体外受精

2022.01.04

着床不全の原因は?(Fertil Steril. 2021)

はじめに

反復着床不全のReviewがFertil Steril 2021に掲載されました。まとまっていましたのでご紹介させていただきます。 

ポイント

反復着床不全の原因は、受精胚側の染色体異常が最も多く、次いで母体側の子宮内環境(卵管留水症、慢性子宮内膜炎など)、子宮内膜と胚の着床における不調和が挙げられます。正倍数性胚でも着床不全率は19~33%あり、真の原因究明には更なる研究が必要です。 

引用文献

Garneau AS, et al. Fertil Steril. 2021. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2021.10.023 

論文内容

着床不全の原因は①受精胚側の原因、②母体側の原因、③子宮内膜-胚の着床における不調和とされています。 

① 受精胚側の原因
着床不全の一番の原因は受精胚の染色体異常とされていて、女性の加齢とともに胚盤胞に到達しても染色体異常の割合が増えて着床不全の原因となるとされています。
また、正倍数性胚を戻しても着床不全率は19%~33%とされています。染色体異常以外では、遺伝子変異やDNAメチル化の変化が着床不全に与える影響も考えられていますが、現在のところ因果関係はわかっていません。受精胚から発現するサイトカインや転写因子などが着床と関連している可能性は以前よりマウスの研究では報告されていますがヒトでは明らかになっていません。 

② 母体側の原因
以前より母体側で話題にあがるのは子宮内膜の厚みです。賛否両論ありますが着床に影響を与えると考えられています。その他に内膜組織が着床できるように変化することも大事です。通常、胚を受け入れる受容能期間は2日程度とされています。
Pirteaらは正倍数性胚の着床率は、同じ黄体補充を行なって実施したところ、初回70%、2回目60%、3回目60%であり、累積着床率は2回目まで88%、3回目まで95%であることを示し、真の「母体側」「子宮内膜-胚の着床における不調和」による着床不全はそう多くいないと報告しました(反復着床不全のほとんどの原因は受精胚?( Fertil Steril. 2020.))。
ただし、予後良好と思われる患者背景であったこと、途中の脱落が数多くいたことから疑問視する意見が様々あります。反対に2回以上の着床不全既往歴がある場合、正倍数性胚移植を受けた女性は生児を出産する可能性が低くなることを示す報告もでていきています(着床不全既往なし47% vs. 2回以上の着床不全36%)(流産既往や反復着床不全は正倍数性胚の出生率にどう影響する?(Hum Reprod. 2021))。
着床不全の原因として母体因子は子宮内と交通のある卵管留水症、慢性子宮内膜炎に伴う炎症が起きている状態が挙げられます。子宮内と交通のある卵管留水症の影響は、複数の無作為化試験で十分に実証されており、慢性子宮内膜炎は着床率が3倍低下するとされています。粘膜下筋腫や子宮内膜ポリープなどの子宮内病変も着床不全の原因となります。子宮内膜症が着床不全の原因となる場合もあり(基本は影響しないという意見が根強くあります)、GnRHアゴニストによる子宮内膜症治療や外科的治療が治療成績を向上させるという報告もあります。他に、抗リン脂質抗体症候群、PCOS、肥満、喫煙など多くの病因が考えられていますが原因不明のものもあります。特定のハプロタイプや免疫学的な原因も考えられます。 

③ 子宮内膜-胚の着床における不調和
子宮内膜のプロゲステロンの暴露期間は重要であるとされていますが評価が難しいです。内膜受容能検査が出てきていますが、本当に効果があるかどうか結論はでていません。そのほかにエストロゲンやプロゲステロンによる子宮内膜細胞の変化や、子宮内膜と受精胚の双方向のクロストークが重要とされていますが、臨床に応用される検査・治療などは現在のところ確立されていません。 

私見

この分け方が私は一番しっくりきていて患者様にはこの分け方で着床不全は話をしています。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 子宮内膜症

# 着床前遺伝学的検査(PGT)

# 反復着床不全(RIF)

# 慢性子宮内膜炎

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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