治療予後・その他

2023.05.30

妊娠周期抗生剤使用は妊娠に有利・不利?(Hum Reprod. 2021)

はじめに

特定の抗生物質と適応症は、妊娠しやすさと関連する可能性があります。病歴、健康状態、炎症状態、子宮内細菌叢などが影響を与えている可能性があります。米国からの報告です。抗生剤を使用した部位別のデータもありますのでご提示させていただきます。 

ポイント

妊娠前の抗生物質使用は全体として妊娠しやすさと関連がありませんでした。ただし、若い女性、喫煙者、生殖器感染症は妊娠しやすさの低下と関連している可能性が示唆されています。 

引用文献

Holly Michelle Crowe, et al. Hum Reprod. 2021 Sep 18;36(10):2761-2768. doi: 10.1093/humrep/deab173. 

論文内容

2013年6月から2020年9月に米国とカナダに居住する21〜45歳の女性妊活希望者9524人(妊活期間6カ月以下対象)を対象としたインターネットベースの妊娠前コホート研究のデータです。最大12カ月間または妊娠報告まで2カ月ごとのフォローアップアンケートを行いました。 

初回、フォローアップ問診票にて過去4週間の抗生物質使用を評価しました。抗生物質(ペニシリン、マクロライド、ニトロフラントイン、ニトロイミダゾール、セファロスポリン、スルホンアミド、キノロン、テトラサイクリン、リンコサミド)に基づき分類され、適応(呼吸器、尿路、皮膚、膣、骨盤、外科)により分類されました。 

結果 

初回もしくはフォローアップにて過去4週間に抗生物質使用を行った女性は、抗生物質を使用しなかった女性と妊娠しやすさは変わりませんでした(FR: 0.98, 95% CI: 0.89-1.07)。スルホンアミド系とリンコサミド系は妊娠しやすさの軽度上昇と関連し(FR: 1.39, 95% CI: 0.90-2.15、FR: 1.58, 95% CI: 0.96-2.60)、マクロライドは軽度低下と関連していました(FR: 0.70, 95% CI: 0.47-1.04)。 

抗生剤を使用した感染症部位別による妊娠しやすさの関係 

周期数 妊娠数 調整前FR(95%CI) 調整後FR(95%CI) 
抗生剤なし 23,053 3,621 Reference Reference 
呼吸器系 713 102 0.93 (0.77–1.12) 1.02 (0.85–1.23) 
尿路系 532 84 0.98 (0.79–1.22) 0.99 (0.80–1.23) 
皮膚系 163 29 1.14 (0.82–1.58) 1.09 (0.79–1.51) 
膣系 155 21 0.88 (0.57–1.36) 0.89 (0.58–1.37) 
骨盤系 121 13 0.63 (0.35–1.11) 0.71 (0.40–1.27) 
外科系 98 12 0.88 (0.49–1.58) 0.89 (0.49–1.63) 

女性年齢、教育、収入、BMI、マルチビタミンの使用、PSSスコア(Perceived Stress Scale)、MDIスコア(Major Depression Inventory)、性交頻度、地理、現在の喫煙状況、STI既往により調整されています。 

私見

亀田感染症ガイドラインの男性・女性尿路骨盤感染症もご活用ください。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 影響する薬剤など

# 疫学研究・データベース

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

油から考える早産予防:妊娠中のオメガ3脂肪酸(Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2022)

2026.09.29

妊娠後期の腟内細菌叢と計画的分娩誘発の予後(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.08.07

PGT-A後の産科・新生児転帰:システマティックレビュー&メタアナリシス(Hum Reprod. 2026)

2026.05.18

帝王切開における術後ケアの最適化:ERAS Society 2025年版ガイドライン(Part 3)(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.04.20

帝王切開における術中ケアの最適化:ERAS Society 2025年版ガイドライン(Part 2)(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.04.17

治療予後・その他の人気記事

2026.09.28

精液所見がIVF/ICSI出生児性比にあたえる影響(Fertil Steril. 2016)

2026.09.28

妊娠高血圧症候群予防の低用量アスピリン療法に就寝前内服を勧める理由(Chronobiol Int. 2013)

2021.11.02

妊娠中期頚管短縮に対するプロゲステロン腟剤の周産期予後改善効果(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2025.08.18

妊娠中メトホルミン使用は児神経予後と関連しない(Am J Obstet Gynecol. 2024)

2024.09.19

帝王切開における術後ケアの最適化:ERAS Society 2025年版ガイドライン(Part 3)(Am J Obstet Gynecol. 2026)

2026.04.20

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2024年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2026.09.10

千葉県「早期不妊検査費助成事業」が2026年10月1日から始まりました―夫婦ふたりで不妊検査を受けると、1組につき上限3万円まで助成―

2026.10.01

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

卵子の大きさ

2025.03.08