体外受精

2023.06.19

ロング法のリュープロレリン量で生殖医療結果は変わらない(J Assist Reprod Genet. 2023)

はじめに

卵巣予備能低下・卵巣刺激反応不良と診断された女性は、出生率を一周期あたりであげるために、成熟卵子数を多く回収する卵巣刺激や費用対効果が良い卵巣刺激法などを選択していく必要があります。 
低用量リュープロレリン(VLDL)および超低用量リュープロレリン(ULDL)を用いたロング法が、POSEIDON分類グループ3および4に基づく「卵巣刺激反応不良」群が他の卵巣刺激プロトコルと比較して、同等の生殖医療結果になるかどうか評価することを目的とした論文をご紹介いたします。 

ポイント

卵巣予備能低下例においてロング法のリュープロレリン量を調整しても、成熟卵子数や出生率などの生殖医療結果に有意差は認められず、プロトコル選択の際はリュープロレリン量より患者背景を考慮することが重要であることが示されました。

引用文献

Zachary W Walker, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Jun 16. doi: 10.1007/s10815-023-02842-8. 

論文内容

2012年から2021年に単一生殖医療施設において行われたレトロスペクティブ・コホート研究です。ULDLにおけるロング法(リュープロレリン0.1→0.05mg/日)、VLDLにおけるロング法(リュープロレリン0.2→0.1mg/日)、ショート法(リュープロレリン0.05mg 1日2回)、エストラジオールプライミングによるアンタゴニスト法・アンタゴニスト法または低刺激法を実施したPG3(女性年齢<35歳、AMH < 1.2ng/mL) またはPG4(女性年齢≥35歳、AMH < 1.2ng/mL )の患者を対象に成熟卵子数(主要評価項目)、出生率(副次評価項目)を比較検討しました。 

結果

PG3グループでは、ULDLにおけるロング法・VLDLにおけるロング法は他の卵巣刺激と比較して、同等の成熟卵子数(それぞれ5.8±4.3および5.9±5.4)および出生率(それぞれ33.3%および33.3%)でした。PG4群では、ULDLにおけるロング法・VLDLにおけるロング法はショート法や低刺激法と比較して成熟卵子数が多くなりました(ショート法/ULDL:aRR 0. 78 (95% CI 0.65, 0.95); 低刺激/ULDL: aRR 0.47 (95% CI 0.38, 0.58); ショート法/VLDL: aRR 0.77 (95% CI 0.63, 0.95); 低刺激/VLDL: aRR 0.47 (95% CI 0.38, 0.95))が、出生率には差がありませんでした。 

私見

ボローニャ基準の卵巣反応不良群に対する卵巣刺激のメタアナリシスでは、GnRHアゴニストプロトコルとGnRHアンタゴニストプロトコルでは、累積出生率、新鮮胚移植出生率、臨床妊娠率、継続妊娠率が同等であることが報告されています(Montoya-Botero P, et al. Hum Reprod Open. 2021) 
POSEIDON分類による35歳未満の卵巣反応不良群に対する卵巣刺激ではGnRHアゴニストプロトコルはGnRHアンタゴニストプロトコルと比較して着床率、累積臨床妊娠率、累積出生率が高いという報告もあります(Huang MC, et al. PLoS One. 2018、Li W, et al. Int J Gynecol Obstet. 2021.) 
ロング法は月経周期2周期にまたがる卵巣刺激であること、胞状卵胞数が少なくてもキャンセルできないことなども課題もあるので、患者様に応じて卵巣刺激法の選択手段を数多く準備しておくことが大事なのかもしれません。 

POSEIDON基準 (すべての基準を満たさなければ認定されず、それ以外は非POR): 

  • I群(若年者、予期せぬPOR) 
    < 35歳未満、AMH≧1.2ng/mL or AFC≧5だが、前周期MIIが<10個回収 
  • II群(高齢、予期せぬPOR)
    35歳以上、AMH≧1.2ng/mL or AFC≧5だが、前周期MIIが<10個回収
  • III群(若年層、予想されるPOR) 
    < 35歳未満、AMH<1.2ng/mL or AFC<5
  • IV群(高齢、予想POR) 
    35歳以上、AMH<1.2ng/mL or AFC<5 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# ロング法、ショート法

# 卵巣予備能、AMH

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

プロバイオティクス・微量栄養素サプリメントと採卵成績の関連(J Assist Reprod Genet. 2025)

2026.03.10

PCOS女性におけるIVF前経腟的卵巣穿刺術の有用性(J Assist Reprod Genet. 2026)

2026.03.04

hCGトリガー日LH値とIVF周期における累積出生率(J Assist Reprod Genet. 2025)

2026.03.03

EFS予防におけるGnRHaトリガー後ホルモン測定の有用性(J Assist Reprod Genet. 2025)

2026.03.02

卵巣反応不良高リスク症例へのGnRHアンタゴニスト法の有用性(Fertil Steril. 2025)

2026.02.23

体外受精の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

自然周期採卵における採卵時適正卵胞サイズ(Frontiers in Endocrinology. 2022)

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

ART不成功におけるタクロリムス治療(J Reprod Immunol. 2026)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

2026.01.23