はじめに
生殖医療ガイドライン2025にERA検査が下記のように記載が改訂されています。
CQ39. 反復着床不全に子宮内膜胚受容能検査は有効か?
RIFには子宮内膜胚受容能検査の実施が考慮される. (C)
私たちも一定回数の反復不成功でERA検査を提案しますが、①検査周期と結果待機期間で2ヶ月の時間のロスを生じること、②先進医療対象ではあるが費用が安くないこと、から、患者様に提案するタイミングを悩ましく感じることが多くあります。ERA検査が正倍数性胚の凍結融解移植不成功のある患者とない患者の出生率に改善があるかどうかを検討した報告をご紹介します。
ポイント
正倍数性胚移植の反復不成功回数が増えてもERA検査の非受容期(early/late receptive含む)の割合は増加しませんでした。プロゲステロン注射製剤を使用した黄体補充下でのERA結果調整下胚移植において出生数に差がつきませんでした。
引用文献
Nicole Doyle, et al. Fertil Steril. 2022.DOI: 10.1016/j.fertnstert.2022.05.013
論文内容
大規模生殖医療センターで2018年1月から2019年4月までに実施された全ての正倍数性胚盤胞の単一凍結融解胚移植を対象としたレトロスペクティブ・コホート研究です。
対象群はERA検査とERA調整下個別化胚移植を実施しました。コントロール群は標準プロトコルの胚移植を行いました。
主要評価項目は出生率であり、副次評価項目は生化学妊娠率および臨床的妊娠率としました。
結果
307件のERA調整下個別化胚移植と2,284件の標準プロトコルの胚移植を解析しました。125件(40.7%)がERA受容期、182件(59.3%)がERA非受容期でした。
反復不成功数を調整してもERA受容期と非受容期の割合に差はありませんでした。
ERA受容期と非受容期にかかわらず、その後のERA調整下個別化胚移植の出生率には差はみられませんでした(48.8%と41.7%、調整オッズ比1.17、95%CI、0.97-1.40)。ERA検査の実施有無に関わらず、出生率には差はみられませんでした(それぞれ44.6%と51.3%、調整オッズ比0.87、95%CI、0.73-1.04)。
| 0回(n=48) | 1回(n=163) | 2回(n=81) | 3回(n=15) | |
| 受容期 | 33.3% | 42.9% | 41.9% | 33.3% |
| 非受容期 | 66.7% | 57.1% | 41.9% | 66.7% |
私見
国内ではERAは先進医療に含まれていますが、世界的には否定的な報告もあることは事実です。この治療の黄体補充は連日50mgプロゲステロン筋肉注射、またはプロゲステロン腟剤200mg 2回/日+3日ごとの50mg筋肉内プロゲステロンとなっていて、比較的黄体補充はしっかり行っている印象があります。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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