治療予後・その他

2021.03.24

流産手術は周産期合併症(早産)を増やすの?(Hum Reprod. 2016)

はじめに

流産手術の短期的な合併症としては、子宮頸部の裂傷、出血、感染、子宮穿孔などがあります。長期的な合併症は、子宮内癒着(アッシャーマン症候群)であり、月経異常や不妊症の原因となる可能性があります。それ以外にも次回妊娠時の周産期合併症に影響を与える可能性も否定できません。
流産術後の早産との関連をまとめたメタアナリシスをご紹介させていただきます。

ポイント

流産手術歴のある女性は、流産手術歴のない女性と比較して早産リスクが高く、複数回の流産手術歴や早産歴がある場合、そのリスクはさらに増加することが示されました。

引用文献

M. Lemmers et al. Hum Reprod. 2016. doi: 10.1093/humrep/dev274. 

論文内容

流産手術は、早産リスクを高めるかどうか、無作為化データがないため、コホート研究および症例対照研究のシステマティックレビューおよびメタアナリシスを行いました。OVID MEDLINEおよびOVID EMBASEを2014年5月21日まで検索しました。妊娠第一期の流産、その後流産手術を実施した女性と、流産手術歴のない女性を比較し検証しました。

結果 

1,853,017人の女性について報告した21件の研究を対象としました。流産手術歴のある女性とない女性を比較すると、37週未満の早産のオッズ比(OR)は1.29(95%CI 1.17;1.42)であり、超早産のORは32週未満で1.69(95%CI 1.20;2.38)、28週未満で1.68(95%CI 1.47;1.92)となりました。
複数回の流産手術歴がある女性は、流産手術歴のない女性と比較して、早産(37週未満)のORは1.74(95%CI 1.10;2.76)でした。早産歴のある女性では流産手術歴がある場合とない場合とを比較して、ORは1.44(95%CI 1.22;1.69)となりました。
無作為化試験ではないため、交絡因子を考慮して結果を補正はできていませんが、今回のメタアナリシスでは、流産手術はその後の早産のリスク増加と関連していることが示されました。複数回の流産手術に伴うリスクの増加、早産歴がある女性では流産手術後の早産のリスク増加は、より関連が強く示されました。 

私見

流産手術がどのように早産リスクを上昇させるのか。メカニズムは下記が考えられています。

  1. 子宮頸管の拡張により子宮頸管が損傷し、子宮頸管無力症によるその後の妊娠での自然早産のリスクが直接増加するという仮説があります。この仮説は、子宮頸部高度異形成や上皮内がんなどで円錐切除手術を実施した後の早産リスクが上がることもわかっていて、同じメカニズムが考えられます(Watson et al. 2012)。
    最近では子宮頸部の損傷により抗菌防御機構が損なわれ、早産の原因として知られる上行性微生物のコロニー形成(子宮内細菌叢の異常)が促進される可能性も考えられています。
  2. 掻爬によって子宮内膜が損傷し、その後の妊娠で胎盤の異常を引き起こし、早産や帝王切開につながる可能性があります。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 流産、死産

# 手術

# 周産期合併症

# 総説、RCT、メタアナリシス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

油から考える早産予防:妊娠中のオメガ3脂肪酸(Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2022)

2026.09.29

妊娠後期の腟内細菌叢と計画的分娩誘発の予後(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.08.07

PGT-A後の産科・新生児転帰:システマティックレビュー&メタアナリシス(Hum Reprod. 2026)

2026.05.18

帝王切開における術後ケアの最適化:ERAS Society 2025年版ガイドライン(Part 3)(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.04.20

帝王切開における術中ケアの最適化:ERAS Society 2025年版ガイドライン(Part 2)(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.04.17

治療予後・その他の人気記事

妊娠高血圧症候群予防の低用量アスピリン療法に就寝前内服を勧める理由(Chronobiol Int. 2013)

2021.11.02

妊娠中期頚管短縮に対するプロゲステロン腟剤の周産期予後改善効果(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2025.08.18

妊娠中メトホルミン使用は児神経予後と関連しない(Am J Obstet Gynecol. 2024)

2024.09.19

2026.09.28

精液所見がIVF/ICSI出生児性比にあたえる影響(Fertil Steril. 2016)

2026.09.28

帝王切開における術後ケアの最適化:ERAS Society 2025年版ガイドライン(Part 3)(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.04.20

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2024年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2026.09.10

千葉県「早期不妊検査費助成事業」が2026年10月1日から始まりました―夫婦ふたりで不妊検査を受けると、1組につき上限3万円まで助成―

2026.10.01

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

卵子の大きさ

2025.03.08