はじめに
凍結融解胚移植周期において、ホルモン調整周期は、医療者・患者共に計画が立てやすいため頻繁におこなわれてきました。ただし、ホルモン調整周期は排卵周期凍結融解胚移植に比べて、周産期合併症(妊娠高血圧症候群、癒着胎盤、帝王切開)リスク増加と関連していることが報告されています。
PCOS女性にとって、第3世代のアロマターゼ阻害薬であるレトロゾールは排卵誘発に主として用いられる薬剤です。PCOS女性のレトロゾール併用排卵周期凍結融解胚移植の成績をホルモン調整周期凍結融解胚移植と比較したランダム化比較試験をご紹介します。
ポイント
PCOS女性の凍結融解胚移植において、レトロゾール併用排卵周期とホルモン調整周期を比較したランダム化比較試験です。胚移植あたりの出生率、臨床妊娠率、着床率、流産率に差は認められませんでした。一方で、出生体重はホルモン調整周期群で高く、妊娠糖尿病はレトロゾール併用排卵周期群で高い結果でした。
引用文献
Yuan Yuan, et al. Obstet Gynecol. 2023 Nov 1;142(5):1087-1095. doi: 10.1097/AOG.0000000000005367.
論文内容
PCOS女性のレトロゾール併用排卵周期凍結融解胚移植の成績を、ホルモン調整周期凍結融解胚移植の出生率を比較することを目的としたランダム化比較試験です。
主要評価項目は胚移植あたりの出生率としました。副次評価項目は生殖医療結果、周産期合併症などとしました。出生率に15%の差を示すためには1群あたり186例が必要であると計算し脱落率10%を考慮して1群あたり少なくとも205名のリクルートを行いました。
結果
2018年から2021年に患者420名を登録しました。210名ずつレトロゾール併用排卵周期、ホルモン調整周期に割り付けられました。それぞれ、出生率(42.4% vs. 42.9%、P ≧.99)、臨床妊娠率(51.4% vs. 56.2%、P =.378)、着床率(51.8% vs. 55.8%、P =.401)、流産率(8.6% vs. 11.0%、P =.511)となり差を認めませんでした。周産期転帰として、ホルモン調整周期群で出生体重が高く(3,108±56g vs. 3,301±58g、P =.018)、レトロゾール併用排卵周期群で妊娠糖尿病が高くなりました(14.6% vs. 5.6%、P =.050)。その他の周産期転帰には差を認めませんでした。
私見
妊娠糖尿病は国内のSaitoらによる大規模コホート研究と一致しており、ホルモン調整周期凍結融解胚移植妊娠では、インスリン拮抗ホルモンの分泌が減少することにより、妊娠糖尿病リスクが減少するのではないかとされています。
Saito K, et al. Hum Reprod 2019;34:1567–75. doi: 10.1093/humrep/dez079
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文責:川井清考(WFC group CEO)
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