はじめに
レトロゾールを併用すると、より高いアンドロゲンレベルおよびLHレベルが潜在的にFSHR発現を増加させ、FSH刺激に対する卵胞感受性を増加させるとされています。しかし、FSH投与量の減少にはつながるものの、発育卵胞数や回収卵子数を増やすわけではないことが報告されています。
以前より、レトロゾールを併用した場合の卵巣刺激について質問されることがありましたが、しっくりする報告がありませんでした。レトロゾール併用調節卵巣刺激を用いたRCTを行ったグループが分かりやすいReviewを書いていますのでご紹介いたします。
ポイント
レトロゾール併用療法はpoor responderにおいて出生率を7%増加させる可能性があり、ゴナドトロピン使用量を有意に削減しながら、採卵数を減少させません。
引用文献
Nathalie Søderhamn Bülow, et al. Reprod Biomed Online. 2022 Apr;44(4):717-36. doi: 10.1016/j.rbmo.2021.12.006.
論文内容
IVF/ICSIにおける卵巣刺激時のレトロゾール併用療法の役割に関する利用可能なエビデンスを評価したシステマティックレビューおよびメタアナリシスです。2021年8月までのMedline、Cochrane、ClinicalTrials.govデータベースを系統的に検索し、31研究(RCT16件、観察研究15件)を含みました。
研究対象は、poor responders(POR)20研究、normal responders 10研究、high responders 2研究でした。主要評価項目は出生率(LBR)、継続妊娠率(OPR)、臨床妊娠率(CPR)、流産率としました。副次評価項目は採卵数、FSH総投与量、卵巣刺激日数、トリガー日の子宮内膜厚、周期あたりのキャンセル率、新生児予後としました。
結果
Poor respondersにおいて、レトロゾール併用療法により出生率が有意に7%増加しました(95%CI 1%13%、P=0.03)。同時に、ゴナドトロピン使用量が有意に減少し(平均差-1066.64 IU、95%CI -1556.20-577.08、P<0.0001)、卵巣刺激日数も有意に短縮されました(平均差-0.85日、95%CI -1.23~-0.47、P<0.0001)が、採卵数は減少しませんでした。感度分析では、臨床妊娠率が15%から23%へ有意に増加しました(リスク差0.08、95%CI 0.01~0.15、P=0.03)。
Normal respondersでは、レトロゾール併用により採卵数が1.8個増加しました(95%CI 0.35~3.27、P=0.01)。しかし、出生率、臨床妊娠率、OHSSの発生率に有意差は認められませんでした。
High respondersに関しては2研究のみで、出生率、臨床妊娠率に影響は認められませんでした。
全体として、子宮内膜厚は軽度影響を受けましたが(平均差-0.54mm、95%CI -0.99~-0.08、P=0.02)、流産率(リスク差0.00、95%CI -0.050.05、P=0.93)およびキャンセル率(リスク差0.03、95%CI -0.090.15、P=0.64)はレトロゾール併用療法の影響を受けませんでした。含まれた研究のいずれも新生児予後について報告していませんでした。
エビデンスの質は、RCTでは高~中等度、観察研究では低でした。
私見
レトロゾールの作用機序として、卵巣内アンドロゲンの増加によるFSH受容体の上方制御と、エストロゲン低下による視床下部-下垂体系への負のフィードバック抑制による内因性ゴナドトロピン産生の増加が考えられています(Nielsen et al., Mol Hum Reprod, 2011; Lossl et al., Front Endocrinol, 2020)。これにより、外因性FSH使用量を削減しながら、同等またはより多くの卵子を獲得できると考えられます。
下記コラムも参考にしてみてください。
レトロゾールのアンドロゲンにフォーカスした卵胞発育への作用機序(J Assist Reprod Genet. 2020)
正常卵巣予備能女性の卵巣刺激にレトロゾールを併用すると?(Hum Reprod. 2021)
自然周期/レトロゾール周期採卵における分割期新鮮胚移植成績(F S Rep. 2022)
調節卵巣刺激(卵巣刺激)の注射製剤の選び方 (ESHRE guideline 2025年版アップデート)
ヨーロッパ生殖医学会の推奨する調節卵巣刺激?(ESHRE guideline 2025年版アップデート)
文責:川井清考(WFC group CEO)
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