません。内分泌疾患や非ステロイド性抗炎症薬、排卵誘発時のクエン酸クロミフェンなどの医原性因子がLUFの主な原因である可能性が指摘されています。凍結融解胚移植を実施する時にLUFになると生殖医療成績に影響を与えるかどうか調査した論文をご紹介いたします。 

ポイント

黄体化未破裂卵胞(LUF)になると排卵周期凍結融解胚移植(胚盤胞)の成績が下がる可能性があります。特にLHサージが不十分な場合は、注意が必要です。 

引用文献

Song Li, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2021. DOI: 10.3389/fendo.2021.738005 

論文内容

2014年10月から2017年9月までに自然周期で排卵周期凍結融解胚移植(胚盤胞)を受けた患者2,192名を対象としました。傾向スコアマッチングを用いて、LUFと診断された患者177名(LUF群)を通常排卵患者354名(排卵群)とマッチングさせました。LUF群はさらに、LH peak値30IU/Lで層別化しました。LUF群と排卵群、およびLUF群のLH peak値のサブグループ間の臨床妊娠率および出生率をレトロスペクティブに解析しました。 

結果

傾向スコアマッチング後、症例背景はLUF群と通常排卵群で同様でした。LUF群の臨床妊娠率は通常排卵群より有意に低くなりました(それぞれ47.46% vs. 58.76%、調整後P = 0.01, OR 0.60, 95%CI 0.42-0.87)。出生率については、LUF群で低かったものの、有意差は検出されませんでした(43.50% vs. 50.00%、調整後P = 0.19, OR 0.76, 95% CI 0.51-1.14)。LUF群のLH peak値30IU/Lで層別化したサブグループ解析では、LH 30 IU/L未満群はLH 30 IU/L以上群に比べて臨床妊娠率(43.02% vs. 62.30%、調整後P = 0.02、OR 0.45、95%CI 0.23-0.87)および出生率(37.21% vs. 59.02%、調整後P = 0.01、OR 0.40、95%CI 0.20-0.78)ともに低くなりました。 
今回の報告ではLUF割合が8.8%でした。今回のプロトコールは凍結融解の排卵周期は自然周期で開始、月経周期10日目から超音波検査を実施し発育卵胞径が14mmに達した時点で、毎日尿中LHサージを観察させました。尿中LH検査が陽性であった場合、あるいは発育卵胞径が18mmに達した場合に、血清中LH、E2、P4値を測定しました。その後、超音波検査を排卵またはLUFが確認されるまで毎日実施しました。少数の患者(通常排卵群10名、LUF群24名)には、hCGトリガーが実施されています。 

私見

LUFがあっても排卵周期凍結融解胚移植の成績が変わらないという報告もあります。144例のLUF周期と866例の排卵周期の成績を比較した中国で行われた後方視的研究ですが、着床率、臨床妊娠率、継続妊娠率、出生率はLUF群で12.76%(49/384)、27.78%(40/144)、24.31%(35/144)、19.44%(28/144)、排卵群では14.74%(332/2251)、31.29%(271/866)、28.29%(245/866)、22.23%(193/866)(P>0.05)で差がありませんでした(Lina Wang, et al. J Assist Reprod Genet. 2008. DOI: 10.1007/s10815-008-9225-2)。この論文では、初期胚の複数胚移植であったこと、また3日目胚を移植した日からプロゲステロン20mg/日を連日投与されていたので、今回とりあげた報告の方が現在の実臨床には近い気がします。 

LUF群のLH peak値30IU/L未満で妊娠率が低く、LH peak値30IU/L以上だと通常排卵周期と成績が変わらなかったことを考えるとLHサージがしっかりしているLUF(つまり顆粒膜細胞などの影響ではなく、卵巣周囲癒着などの症例)では黄体機能および子宮内膜受容能に影響を与えなさそうです。 

LUF 排卵周期
周期数 177 354 
LHサージ日の LH値 (IU/L) 30.52 ± 15.37 38.11 ± 16.33 
LHサージ日の E2値(pg/ml) 242.31 ± 91.84 258.53 ± 92.92 
LHサージ日の P4値(ng/ml) 0.67 ± 0.25 0.77 ± 0.24  
発育卵胞の直径(mm) 17.47 ± 2.15 18.18 ± 1.89 
胚移植日の E2値(pg/ml) 161.54 ± 73.21 143.39 ± 56.49 
胚移植日の P4値(ng/ml) 12.54 ± 6.40  13.87 ± 5.21  
中央値(幅) 11.40 (2.30, 61.90)  13.35 (3.50, 42.90)  
※LHサージ日の E2値(pg/ml)以外 全て有意差あり 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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