2026年10月24日から28日まで、米国メリーランド州ボルチモアで、第82回ASRM 2026(American Society for Reproductive Medicine Scientific Congress & Expo)が開催されました。ASRMは米国生殖医学会の年次学術集会で、ESHREと並ぶ生殖医療分野の世界最大規模の学会の一つです。今回のテーマは「Discovery, Innovation, & Advancement」でした。
今回、演題数は約900題。日本からの演題は20題ちょっとでした。ESHRE は毎年50題前後なので、学会会場にいっても日本人はまばら。しっかり会場にいりびたって刺激をうけるにはもってこいの学術集会です。
当院からは今回1題。「顕微授精時の卵膜伸展性は加齢に影響をうけるのか」という疑問を、約10年分・2万個以上の卵子のデータで検証した研究です。
亀田IVFクリニック幕張 中條培養検査部 培養課長
Does Fragile Oolemma During Piezo-ICSI Increase with Maternal Age? A 21,065-Oocyte Cohort Analysis
(ポスター P-239/2026年10月26日発表)
Hayata Nakajo, Kenichiro Hiraoka, Makiko Tajima, Akira Komiya, Kiyotaka Kawai
演題のまとめ
顕微授精では、卵子の細胞膜が通常よりも破れやすい「卵細胞膜の脆弱性」が見られる卵子があり、受精や卵子の変性に影響することが報告されています。しかし、この脆弱性と女性の年齢との関係は十分に明らかになっていません。
本研究では、2016年5月から2026年3月までに当院で顕微授精(Piezo-ICSI)を行った成熟卵子21,065個を対象に、卵細胞膜の脆弱性と、女性の年齢や受精・胚発育との関係を調べました。
結果
卵細胞膜の脆弱性が見られた卵子は全体の23.1%で、女性の年齢が上がっても明らかには増えていませんでした。
一方、脆弱性が見られた卵子は、通常の卵子に比べて変性率が高く(7.7% vs 0.4%)、正常受精率(78.1% vs 88.1%)、胚盤胞形成率(59.8% vs 68.1%)、良好胚盤胞形成率(27.3% vs 34.4%)はいずれも低い結果でした。
また、卵子が2個以上得られた患者さんの67.5%では、脆弱性のある卵子と通常の卵子が混在していました。
これらの結果から、卵細胞膜の脆弱性は年齢だけでは予測しにくく、卵子一つひとつの特徴に合わせた顕微授精が重要だと考えられました。
私見
ヨーロッパにいった時に感じたのはスライドの作り込みの素晴らしさ、計画だった臨床研究デザインでした。今回の学会で感じたので、熱意かな。ひとつひとつの会場がoral発表でも大きくないのですが、質問の熱量がすごく学ぶことばかりでした。
培養検査部 培養課長、たくさん刺激をうけてくれたみたいなので、自分の成長に、そして若手育成に今まで以上に注力してくれることを期待したいと思います。
当院は、これからも私の成長もそうですが、医師・培養士などが成長できる場を用意できる施設であるよう努めていきたいと思います。



文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。