体外受精

2023.03.23

凍結融解胚移植のキャンセル率(過去のRCTから)

はじめに

凍結融解胚移植を行った際の胚移植中止率は排卵周期だとホルモン調整周期に比べて高いかどうかについて、意外と適した論文がありません。コクランレビュー2020 (Demián Glujovsky, et al. doi: 10.1002/14651858.CD006359.pub3.)analysis 2,4 comparison2: programmed cycle versus natural cycle, outcome 4: cycle cancellation rateに一部掲載されています。排卵周期の方がホルモン調整周期よりキャンセル率が低いという結論に達しています(OR 0.60、95%CI 0.44~0.82 、734人、一つの研究、中質の証拠)。しかし、この論文は採卵実施を分母としたRCTであるため、有効胚なしも含まれた解釈となっています。

ポイント

排卵周期凍結融解胚移植で治療キャンセルになる理由は、トリガー前に排卵、発育卵胞なし、不十分な内膜厚、不規則な性器出血、premature LH surgeなど様々ですが7-10%となっています。

引用文献

  • Demián Glujovsky, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2020. doi: 10.1002/14651858.CD006359.pub3
  • Groenewoud ER, et al. Human Reproduction (Oxford, England) 2016
  • Agha-Hosseini M, et al. Turkish Journal of Obstetrics and Gynecology 2018
  • Child T, et al. Fertility and Sterility 2013
  • Greco E, et al. Journal of Assisted Reproduction and Genetics 2016
  • Sheikhi O, et al. JBRA Assisted Reproduction 2018

論文内容

コクランレビュー2020の根拠となったのはGroenewoud ERの報告です。

Groenewoud ER, et al. Human Reproduction (Oxford, England) 2016.
排卵周期495名で解析できたのは394名(解析できない理由: 有効胚なし 68名、トリガー前に排卵 21名、発育卵胞なし 6名、不十分な内膜厚 3名、ラボ側の問題 2名、不規則な性器出血 1名)、ホルモン調整周期464名で解析できたのは340名(解析できない理由: 有効胚なし 72名、ホルモン調整周期中の排卵 7名、副作用 5名、不十分な内膜厚 37名、内膜異常 2名、理由不明1名)

そのほかにも排卵周期とホルモン調整周期のキャンセル率を比較したRCTでは下記のような結果となっています。

Agha-Hosseini M,et al. Turkish Journal of Obstetrics and Gynecology 2018
排卵周期85名は全て解析、ホルモン調整周期85名中2名は個人的な理由、1名は原因不明で治療キャンセルとなり解析できていません。

Child T, et al. Fertility and Sterility 2013.
排卵周期80名で解析できたのは72名、ホルモン調整周期79名で解析できたのは73名

Greco E, et al. Journal of Assisted Reproduction and Genetics 2016.
排卵周期118名で解析できたのは109名(解析できない理由: premature LH surge 6名、不十分な内膜厚 3名)、ホルモン調整周期118名で解析できたのは113名(解析できない理由: 不十分な内膜厚 5名)

Sheikhi O, et al. JBRA Assisted Reproduction 2018.
排卵周期61名で解析できたのは57名(解析できない理由: 排卵誘発の頭痛 1名、不十分な内膜厚 3名)、ホルモン調整周期62名で解析できたのは59名(解析できない理由: 不十分な内膜厚 2名、性器出血 1名)

私見

凍結融解胚移植において、time to pregnancyを意識する中でキャンセル率を減らす努力をすべきだと感じています。しかし、何よりもベストコンディションでトライすることが重要であり、そのためには患者への事前説明が極めて重要です。キャンセルとなる可能性のある理由やリスクを十分に説明し、患者の理解と協力を得ることで、最適なタイミングでの胚移植を実現できると考えています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 排卵周期下胚移植

# ホルモン調整周期下胚移植

# 凍結融解胚移植

# 総説、RCT、メタアナリシス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

凍結胚盤胞のワンステップ融解法(Hum Reprod. 2026)

2026.05.27

ワンステップ融解プロトコルの臨床成績(Reprod Biomed Online. 2026)

2026.05.25

ワンステップ融解プロトコルの有効性と安全性(F&S Rep. 2026)

2026.05.22

ガラス化融解胚盤胞の融解後再拡張・収縮と妊娠予後(Fertil Steril. 2025)

2026.05.06

凍結融解胚移植における子宮内膜調整法の比較研究:多施設無作為化比較試験(BMJ. 2026)

2026.05.05

体外受精の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

ART不成功におけるタクロリムス治療(J Reprod Immunol. 2026)

2026.02.27

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

2026.01.23

SEET法は凍結融解胚移植の成績を悪化させる可能性あり?(Sci Rep. 2025)

2026.03.30

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

2022.06.24

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

2024.03.14

禁欲期間が長いと妊活にはよくないです

2024.03.14

2020.10.26

夫婦の体重(BMI)は妊娠しやすさ(不妊)に影響する?(Fertil Steril. 2020)

2020.10.26

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

ART不成功におけるタクロリムス治療(J Reprod Immunol. 2026)

2026.02.27