体外受精

2021.08.18

着床不全に対する低分子ヘパリン投与のメリットについて(否定派)

はじめに

体外受精での低分子ヘパリン使用は、複数年にわたり検討されてきています。使用法には2つの目的があります。1つめはOHSSやその他の血栓症リスク女性の血栓症を予防する目的で、2つめは反復着床不全患者の妊娠成績を改善させる目的です。 
大規模スタディが数多くあるわけではなく、参考となる論文が限られています。低分子ヘパリンの移植時の着床率改善の使用については、①全症例でのルーチン使用にメリットはない、②凝固因子異常がない反復着床不全患者での使用は懐疑的、③凝固因子異常ある反復着床不全患者には使用を検討する、というのが大きな流れのような感じがします。否定派の論文が下記となります。 

ポイント

低分子ヘパリンは全症例でのルーチン使用や凝固因子異常のない反復着床不全患者への使用においては、臨床妊娠率・出生率の改善効果が認められません。凝固因子異常を有する症例に限定して使用を検討することが考慮されうる程度です。 

まとめ

① 全症例でのルーチン使用にメリットなし 
Lodigiani C, et al. Thromb Res. 2017. DOI: 10.1016/j.thromres.2017.08.006 
低分子ヘパリン(パルナパリン)が体外受精の成績に影響を与えるかどうかを検討した前向き研究です。初回または2回目の体外受精を行った女性247名の271周期を解析しました。血栓症や自己免疫疾患をもつ女性は対象外とし、パルナパリンを投与する群と、コントロール群に無作為に割り付けました(1:1)。主要評価項目は臨床妊娠率、副次的評価項目は着床率と出生率としました。 

結果

臨床妊娠率および出生率は、治療群と対照群で同等でした(21.5% vs. 26.7%、p=0.389;18.5% vs. 20.6%、p=0.757)。流産率も差がありませんでした(10.3% vs. 22.9%、p=0.319)。35歳以下、36~38歳、39~40歳のサブグループ分析でも臨床妊娠率(22.5% vs. 38.8%、p=0.124;21.8% vs. 17.3%、p=0.631;19.4% vs. 23.3%、p=0.762)と出生率(16.3% vs. 32.7%、p=0.099;20.0% vs. 13.5%、p=0.443;19.4% vs. 13.3%、p=0.731)ともに差がありませんでした。 

② 凝固因子異常がない反復着床不全患者での使用は懐疑的 
Siristatidis C, et al. Gynecol Endocrinol. 2018. 
反復着床不全の対象者に、①低分子量ヘパリンとプレドニゾロン投与群57名、②無投与群58名にわけ、臨床妊娠率を主要評価項目として検討しました。患者平均年齢は35歳前後、ロング法もしくはアンタゴニスト法での新鮮胚移植(平均2個以上の初期分割期胚)としています。 

結果

生化学妊娠率および臨床妊娠率は両群で同等でした(23/57(40.4%)vs.14/58(24.1%)、および17/57(29.8%)vs.11/58(19%)、それぞれp=0.063、0.175)。流産率も両群間で同等であり(35.7% vs.34.8%)、出生率も同様でした(15/57(26.3%)vs.9/58(15.5%)、p=0.154)。 

私見

低分子ヘパリン投与に関わらず、アスピリン使用も胚移植のどの時期からの使用が推奨されるかは意見が分かれます。当院では凝固異常を認める患者さま、他の着床不全に対するアドオン治療をおこなっても結果が出ない患者さまに限り抗凝固剤を検討しています。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# アスピリン、ヘパリン

# 反復着床不全(RIF)

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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