体外受精

2022.12.08

ゴナドトロピン刺激は卵子および初期胚の発育に影響を与える?(論文紹介)

はじめに

自然周期採卵でのデータは世界に誇る報告が2017年に国内施設から行われています。8年間のレトロスペクティブ研究ですが、14,185個の自然周期卵子が、1回の胚移植で1,913名の生児獲得しており、女性年齢別に卵子1個あたりの出生率をみてみると、女性35歳以下では26%、42歳以上では1%に減少していることがわかります(表1)。

Sherman J Silber, et al. Fertil Steril. 2017 May;107(5):1232-1237. doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.03.014.

それであれば、卵巣刺激をして回収卵子数を増やせば解決するのでは?という議論になるのですが、卵巣予備能の問題や、卵巣刺激の卵子への影響などの観点から一様にはいきません。今回は、ゴナドトロピン刺激は卵子および初期胚の発育に影響を与えるかどうかを示した報告をご紹介いたします。

ポイント

回収卵子あたりの成熟卵率、ICSIでのzygote率は自然周期採卵の方がゴナドトロピン刺激より高くなりました。Day2分割期胚での4cell率、断片化率も自然周期採卵の方が良好な結果となっており、症例によって自然周期採卵を検討することにより卵子の質の改善が見込める可能性が示唆されました。

引用文献

Isotta Martha Magaton, et al. Reprod Biomed Online. 2022. DOI:10.1016/j.rbmo.2022.11.008

論文内容

2015年-2019年に実施された自然周期-体外受精290名616周期(女性年齢中央値:36歳)と通常卵巣刺激-体外受精140名167周期(女性年齢中央値:34歳)を含むレトロスペクティブ研究です。合計2,110個(自然周期:495個、通常卵巣刺激:1,615個)の回収卵子に対して解析を行いました。通常卵巣刺激-体外受精では、hMG 150-300IU/日を連日使用したGnRHアンタゴニスト法を行いました。ゴナドトロピンが卵子および初期胚の発育に及ぼす影響について分析しました。評価項目は、成熟卵子率、zygote率、day2良好分割期胚率としました。

結果

成熟卵子率(成熟卵子数/回収卵子数)(89% vs. 82%、aOR 1.79、p=0.001)、回収卵子あたりのzygote率(70% vs. 58%、aOR 1.76、p=0.001)と成熟卵子あたりのzygote率(79% vs. 71%、aOR 1.62、p=0.001)は通常卵巣刺激群に比べ自然周期群で高くなりました。day2良好分割期胚率には差がありませんでした。Day2割球4個、断片化が10%未満の良好な胚形態は、自然周期群で高くなりましたが、symmetryには関係ありませんでした。

私見

体外受精治療の歴史をみると、ゴナドトロピン刺激で複数卵が獲得できるようになり、治療成績が上がったのは間違いありません。
ただし、ゴナドトロピン刺激は卵子紡錘体を損なうこと(Di Nisio et al., 2018)、DNAメチル化のエピジェネティック機構に影響を与えること(Uysal et al., 2018)、ミトコンドリア機能に影響を与えること(Lee et al., 2017)などの報告がないわけではありません。
卵巣予備能が低い患者に対して、通常卵巣刺激でうまくいかない場合などは自然周期に戻すのもありかもしれませんね。

表1:自然周期採卵での卵子1個あたりの出生率

女性年齢採卵周期数卵子数卵子あたりの出生率
35歳未満2,8602,99126%
35歳953994994
36歳9941,03521%
37歳1,0831,14719%
38歳78181916%
39歳77381511%
40歳7808159%
41歳8308886%
42歳8208844%
43–54歳3,5123,7971%

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# ゴナドトロピン

# 卵巣刺激

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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